パパはサンタクロース
穂高 萌黄
第1話ソフィア小学生
ソフィアはパパが嫌い。
お友達のパパと違って、でっぷりと太っていて、いつも家でゴロゴロしているから。みんなのパパは朝になると、きちんとした服を着てお仕事に行く。会社でコンピューターとお仕事をする人もいれば、美味しいパンを作る人もいて、みんなかっこいい。そしてお友達はみんな、自分のパパを誇らしく思っている。
ソフィアのパパはいつもお寝坊で、パジャマのボタンがはじけ飛びそうな大きなお腹を揺すりながら、のんびり起きてくる。コーラを飲むとソファに横になってテレビを見て笑っている。
「パパ、お仕事に行かないの?」と聞くと決まって答えは、「おー、ソフィア。今日はお仕事の日じゃないんだよ。一緒に遊ぼうか。」だ。そんなぐうたらなパパと遊びたくなんかない。こんなパパを放っておいて、一生懸命働いているママも嫌いだ。
「絶対に遊ばない。」と睨んだソフィアの瞳に映ったのはパパの悲しそうな顔だった。
学校で友達みんなはよく家族の話をしてくれる。パパが仕事をしていないなんて変だ。ソフィアは少しずつ話をしなくなり、学校も休みがちになった。
ある日、パパの姿が家から消えた。「パパは?」と尋ねると、「お仕事に言ったのよ。」とママは言う。ソフィアの知っているお仕事とは違い、パパはいつまでも帰って来なかった。いつになったら戻るのか聞いても、「さぁ、いつ頃かしらねぇ。」と心配しないママにも腹が立つし、いつもゴロゴロしているくせにせっかくのクリスマスに留守にしているパパにも腹が立った。チキンが焼き上がり、料理とケーキが並べられ、サンタさんからプレゼントが届いても、全然楽しくなかった。忘れた頃にパパは帰ってきて、いつものように笑顔でコーラを飲んでいた。「ソフィア、ただいま。元気にしてたか?」絶対に、「お帰り」って言いたくなかった。
ソフィアは学校に行っても、授業を聞かなくなった。先生が話をしているのに、教室をうろうろしたり、抜け出して屋上で一人本を読んだりした。授業参観には絶対来ないでと言ったのに、お仕事をしているママの代わりにパパがやってくる。先生が出す問題に、一人だけ手を挙げないソフィアを心配そうに見ていた。
授業参観の後、ソフィアは先生に呼ばれた。
「問題難しかった?」先生から、そんな事を聞かれるのも面倒くさい。黙って首を横に振る。「分かったのに手を挙げなかったの?お父さん、心配そうに見てたよ?」パパは私の心配をするより、お仕事がないことを心配するべきなんだ。「分かったのではなく、先生の話を聞いていませんでした。もういいですか?」まだ話が済んでいないと言いかけた先生を振り切って、教室を飛び出す。家に帰っても同じ事を聞かれると思うと憂鬱だった。
パパは、ソフィアが沈んだ顔をしていると、時折悲しそうだけれど、おおむね笑顔を絶やさない。授業参観の時の事も、先生に個別に呼ばれたことも、一切問い詰めることなく、
「ソフィアは、頑張り屋さんだな。」と笑って頭をなでた。なんかわざとらしい気がするし、パパに髪を触られたくない。隣に座れと言われる前に、黙って自分の部屋に逃げ込んだ。
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