第4話「得意属性はあくまでも目安」
日が暮れてきたのでミゲルは家の中に戻り、手洗いうがいをすませてまず母に報告に行く。
「母さん! 俺、魔法を覚えられたよ!」
「あら、すごいわね」
息子の報告を聞いて彼女は優しく微笑む。
「【夜獣牙/ノワールファング】と【薄癒光/ヒーリング】も!」
ぴょんぴょん跳ねながら報告すると、彼女の顔から笑みが消えて困惑が広がる。
「まさか、そんな、六位階魔法を??」
にわかには信じられないらしいと判断し、ミゲルは得意そうに言う。
「明日見せてあげるよ。見てみて!」
「え、ええ、そうね」
母は息子を傷つけてはいけないという想いから、否定はしなかった。
「ご飯にするから手を洗ってね」
そして気を取り直してミゲルに話しかける。
「え、もう洗ったよ?」
「そ、そう? ならいいわよ」
きょとんとして返すと彼女は再び微笑む。
わが子が思ったよりも優秀なのかもしれないと、彼女は考えはじめていた。
ボロン家の三人が揃っての夕食で、ミゲルが父にも見てほしいと言う。
「父さんも明日俺の魔法を見てよ。六位階を覚えたんだ!」
「えっ? 六位階を覚えられるって、普通は十二歳だろ?」
父はきょとんとして彼の顔を見る。
「んん?」
ミゲルはこのとき初めて自分が普通ではないかもしれない、という可能性に気づく。
「【薄癒光/ヒーリング】を覚えるのって、もしかして難しいの?」
「そりゃな。適性ある人間が練習してやっとのはずだが」
彼の問いに答えながら父は首をひねった。
「え、そうなの?」
ミゲルはきょとんとする。
(六位階って下からふたつめのランクだろう? そんなに習得難易度は難しいのか?)
この世界で生まれてから得た記憶にそんなものはない。
六歳では知りえない情報だったのだろうか。
「この子、その辺の知識まだまだみたいだから、一度しっかり教えたほうがいいんじゃない? 将来のためにも」
母の言葉に父は大きくうなずいた。
「ああ、そうらしいな。よし、晩ご飯を食べながら簡単に説明しよう。……何から話せばいいかわからないが」
父はそう言いながら話しはじめる。
「魔法のランクだが、一番下が七位階。これはよほど才能がないやつじゃないかぎり、一年以内に習得可能だといわれている」
「だよね。俺もすぐ覚えたし」
ミゲルはまずは安心した。
「次に六位階。これは習得に数年かかることが普通だが、まあ一年以内に習得できるやつも、中はいるだろうな」
と父は言う。
「そうなんだ」
五、六年かかるはずのものを一日で覚えたのか、とミゲルは自分で驚く。
「五位階はバラバラだな。習得するコツをつかんだことで、すぐに使えるようになるやつはそこそこいる」
と父は言ってから彼を見る。
「お前の場合、七位階を覚えたことでコツを体がつかんだのかもしれないな」
単なる推測だろうが、彼に否定する根拠はなかったのでうなずいておいた。
「ランクが上がるほど、習得難易度が上がっていくわけじゃないんだね?」
そして気になった点を聞く。
「基本はそうなんだが、魔法の習得って本人の適性以外に感覚が大事だったりするからな。けっこうばらつきが出るものなんだ」
と父が返答すると、
「母さんは土属性に適性があるんだけど、砂に関しては四位階まで、砂以外は六位階しか使えないの。母さんの感覚に砂があってるとことなんでしょうね」
と母が説明を追加する。
「へえ、同じ土属性なのに違うものなんだね」
ミゲルは予想外のことを教わって目を見開いた。
「父さんの知り合いに雷は四位階、それ以外の風属性の魔法は七位階だけってやつがいるからなぁ。得意属性なら均一ってことはない。あくまでも目安だろ」
と父も言う。
「そうなんだね。てか、雷って風属性なんだ」
ミゲルの知識や感覚ではすこし不思議だが、ここは異世界だと納得する。
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