もしも
鳳珠
寝てた
彼氏からメッセージの既読がつかなくなってから約5時間が経ちました。
漫画をずっと読んでいて気づいたら日付を大幅に超えていました。このままウトウトして眠ってしまえば無駄なことを考えずに済んだものを、あろうことか私は現在連絡の確認をしてしまいました。そこで思い出してしまったのです。彼氏から連絡来てないなあと。まあ21時頃のやりとりを最後に連絡が途絶えているのでおそらく彼氏は寝ているのでしょうけど。
しかしここで私の悪い癖が働きます。これ、本当に彼氏の寝落ちなのでしょうか。と疑い出しちゃうわけです。
次の彼氏からのメッセージでは「あ、寝てた(笑)」と返ってくるでしょうね。本当に寝落ちしてても、実は違うことをしていても、なんとなく沈黙の時間が解決へと導かれる魔法の言葉です。嘘っぽいようで嘘っぽくないですよね。
あなたも寝てもないくせに理由を説明するのが面倒で使ったことあるのではないでしょうか。この言葉。私もあります。だからこそ、ついつい実は寝てなかった世界線の方へと想像が歩いていきます。
実は親しい女性を部屋に連れ込みあんなことやこんなことになっているのではないか。具合が悪くなり倒れているのではないか。携帯が壊れてしまったのではないか。
私だけでしょうか、こうのような場合後味の悪い嫌な方向への妄想がせかせかと進んでいきます。考えないでおこうと意識しても、かえって頭の片隅にあるテンプレが自己主張を始め、当事者たちを私や彼氏や他周囲の人間に当てはめてしまうのです。もしも私たちが愛し合ったあのベッドで彼氏が現在進行形で他の女と裸を擦り合わせていたら...。あああ止まってくれ私の想像力。
しかし彼氏はいい人です。素直で大人しくて、そんなところがとても大好きです。彼氏にはそんなことはできません。と、言い切りたいところですが素直も大人しいもいい人も作ることができます。なりきることができるのです。あああもうそんなこと言ってたら埒が明かないですよね。あなたの言いたいことは分かります。けどやっぱり心の片隅にある一抹の不安、心臓の裏側を素手で握られているような圧迫感、胃にくるずっしりと重くゴワゴワとする異物感が拭いきれません。
そんなことはないと思うんです。そんなことはないと思うのですが。なんでしょうか。ただいつも通り私の部屋のベッドでひとり寝転がっているだけなのに普段とは違うドロリとした沁みる汗は。
もしかしたら、
あ、こんな変な時間ですが彼氏からたった今メッセージがきました。無事でよかったです。
私も起きすぎてるので彼氏からの連絡を返したら寝ますね。すみませんねこんな時間にダラダラと。
「あ、寝てた(笑)」
もしも 鳳珠 @yp_582
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。もしもの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
やしばフルカラー最新/矢芝フルカ
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 11話
メルカリの歩き方。/浅野新
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 39話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます