第12話隠匿の先手

イーサンは友近ともちか運転うんてんするくるまでその高校生こうこうせいいえいた。

友近ともちかからいたはなしによると行方不明ゆくえふめいになった高校生こうこうせい名前なまえ西園寺正彦さいおんじまさひこという高校三年生こうこうさんねんせいで、今年ことし五月ごがつからふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでアルバイトをはじめたという。

友近ともちかがインターホンをすと正彦まさひこははがドアをけた。

「あら、また名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうなの?」

「はい、今度こんどはおねがいがあってきました。」

「おねがいってなに?」

正彦まさひこくんからふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでバイトしていたとき証言しょうげんきたいのです、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃくすためにちからしていただけませんか?」

「あら、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃってもうくなったんじゃないの?」

「それが移動販売いどうはんばいめただけで、まだのこっているんですよ。」

「そ・・そんな。」

正彦まさひこははあおかお廊下ろうかにへたりんだ。

「だから正彦まさひこくんの証言しょうげん警察けいさつって、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃはや摘発てきはつしたいのです。」

「わかったわ、電話でんわをかけるわね。」

そううと正彦まさひこ母親ははおや神戸こうべ親戚しんせきいえ電話でんわをかけた、そしてすこはなすと友近ともちか受話器じゅわきわたした。

「はい、名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごう友近ともちかです。」

正彦まさひこです、はなしきたいんですよね?」

「ええ、そうよ。」

そして正彦まさひこ当時とうじことはなしだした。










今年ことし五月七日ごがつなのかから、正彦まさひこふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでアルバイトをはじめた。

おも業務ぎょうむはダンボールに商品しょうひんんでいく作業さぎょう、これを六時間ろくじかんやらなければならない。

業務ぎょうむとくになんともなかったが、バイト以外いがい人間にんげん名前なまえんではいけないというルールがあった。

たとえば正社員せいしゃいん人間にんげん社員しゃいん、トラックで商品しょうひんってくるひと運転手うんてんしゅ課長かちょう係長かかりちょう役職やくしょくぶのがあたたりまえだった。

また商品しょうひん仕入しいさきなどの質問しつもんやバイトのことをだれかにってはいけないというルールもあった。

なんだか「会社かいしゃのことをるな、ただはたらけばいい」とわれているようにかんじた。

それから一ヶ月後いっかげつご正彦まさひこ所属しょぞくするテニス全国大会ぜんこくたいかい出場しゅつじょうすることになり、正彦まさひこ上京じょうきょうまった。

その翌日よくじつ正彦まさひこはアルバイトをめることを会社側かいしゃがわげ、上京じょうきょう準備じゅんびはじめた。

するとそのからいえにヤクザの格好かっこうをしたおとこたちがあられて、『正彦まさひこせ!!』と玄関げんかんたたいたりいしげたりなどの迷惑行為めいわくこういをするようになった。

さらに正彦まさひこ下校中げこうちゅう一人ひとりになっているところをねらってからむようになった。

おとこたちは「なんでバイトをめたんだ」としつこくたずねてきた、理由りゆう説明せつめいしても理解りかいしてくれなかった。

そしておとこ一人ひとりがナイフをして正彦まさひこそうとした、正彦まさひこはかろうじてげきれたがころされる恐怖心きょうふしんから母親ははおや相談そうだん上京じょうきょう神戸こうべ親戚しんせきいえかくすことにしたという。










一方いっぽうふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでは会議室かいぎしつ羽柴はしば桐島きりしま清藤きよふじ清藤きよふじいの探偵たんてい周防すおうあつまっていた。

今回こんかい大島愛知おおしまあいち名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうかんする情報じょうほう仕入しいれてきました。」

早速さっそくせてもらおう。」

羽柴はしば周防すおうれた情報じょうほうをまとめた資料しりょうた。

「うーん、やはりメンバーがおおいな・・・。」

「ええ、今回こんかい資料しりょうせているのはほんの一部いちぶです。」

すると羽柴はしば一人ひとり顔写真かおじゃしんうつった、その顔写真かおじゃしんはイーサンのものだった。

「なんだ、このひとは?」

「ああ、天星あまぼしイーサンですね。連合れんごうでは最年少さいねんしょうのメンバーで、チーム・ブンガブンガのリーダーです。」

「チーム・ブンガブンガ?なんだそのふざけた名前なまえ集団しゅうだんは」

一言ひとことうならわるガキ集団しゅうだんですね、ただ地元じもと子供こどもたちのあいだでは評判ひょうばんく、大島おおしまはそのスポンサーになっています。」

「こんな連中れんちゅうちからして、一体いったいなんのとくになるというのだ。」

羽柴はしばには大島おおしまという人物じんぶつがわからないようだ。

「このチーム・ブンガブンガについての資料しりょうもあります。」

周防すおう羽柴はしばにその資料しりょうわたし、説明せつめいはじめた。

さきほど紹介しょうかいしたリーダーでマジックの天才てんさい天星あまぼしイーサン

 イーサンの親友しんゆうあたまい・武田慎吾たけだしんご

 メンバーのなかではあらくれもの神島力かしまりき

 メンバーのムードメーカー・文道健介ぶんどうけんすけ

 空手からて全国少年少女大会優勝者ぜんこくしょうねんしょうじょたいかいゆうしょうしゃにしてただ一人ひとり女性じょせいメンバー・斎藤葵さいとうあおい

 あらゆる才能さいのう少年しょうねん風間裕斗かざまゆうと

 この六名ろくめいがチーム・ブンガブンガのぜんメンバーです。」

「なかなかの手勢てぜいれているな・・・。」

「ちなみにサスガスーパーでのてこもり事件じけんで、この六人ろくにん大島おおしまらと一緒いっしょ人質ひとじち救助きゅうじょをしました。」

なんだと!!じゃああいつらは、こんなガキどもにやられたということか・・・。」

羽柴はしばいかりをとおしてあきれはてた。

「ん?神島かしま・・・。」

桐島きりしま神島かしまという名字みょうじにとまり、メモちょうひらいた。

「どうした、桐島きりしま?」

「やっぱりおなじだ、これをてください。」

羽柴はしばは「神島鈴かしまりん」とかれたページをた。

神島鈴かしまりんのことは数日前すうじつまえ桐島きりしまからいていたが、相手あいておさなどもということでスルーしていた。

おな苗字みょうじ・・・ということは!」

羽柴はしばあたまなにかがひらめいた、そして周防すおうった。

「この神島鈴かしまりんという少女しょうじょについて調しらべてほしい。」

「わかりました。」

周防すおう調査ちょうさかった。

くびかしげる清藤きよふじたいし、羽柴はしば桐島きりしま脳裏のうりにはあるかんがえがうかかんでいた。










八月十三日はちがつじゅうさんにち桐島きりしま日向ひなた彩芽あやめ三人さんにん団地だんち木陰こかげひそめていた。

「お得意様とくいさま本当ほんとうにやるのですか?」

「ああ、社長しゃちょう命令めいれいだからな。」

誘拐ゆうかいなんてはじめてだわ・・・。」

日向ひなた彩芽あやめ桐島きりしまなかのいい男女だんじょのアルバイト、おな大学だいがく出身しゅっしんだが新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうひまあましていたところ、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでアルバイトをはじめた。

移動販売いどうはんばいめたことで二人ふたりとも解雇かいこになってしまったが、はたらいていたときに連絡先れんらくさき交換こうかんしていたので、今回こんかい誘拐ゆうかい協力きょうりょくしてもらうことにした。

誘拐ゆうかいのターゲットは神島鈴かしまりん

今日午前九時頃きょうごぜんくじごろ周防すおうからの連絡れんらくで「神島力かしまりき神島鈴かしまりん兄妹きょうだいである」という事実じじつった。

そこでりん誘拐ゆうかいしてりきほうから「チーム・ブンガブンガ!」と大島おおしまおどしをかける、そこで身代金みのしろきんとして一千万円いっせんまん用意よういさせこの地区ちくでのシノギの妨害ぼうがいをしないことを大島おおしま約束やくそくさせるのだ。

たぞ、あのだ。」

一人ひとり団地だんち広場ひろばあるいているりんつけた、はずどおりに彩芽あやめりんほうへとあるいていく。

「ちょっといい?」

「なに、おねえさん?」

二棟にとうの504号室ごうしつきたいんだけど、どこだかっている?」

ってるよ、二棟にとうなら・・・。」

りん視線しせんをそらしたすき日向ひなた素早すばやりんとらえ、りん口元くちもとにハンカチをてた。

そしてうしったりん素早すばや桐島きりしまくるまへとはこんでいった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る