第18話決戦の前兆

小牧市こまきしにある清藤きよふじ自宅じたくに、電話でんわがかかってきた。

おそらく田亀組たがめぐみ連中れんちゅう上手うまくやってくれたにちがいない。

清藤きよふじはそうおもい、受話器じゅうわきった。

「はい、清藤きよふじです。」

金山きんざんです。」

田亀組たがめぐみ組長くみちょう金山信勝きんざんのぶかつからだった。

「それで作戦さくせんほう上手うまったか?」

「それが・・・失敗しっぱいしました。」

予想外よそうがい一言ひとこと清藤きよふじ一瞬絶句いっしゅんぜっくした、しかしすぐにいかりが表情ひょうじょうちた。

「どういうことだ!!」

最初さいしょ上手うまっていたのですが、あの連中れんちゅう邪魔じゃまされてしまいました。」

「あの連中れんちゅう一体いったいどんな連中れんちゅうだ」

名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうです。」

清藤きよふじしんじじられなかった、どうしてあの連中れんちゅう作戦さくせん妨害ぼうがいをしたというのだろうか?

「そんなバカなことがあるか!名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうがそんなことするはずがない。」

わたし同感どうかんです、長篠組ながしのぐみえてよろこんでいるのはあいつらもおなじです。」

「とにかく、重要じゅうようなのは長篠組ながしのぐみ連中れんちゅう始末しまつだ。なんとかしないとわたし市長生命しちょうせいめいかかわる。」

清藤きよふじがこれまで市長しちょうつづけてこられたのは、裏社会うらしゃかい人々ひとびとちから最大限さいだいげんにかつ露見ろけんされないように活用かつようしてきたからだ。

もし名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごう自分じぶん長篠組ながしのぐみとの関係かんけいをマスコミに暴露ばくろしたら・・・。

そうおもった清藤きよふじ悪寒おかんはしった。

「わかっています、しかし連中は名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうがかくまっているようです。」

なんだと!!とにかくわたしからのらせをて、それまで勝手かってなことはするなよ。」

承知しょうちしました、では失礼しつれいします。」

通話つうわれると清藤きよふじ狼狽ろうばいした。

桐島きりしま利用りようして羽柴はしば一連いちれん犯人はんにん仕立したげ、そのあと桐島きりしまもろとも長篠組ながしのぐみ残党ざんとう始末しまつする予定よていくるってしまった。

とにかく不安ふあんでいてもたってもいられない、なにがあっても桐島きりしまらにはえてもらわなければならない。

清藤きよふじ周防すおう電話でんわした。

周防すおうか、わたしだ。」

清藤様きよふじさま一体いったいどうしたんですか?」

田亀組たがめぐみ計画けいかく失敗しっぱいした、しかも桐島きりしまらは名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうがかくまっいる。」

「え!?田亀組たがめぐみ失敗しっぱいしたんですか。しかも名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうまで・・・、これはかなり面倒めんどうなことになりましたね。」

まったくだ、とにかく桐島きりしまらと名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごう情報じょうほうをとにかくあつめてくるのだ。」

承知しょうちしました。」

連中れんちゅうあなどるなよ、もうわるらせをくのはいやだからな。」

心得こころえています、では失礼しつれいします。」

通話つうわれると清藤きよふじはとりあえずいた。

それにしても名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうがあそこまでやるとはおもわなかった、一体いったいボスの大島おおしまというのは何者なにものなのだろうか?

しかしどんなやつ相手あいてでも退しりぞけてきたからこそ、清藤きよふじはここまで市長しちょうつづけてこれた。

今回こんかい絶対ぜったいたおしてやると、清藤きよふじこころかたくちかった。








八月十六日はちがつじゅうろくにち、チーム・ブンガブンガのメンバーは大島家おおしまけ集合しゅうごうしていた。

「それではこれより、清藤きよふじ田亀組たがめぐみたお計画けいかくについて会議かいぎはないをしていこう。」

なにかいい作戦さくせんがあったら、提案ていあんしてくれ。」

イーサンと武田たけだがこの会議かいぎ仕切しきっている。

「じゃあ、田亀組たがめぐみ連中れんちゅう一人捕ひとりとらえて捕虜ほりょにしようぜ。そいつで清藤きよふじをおびきすんだ。」

神島かしま堂々どうどうった。しかしイーサンはかないかおをしている。

「それはくないなあ・・・。」

「イーサン、なんでだよ?」

「そんなきたないことはしたくないよ、なあ武田たけだ。」

「ああ、それに相手あいて仲間なかま簡単かんたん見捨みすてる連中れんちゅうだ。かり捕虜ほりょとらえたところで、っかからないかもしれない。」

「そうか・・・、清藤きよふじ長篠組ながしのぐみ見捨みすてたからな。」

神島かしま提案ていあんげた。

「じゃあ清藤きよふじいえしのんで、ホラーハウスにするというのはどうだ?」

風間かざま提案ていあんした。

「ホラーハウス?」

「お屋敷やしきのことだよ、かえって清藤きよふじ恐怖きょうふ味合あじあわせてやるんだ。」

たしかに、そいつはおもしろそうだな。」

「それに仕掛しかけはイーサンとジェームスのマジックと連動れんどうしておこなうんだ、これならかならずビビるぜ。」

最高さいこうじゃない、だったらわたし空手からてれてよ。」

斎藤さいとう提案ていあんした。

「ビビっている清藤きよふじわたしがこっそりちかづいて、わざをきめてやるんだ。」

「おー、それも最高さいこうだね。」

メンバー全員ぜんいんでアイデアをっていると、桐島きりしま田中たなかがやってきた。

桐島きりしま田中たなかいま大島家おおしまけでかくまいながららしている。

なにがっているな。」

「あ、桐島きりしまさんと田中たなかさん。どうやって清藤きよふじらしめようかかんがえていたところです。」

きみたちをていると不思議ふしぎだよ、どうして無謀むぼうなことに挑戦ちょうせんできるんだ?」

桐島きりしまがイーサンにった。

「じゃあ桐島きりしまさんは、ぼくたちのしようとしていることが、無謀むぼうえる?」

「もちろん」

「どうしてそうかんがえるのかな?やってみないとわからないのに」

桐島きりしまづいた、自分じぶんとイーサンはまったかんがかたちがう。

桐島きりしまはこれまでやるまえにできるかできないかをかんがえていた、しかしイーサンはかんがえないですぐに挑戦ちょうせんする。

もしかするとその行動力こうどうりょくがあったからこそ、前日ぜんじつ自分じぶんたちをわなにはめることができたかもしれない。

「そうだな、イーサンのとおりだ。その行動力こうどうりょく見習みならっていかなければならない。」

すると桐島きりしまのスマホがった。

「はい、桐島きりしまです・・・・おまえ、どうして!・・・・わたしいま、そんな状態じょうたいじゃない。・・・わかった、わたし大島家おおしまけにいる。名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうえばわかるはずだ。それじゃあな。」

桐島きりしま通話つうわった。

桐島きりしまさん、だれから?」

「・・・わたしいからだ。」

そううと桐島きりしま自分じぶん部屋へやへとかっていった。







それから三十分後さんじゅっぷんご会議かいぎわって一人残ひとりのこっていたイーサンは桐島きりしまはなしていた。

内容ないよう裏社会うらしゃかいでの苦労話くろうばなしについてである。

「じゃあ、桐島きりしまさんも大変たいへんだったんだ。」

「ああ、組長くみちょう命令めいれい絶対ぜったいだからね。ミスなんてしたらどんなうかとおもうといていられなかったよ。」

「じゃあ桐島きりしまさんはどうしてヤクザになったの?」

「ああ、あのころはとにかくまわりのやつとか勉強べんきょうとかいやになってて、自分じぶんきなようにしていたかったんだ。そうしていたら無意識むいしき乱暴らんぼう性格せいかくになって、授業じゅぎょうもサボりまくって、よるまちあるくようになって、組長くみちょうにスカウトされてた。あのころさきがどうなるかなんて、まともにかんがえていなかったんだ。」

桐島きりしまとおくをていると、友近ともちか桐島きりしまこえをかけた。

「あんたにおきゃさんよ。」

「もしかして田亀組たがめぐみ連中れんちゅう!?」

安心あんしんして、最初さいしょはそうおもったけど、ただの大学生だいがくせいよ。」

桐島きりしま友近ともちかについていった、イーサンもそのあとつづいた。

応接間おうせつまくと、日向ひなた彩芽あやめがソファにってっていた。

桐島きりしまさん・・・。」

二人ふたりとも、どうしてわたしいにきたんだ?」

長篠組ながしのぐみれてから、どうしているのか心配しんぱいになったんです。」

わたし一緒いっしょだよ。」

「そんな・・・もとヤクザであるおれなんかに・・。」

「そんなの関係かんけいないよ、桐島きりしまさんはいいひとじゃないか!!」

「そうだよ、バイトのときやさしかったし、ヤクザとはおもえないほど気配きくばりもかった。」

「おまえら・・・。」

「それで大島おおしまさんから桐島きりしまさんのこといた、ぼく彩芽あやめたすけてあげたい。」

「うん、ちからしてあげるよ。」

桐島きりしまはうれしきをした、それをたイーサンは『かったね』と微笑ほほえんだ。






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