第10話懲悪の決意

その長篠組ながしのぐみ組員四十人全員くみいんよんじゅうにんぜんいん警察けいさつ現行犯逮捕げんこうはんたいほされていった。

たすけされた人々ひとびとはイーサンに感謝かんしゃ賞賛しょうさん言葉ことばおくった。

「イーサン、すっかりヒーローだな。」

「ヤクザをずぶれにするのは面白おもしろかった、もうひさしぶりにわらころげたぜ。」

「さすがチーム・ブンガブンガのリーダだぜ。」

つかまったときはもうダメだとおもったけど、イーサンのイタズラマジックをたら絶望ぜつぼうなんかんだぜ。」

本当ほんとうにそう、最高さいこう大逆転だいぎゃくてんだったわ。」

メンバー五人ごにんからもイーサンはめられた。

「それにしてもチーム・ブンガブンガだけで勝手かって行動こうどうしたのはくなかったぞ、心配しんぱいしたんだからな。」

大島おおしまがイーサンにった。

「ごめんなさい、調子ちょうしっちゃった。」

「ファーザーも心配しんぱいしたぞ、でも見事みごとなマジックだった。」

とうさんこそ・・・。」

イーサンとジェームスはハイタッチをした。

「あの、イーサン・・・。」

藤宮ふじみやがイーサンにはなしかけた。

たすけにてくれてありがとう、あなたたちのこと見直みなおしたわ。」

「どういたしまして、ぼくのマジックどうだった?」

面白おもしろかったわ、またせてね。」

そして藤宮ふじみや宮前みやまえ一緒いっしょかえってった。

「イーサン、ジェームス!!」

自宅から心配しいぱいした蜜柑みかんけつけたきた。

「あ、ママ。」

蜜柑みかん、ただいまかえったぞ!」

「ただいまじゃないでしょ、連絡れんらくくれたかとおもったら『サスガスーパーで戦争せんそうしてくる』ってって、どういうことってあせっていたらサスガスーパーでてこもり事件じけんきていることって、あわわててけつけてきたのよ!?」

蜜柑みかん一気いっきにまくしてた。

「すまなかった、冒険ぼうけんくとついそっちのほうにってしまうのだ。」

「もう心配しんぱいかけないでよ・・・、でも無事ぶじかった。」

蜜柑みかんとジェームスはった。









翌日よくじつ、ニュースで昨日きのう事件じけん報道ほうどうされ、イーサンがマジックで組員くみいんたちを水浸みずびたしにしていく様子ようす撮影さつえいした動画どうがうつされた。

ニュースによると四十人よんじゅうにんおとこたちは全員長篠組ぜんいんながしのぐみ組員くみいんであることを自供じきょう動機どうきはやはりサスガスーパーが横流よこながしを拒絶きょぜつするようになったので、もう一度言いちどいうことをきくように人質ひとじちたておどしをかけたということだった。

だが長篠組ながしのぐみ組長くみちょう事件じけん関与かんよしているかどうかという質問しつもんには、組員全員くみいん黙秘もくひしているという。

これにより『ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ』の実態じったいあきらかにされ、移動販売いどうはんばい利用りようしていた団地だんち住人じゅうにん衝撃しょうげきけた。

一方イーサンの大活躍たいかつやくにより、天星家あまぼしけにはニュースやバラエティー番組ばんぐみからの取材しゅざい相次あいついだ。

イーサンはたちまち地元じもと有名人ゆうめいじんになり、「チーム・ブンガブンガ!」の目的もくてき達成たっせいされたとおおいによろんだ。









その正午しょうご天星家あもぼしけではジェームスの帰省きせいいわうパーティーがひらかれた。

ジェームスはくにをまたいで活躍かつやくする世界的せかいてきなマジシャンで、様々さまざまなイベントやゲリラライブでショーを開催かいさいしている。

イーサンが「チーム・ブンガブンガ!」を結成けっせいするきっかけになった一つに、いろんなひとをマジックであっとおどろかせているジェームスの影響えいきょうもある。

四ヶ月前よんかげつまえにフランスでの公演こうえん日本にほんくと連絡れんらくしたジェームスだったが、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょう日本にほんへなかなかわたることができなかった。

ようやく日本にほんけるようになり、せっかくならサプライズしてやろうとおもって、イーサンのいる大島家おおしまけかったところ、昨日きのう救出作戦きゅうしゅつさくせん参加さんかすることになったということだ。

「それにしてもイーサンは本当ほんとううでげたよ、マジックのたびれてってもいいかなとおもわせるほどに。」

「ありがとう、でもぼくはまだチーム・ブンガブンガをつづけたいんだ。大島おおしまさんのためにもね。」

「そうか、あのころ大島おおしまさんには本当ほんとう世話せわになったからな。」

五年前ごねんまえにイギリスから日本にほんしてきた天星家あまぼしけ、そのとき仕事しごと住宅じゅうたくのことで大島おおしま色々いろいろ世話せわになったのだ。

本当ほんとうにいいひとだわ、昨日きのうも『ご迷惑めいわくをかけてごめんなさい』ってちゃんとあやってくれて、今日きょうはおびにとケーキをってきてくれたし。」

「あのひと身近みぢか住民じゅうみんきなんだよ、だからこんなにやさしいんだ。」

イーサンはそう言って、ケーキをほおばった。

わたし大島おおしまさんになら市長しちょう政治家せいじかになってほしいとおもうけど、どうしてならないのかな?」

蜜柑みかんおもっていることをった。

「たぶん、みんなのちかくにいたいんだよ。」

イーサンがうと電話でんわった、蜜柑みかん電話でんわがにでると「大島おおしまさんからよ」とって、イーサンに受話器じゅわきわたした。

「はい、イーサンです。」

「パーティーちゅうにすまない、午後五時ごごごじから会議かいぎひらくことにしたから、もしれるなら『チーム・ブンガブンガ』のメンバーと一緒いっしょてくれないか?」

「もちろん。」

「ありがとう、っているよ。」

通話つうわったイーサンはパーティーへともどった。










午後五時ごごごじ大島家おおしまけ会議かいぎはじまった。イーサンは「チーム・ブンガブンガ!」のメンバー全員ぜんいんれて参加さんかした。

そしてジェームスも会議かいぎ参加さんかすることになった。

参加者全員さんかしゃぜんいん真剣しんけんかおで、大島おおしまけた。

あつまってくれてありがとう。単刀直入たんとうちょくにゅううと、会議かいぎ内容ないよう長篠組ながしのぐみ本格的ほんかくてきつぶ計画けいかくだ。」

するどつきで宣言せんげんする大島おおしまに、全員ぜんいん硬直こうちょくした。

「おい、長篠組ながしのぐみつぶすってどういうことだよ?たしかに昨日きのうのことはゆるせねえけど、組員くみいん四十人よんじゅうにんつかまったんだろ。もうたいしたことないんじゃないか?」

神島かしま大島おおしまった。

「いや、長篠組ながしのぐみ組長くみちょうがまだいる。こいつをどうにかしないとだめだ。」

ここで友近ともちかしゃべりだした。

「これはわたし仕入しいれた情報じょうほうだけど、警察けいさつ長篠組ながしのぐみ組長くみちょう事件じけん関与かんよしているとんで、長篠組ながしのぐみ事務所じむしょかった。だけどそこはすでにわれたあとだったわ。」

「つまりげたということか。」

「やはり組長くみちょうあやしいなあ・・・。」

メンバー全員ぜんいんがそわそわした、友近ともちかはさらにしゃった。

あとふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ完全かんぜんにはつぶれていないわ。移動販売いどうはんばいをとりやめたなっただけで、インターネットでの注文ちゅうもんはまだつづけているのよ。」

「そうか、あいつらまだ横流よこながしをしているのか・・・。」

イーサンがつぶいた、大島おおしまあらためてしゃべりだした。

友近ともちかさんの情報じょうほうまえてうと、長篠組ながしのぐみはひっそりと悪事あくじつづけているということだ。このままでは昨日きのうみたいな事件じけんがまたおこる可能性かもうせいがある。住民じゅうみん安全あんぜんのためにも、長篠組ながしのぐみ排除はいじょするべきだとわたしめた。ここでわたしちからしたいもの名乗なのてくれ、もちろん無理むり参加さんかする必要ひつようはない。」

するとさきにイーサンが名乗なのた。

ぼくはみんなが安全あんぜんらせるようにしたい、だから『チーム・ブンガブンガ』のみんなは大島おおしまさんに協力きょうりょくするよ!ね、みんな?」

「もちろんだ。」

「ヤクザをコテンパンにする・・・、最高さいこうじゃねえか。」

「ようし、たのしくなってきたよ。」

今度こんどこそたたきのめしてやる!!」

危険きけんがつきものだけど、長篠組ながしのぐみ野放のばなしにするほうがもっと危険きけんだ。」

チーム・ブンガブンガのメンバー全員ぜんいん参加さんかめた、その姿すがた会議かいぎ参加者全員さんかしゃぜんいん大島おおしまちからすと名乗なのりた。

「ありがとう、みんな・・・。」

大島おおしまはひそかにわらった。







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