逢坂さんちの三姉妹〜いろいろあって美少女三姉妹と同居することになりました〜
白玉ぜんざい
プロローグ 〜逢坂さんちの三姉妹〜
第1話 逢坂さんちの三姉妹①
俺の名前は間宮悠一。
どこにでもいる普通の男の子だ。漫画アニメでよく使われる表現で、その実全然普通じゃねえじゃねえかというツッコミを入れられることの多い言い回しだが、俺は本当に普通の男の子だ。
ただ。
「覚悟してください。あなたの記憶を消します」
目の前にいるのは怒りに満ちた表情をこちらに向ける女の子、逢坂紗月である。
茶色く長い髪が印象的でいつもはおだやかな雰囲気をまとっているというのに、今に関して言えば真逆だ。
「ちなみに聞くけど、どうやって?」
紗月は右手に力を込める。その手には竹刀が握られている。剣道部以外が竹刀持っているのをこの時始めて見た。
「脳天叩き割るんですよ」
「頭叩いて記憶飛ぶって、あれ迷信だから! フィクションの産物だから!」
なんて物騒な発想を持ってやがるんだ。
いや、まあ。
そもそもの話をするならば。
俺が悪いんだけれど。
「これだから男の人はッ!」
「いや、あれは事故――」
弁解しようと口を開くと、その瞬間に竹刀が襲いかかってきた。ブンッという音がした、多分本気で振り下ろしてきた。
「――せめて最後まで言わせろ!」
「聞く必要もありません。男はけだもの、けだものは排除する。何もおかしいことはないでしょう?」
「おかしいことしかないんですけど!?」
今日は急な雨に見舞われた。天気予報では快晴、空を見ても疑う余地などないくらいの晴れ空だったにも関わらず、学校からの帰り道に突然雨が降ってきた。しかも結構強めの。
慌てて家に帰った俺はとりあえず濡れた服を脱ぎ捨て脱衣所へと直行した。シャワーでも浴びてサッパリしようと思ったのが間違いだった。
もっと言うならば、脱衣所に人がいないことを確認しなかったのがよくなかった。
お察しだと思うが、結論を言う。
『……どういう了見でしょうか?』
脱衣所のドアを開けると、半裸状態の紗月がこちらに半眼を向けてきた。
同じように雨に打たれて帰ってきて早急に脱衣所へ向かったのだろう。恐らく僅かな時間の差で、この悲劇は起こってしまった。
『いや、えっと』
しっとりと濡れた髪、控えめな胸を覆い隠す黄色の下着。きゅっと引き締まった腰、そして大事な部分を隠すのは上とお揃いの柄のものだ。そこから伸びる太ももはスラッとしているのに肉付きがよく、触れると実に柔らかそう(想像)だ。
『というか、いつまで見ているつもりですか?』
言いながら、紗月はとりあえずといった調子で体にバスタオルを巻く。せめて少しでも露出を抑えようということだろう。
そして、どこからか取り出した竹刀を手にして俺に襲いかかってきた。
「懺悔の用意はできましたか?」
こうして、冒頭へと繋がったわけだ。
「いやちょっと待って! 竹刀って生身の人間に対して使うものじゃないよ? あれはちゃんと防具を装備した上で使用するんだよ!?」
「問答無用ッ!」
俺の意見に耳を傾ける様子など微塵もなく、紗月は竹刀を振り上げる。
ああもうダメだ、俺がそんな諦めを感じたその時だ。
ハラリ。
紗月の体に巻かれていたバスタオルが剥がれ落ちた。
そりゃあれだけ動けば落ちもするだろうよ。
「……」
鬼の形相でこちらを睨んできている紗月の顔は羞恥のあまり真っ赤に染まっている。
これに関しては俺は悪くないだろ。とはいえ、見るもん見てるので仕方ない。
その竹刀を振り下ろすことで気が済むのであれば、その罰は甘んじて受けるとしよう。
「来いッ!」
その後、俺の悲鳴が逢坂家の外にまで響き渡ったという。
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