第99話

早朝の雅と桃の愛の巣。

白田と明のセックス事情を心配する桃に、身内の事だからと嫌がる雅。



99



雅&桃 宅


「新しい子、大丈夫かしらねぇ」


朝食兼夕食を食べている雅に、朝のニュースを見ていた桃が唐突に口をひらいた。


生活リズムが違う2人は、一緒に食事を取れるのは早朝の時間だけ。

フスカルから帰宅し風呂を済ませた雅と、仕事へ向かう前の桃は、リビングのローテーブルで食事をとる。

一緒に住み始めて、この時間だけは2人で食事をしようとルール付けていた。

お互いの仕事により多少時間は前後するが、それでも今まで守れてきた。

土曜日の昨日は、新人アルバイトの初出勤の日だった。

バーで働くには珍しい生真面目な彼は、真剣に仕事を覚えようと常にメモを片手に明や雅の言葉を聞いていた。

数ヶ月前に田舎から出てきたようで、どこか田舎臭い雰囲気を漂わせているものの、その素朴な雰囲気に常連客は気に入ったようだった。


「仕事ぶりは問題ないけどな・・・真面目故に悪い客に引っかからないといいけどな」


天然でふわふわしている雛山と、田舎から出てきた世間知らずな新人アルバイト・・・・ほっといても客をあしらう明とは違い、悪い客からこの2人を守護しなければならない。


「まぁ私も居るし、林檎ちゃんもちゃんとその点は注意して見てくれるわよ」


「ん〜〜〜〜〜」


「そう言えば・・・・あの2人は、もうやっちゃったのかしらね?」


「ぐっ・・・ケホ!」


話題を変えた桃の言葉に、雅は食べていた物を喉につまらせる。

ゲホゲホと咳き込み、目の前にあった水を一気に飲み干した。


「お前なぁ・・・・」


「だって〜〜あの2人って、同性は初めてでしょ?だから心配になっちゃって〜」


頬に手を当ててそう言ってのける桃の口元は、ニタニタと笑っている。

本当に心配してるのかよ・・・

雅は内心疑いつつも、食事を再開した。


「10代のガキじゃねーんだから、ほっときゃ良いだろう」


「ねぇ、どっちがネコだと思う?」


「ぐ・・・・」


再び喉に食べていた物が引っかかりそうになるが、今回は何とか飲み込めた。

想像したくない・・・・


「私はどっちもアリだと思うの。明ちゃんLOVEの白ちゃんなら、あっさり受け入れそうだし。強気で主導権とりつつも、白ちゃんに乗っかっちゃう明ちゃんも良いわよねぇ〜」


「頼むから、話題変えてくれ・・・・・」


身内のそういう話は本当に勘弁して欲しい。

だが桃はどちらもアリだと言ってはいるが、明自身はどうやら白田を受け入れる気だ。

以前「ケツにチンコ突っ込まれるのって痛いのか?」と訊いてきたのだから、そういう事だろう。


「だけどさ、一応異性とするより病気のリスクは高いわけだし。教えてあげとかないと駄目だと思うのよ」


話題を変える気がない桃は、テーブルに両手を乗せて身を乗り出す。

その表情は、先程のニタニタは消え去り真剣そのものだ。


「なら、白田さんに言ってやればいいだろう」


「そうね。プレゼントも兼ねて色々と揃えてあげちゃおうかしら」


何を?

とは聞かずとも解る。

男同志は、色々と準備するものが必要だ。

ウキウキと鼻歌を歌い出した桃に、雅ははぁ〜〜とため息をつき残り僅かな料理を一気に掻き込んだ。


「白ちゃんと明ちゃんのサイズ、両方揃えておいたほうがいいかしら。ねぇ明ちゃんって何サイズ?」


「しるか!!」



******



フスカル



雅と桃がそんな話をしていた、その日の夜。

休日前ということで、フスカルは今日も大繁盛。

そしてカウンター席にはサラリーマン三人組と白田がご着席。

その席に付いている店の者は、明と新人アルバイト。

明は3人グループの前に付き、恋人の白田は新人アルバイトの接客の練習台になっていた。


「明。注文入ったから、桃の席付いてくれ」


カウンターに入ってきた雅は、明に声を掛けて厨房へと入る。


「んっ・・・じゃ、暫く外すな」


明は雅に返事を返し三人組にも声を掛けると、カウンター内を一人にさせる意味で新人の肩にポンと手を置いてボックス席へと移動した。

今日は、一度も自分の席に付いてくれない恋人。

だが土曜日は仕方がないと、白田は特に気にもせずに目の前の新人と他愛ない会話をする。

まだ東京の土地になれていない青年は、大学入学に上京してきた自分と重なる所があり、親しみを感じた。

2人の会話は、上京したてあるあるで話題は尽きない。


「ちょっと、会話中ごめんねぇ」


白田の隣の、空いてる席に座る桃。


「良いですよ。どうしたんですか?」


白田に用があるような雰囲気。

ただの雑談ならば、2人の会話を止める必要もない。


「小栗ちゃん、あなた口は硬いわよね」


「え・・・はい」


「じゃ、今からの会話は絶対オフレコよ」


真剣な顔で新人に念押しする桃に、白田は首を傾げる。


「白ちゃん・・・・ズバリ言うわよ」


「はい」


「まだ明ちゃんとは未経験よね」


「・・・・・」


桃の質問に、白田は言葉をつまらせる。

これは言ってもいいのだろうか・・・プライベートな内容に言うのは気が引ける。


「興味本位で聞いてるんじゃないのよ。2人の事が心配だから聞いてるの」


「・・・えぇ、まだです」


「そう、良かった」


何が・・・良いのだろうか。

桃が何を思って確認しているのか、白田は理解できず顔をしかめる。


「あのね。白ちゃんも明ちゃんも、女性の経験はあるとは思うけど。相手が男だとコンドーム一個じゃ済まないのよ」


「・・・・・・」


「生半可な気持ちで事に及ぶと、相手の身体を傷つける事だってあるし、病気になる事もあるの。私の知り合いも、3人HIVに感染したわ」


そこでようやく、桃の意図が理解できた。

最初は身構えていたが、桃の気持ちを知れば素直に聞く必要があると思い直す。


「明ちゃんが大切なら、やり方をちゃんと理解しておいたほうがいいわ。相手を求める気持ちも大切だけど、冷静でいる事も必要よ」


「「はい」」


白田の返事に、何故か目の前の青年の声が重なった。


「す、すみません!!私も未経験なので、参考に聞ければって」


思わず返事をしたのだろう、恥ずかしそうに顔を赤らめる青年に白田も桃もクスリと笑う。


「じゃ〜一緒に聞きなさい。まず、絶対にHIVの検査には行きなさい・・・・」


ここから、カウンターの一角で桃の性教育が始まった。

やるだけを楽しみしている人からしたら面倒な事だろうが、大切な恋人と及ぶならば大切な内容だ。

桃は2人の生徒に事細かく説明し、最終的に質問タイムへと突入。

その質問タイムも、明がBOX席から戻ってきたタイミングでお開きとなった。



100へ続く

今更ですが、タイBLにハマりました・・・・どんなイケメンでも、タイ語独特の間延びした可愛い話し方がツボです。

観たのは「運命の赤い糸」「gen y the series」です。

おすすめあったら、教えてくださいね。

そのうち、タイの大学に入学した話をかいてみたい。

ミスターキャンパスのタイ人✕日本人大学生 なんですけどね、理想男が終わったら次に書きたい物が決まってるのでまだ先ですね。

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