第6話 雇用条件①
(よし、日本に帰るか!)
「あー…っと、シラネ。ちなみにだが、俺はどーやったら日本に帰れるのだろーか?」
その瞬間、シラネが絶望的な表情を浮かべた。
「な、何故唐突にその様な事を……何か、お気に障りましたでしょうか?」
「あ、いやー…」
ヤバい…こんな美少女に、こんな表情をされたら心が痛む。
「あー…そうだ、雇用条件。雇用条件の詳細を確認したかっただけなんだ」
「雇用…条件?」
「そうそう。雇用期間とか時給の計算方法、それから一応念のために、日本への帰還方法とかね」
「まあ、そうでしたか。ミコトさま、申し訳ございません。わたくし、早とちりをしてしまいました」
「いやいや俺も、話が飛躍し過ぎて悪かったよ」
宝来尊は右頬を人差し指で掻きながら、力のない愛想笑いを浮かべた。
「いえ、確かにコレはわたくしの落ち度でございます。ミコトさまはお気になさらないでください」
シラネは一度深く頭を下げると、背筋を伸ばして姿勢を正す。
「先ず雇用期間ですが、最低60日間、わたくしとしましては180日間を希望しております」
「さ、最低2ヶ月⁉︎」
宝来尊は大きな声を張り上げて、思わず玉座から立ち上がった。
「ちょ…ちょっと待ってくれ。いくら俺が一人暮らしでも、流石にそれは死亡説が流れちまう」
「その点は心配ございません。きちんと考慮しております」
そう言ってシラネは、愛らしい天使の様な笑みを浮かべる。
「え…そーなの?」
その透き通るような微笑みに、宝来尊は毒気を抜かれて腰を下ろした。
(あーなるほど、そういう事か)
それからポンと右膝を叩く。
おそらく魔法的な何かで、周りの人たちの記憶を改ざんするのだろう。こういう展開の、ありがちな設定だ。
(いやいや何納得してんだ俺! これは帰る方法を聞き出すための雑談だろ!)
宝来尊はブンブンと首を横に振ると、左の拳で自分の額をゴツンと叩いた。
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