11話 飛べた魔女はただのヒロイン枠?
ある麗らかな午後の事だ。豚はいつも通り、ぶひぶひ萌豚をして、至福の一時を送っていた。しかしそんな安寧の日に突如王子からとんでもない爆弾発言をされた。
「最近お前、自分は悪役令嬢で婚約破棄される側みたいな発言繰り返してたけど、相対的に見て、圧倒的ヒロイン枠だろ」
「な、ん、だ、と?!」
豚がヒロイン枠? そんなの、神が与えるお恵みへの冒涜だ。確かに今の私は豚ではない。これは豚系悪役令嬢が痩せて本ヒロインとなる小説系あるあるだろう。しかしその場合、過去に婚約破棄云々があり、第二の人生やり直し系だと思う。もしくは、何か不思議な力で別人(ヒロイン)の人格が入り込んだ場合だろう。
しかしだ。私はまだ婚約破棄をされて、ヒロインとくっつく王子にざまあされていない。勿論中身も変わらず、豚だ。
私がやったのはトラウマものの鬼畜ブートキャンプだけだ。むしろ、あのダイエットが破滅フラグだ。何度死にそうになったことか。もしも私がヒロインだとしたら作者(神)を訴えていいレベルの虐待行為だ。癒しの魔女に体力を戻してもらっても、心の体力までは戻らない。
「お前が翻訳してくれた書物を見たが、悪役令嬢はそもそも令嬢だろ。お前、令嬢じゃないよな」
「間違いありません……」
最近、二十四時間、三百六十五日のおやつタイムがなくなり暇だったので、はまった小説を広めるため、異界の言葉の翻訳活動をしていた。
王子も大分と文字を覚えたがまだ長文をすらすら読めるレベルではない。なので異界語の勉強も兼ねて王子は翻訳したものを真っ先に読む。その為私と同じだけの異界小説への理解力がった。
そして今の王子の発言は認めざる得ない完璧な反論だった。私は悪い魔女だけど令嬢ではない。異議がでてこない。
「そしてこの話のヒロインは平民出身で、最終的に王子に見初められハッピーエンドだ。こういうのをシンデレラ物語というんだったか? まんまお前だろ」
「異議あり。私たちは小説のような恋を育む場面ゼロでした」
「俺がお前の幼馴染枠という証拠を追加で提示する」
くっ。
あの美少女が王子だなんて認めたくない。幼い頃は美少女、大人になったら美形、その正体は王子とか、お前はできすぎかといいたい。設定盛りすぎだ。
まあその婚約者が豚なので、神はここでバランスをとろうとしたのかもしれない。けど、異議あり。本件は王子を貶める為に、豚の人権が考えられていません。
「でもヒロインは太ってはいけないと思います。せめて許される範囲のポッチャリでないとーー」
「分かってるじゃないか。金輪際絶対太るなよ」
「異議あり。私はヒロインではないという証拠として、私の幼馴染は【予言の魔女】もだという事実を追加提示します。くらえ!!」
私は、某ゲームっぽく反論した。きっと今の私の鋭いツッコミは、王子にダイレクトアタックをくり出したに違いない。
というか、今の私、恋のキューピットなのでは? もしかして始まっちゃう? 王子と【予言の魔女】の恋愛物語。
「なあ、過去を思い出せ。俺がアイツと付き合う未来があると思うか?」
ぽく、ぽく、ぽく、チン!
「……ないです」
予言の美人――じゃなくて、予言の魔女は私と面会をしていたころは、王子に引けをとらない美少女だった。ついでに頭も良くて、商売も上手だった。
見目及び能力は本当にお似合いだと思う。でもこの二人、あまり仲良くはなかった。喧嘩ップルという言葉が異界にはあるようだけど、二人の取っ組み合いの喧嘩や、討論は、そんな可愛らしいものではない。
二人はその美貌でアイドルユニットができても、親友ではなかったという事だ。ビジネスパートナーとしてしかたぶん無理。……何でそんな二人が幼馴染してたんだっけ?
思い返そうとするが、昔の事は忘れてしまった。まあ、豚だから仕方がない。
「分かりました。これからは、私は悪い魔女として頑張ります。まず初めに、見つからない所でこっそりお菓子を食べる悪事をしようと思います」
「ちげーよ。ヒロイン頑張れよ」
私はどうやら、悪役令嬢ではない事が今日判明してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます