第2話 リアルスネ夫店長マー君
これは、私がパチンコ店の事務員をしていた時の店長の話です。
私は、事務員なので出世やマウンティングには関係ないし、噂話等にも全く興味もなく、
むしろ「お給料以上、頑張りたくないし頑張らないし関わる気もない精神」になっていました。
なので、他の社員さん達は大変そうだな、と思っていました。上に気に入られる為にペコペコ頭下げて、媚売って、さらに仕事で業績を残さなければならないのです。
この店長もその一人。しかし、この店長も物凄い方でした。
正直、他の社員さんからもいろんな意味で呆れられ、小馬鹿にもされていた為、皆から裏でその店長は「マー君」と、呼ばれていました。
私が異動した店舗の店長だったマー君は、とにかく理不尽でした。
私は、マー君から、お取引先のお客様からマー君に届いたメールのデータを共有されました。しかし、本来そのデータはかなりデリケートなもので、且つその仕事も店長か管理職の人しかしてはいけないはずの仕事でした。
しかし、マー君はそのデータを私に何故か共有してきて、データを作成しろ、と言うのです。
私はとりあえず、そのデータをマー君の指示通りに作成し、マー君にも共有し、マー君とお取引先へ送信しました。そして、元データはかなりデリケートなものだったので削除しました。
すると後日、本社のお偉い様方がいらして店舗ミーティングが始まりました。その時に、マー君は先日送ったデータを見せてくれとお偉い様方に言われ、更にはお取引先からもう一度そのデータを送ってくれ、と連絡が入ったのです。
しかし、なんとマー君はそのデータを紛失したみたいなのです。パソコンの中で紛失なんて事あるのでしょうか?
「あやえるさん!あのデータは?!」と、マー君は私に小声で言ってきました。
私は素直に、「あのデータは本来店長と管理職の方しか関わってはいけない物だったはずでしたので、店長宛に届いたメールでしたし、私のパソコンからは削除させていただいております。」と、伝えました。
すると、マー君。お偉い様とお取引先様がいらっしゃるにも関わらず、「えぇー!」と、叫んだのです。「ふざけるなよ!」「バックアップくらい気を使ってとっとけよ!」「頭悪いんですか?!」と、罵声を浴びせてきました。
更にお偉い様方とお取引先に「うちの事務員が使えなくて頭悪くて使えなくて本当にすみません!この事務員が勝手にやって、勝手に紛失したので!」「全ては、この気の利かない使えない事務員のせいなので!」と、私が横にいるのに平気で言うのです。
私は恐らく、今まで生きてきた人生の中で一番綺麗に白目を剥いていたと思います。
本来やってはいけない仕事をやらせたあげく、更には責任転換と擦り付け……。
マー君は慌てながら「本当にデータないんですか?!」と、私に詰め寄ってきます。
私は、もはや無の境地で、『あぁ。これが“無感情”というものか。本当に感情が無なんだなぁ。』と、思っていました。だって泣いても笑っても無いものは無いのです。そこに労力を使ってデータが復元するわけでもないのです。
結局、お偉い様の一人が見兼ねて「店長である君がそもそも間違っているだろう。」と、静かに言い放ち、お取引先から再度元データを店長宛に再送信して頂く事となりました。
しかし、マー君は懲りずにまた私にそのデータを送ってきて、データ作成を指示してきました。
私は仕事なのでまたマー君の指示通りにデータ作成し、今度はバックアップもしておきました。
でも私はマー君に単刀直入に「こんな事して大丈夫なんですか?」と、質問しました。
するとマー君は、こう言いました。
「俺の出世に関わるんだよ!」だそうです。
もはやここまで、責任転換と自己中ですと、逆に潔くて清々しかったです。
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