白色の君
。。。。
第1話 普通
「この世界は、、、クソだ。」
朝起きた時。通学中。食事中。寝る前。
毎日そんなことを考えている。
俺たちはこの世にある日突然産み落とされた。
望んでもいない世界に、
望んでもいない環境で。
いきなり生まれて、
いきなり生きることを強制される。
[死ぬことは弱い事だ]なんて言われながら、
何が目的なのかもわからず、
ただ一日一日を過ごしている。
求めてもいない未来を強制され、
求めてもいない夢を持つことを強制される。
自由だなんて口だけだ。
この世は、理不尽で、残酷で、平等なんてない。
クソみたいな世界だ。
「おい、彩空。聞いてんのか。」
「あ、わりぃわりぃ。聞いてなかったわ。」
「ほんとお前ってぼーっとしてるよなぁ。そんなだから彼女のひとつも...」
「うっせぇよっ!」
「いてっ!」
高校からの帰り道。俺はいつもと同じ道を、いつもと同じやつと歩いて帰っていた。
「なぁなぁ、愁。お前、進路調査出した?」
「は?お前まだだしてねぇの?あれ確か先週までだぞ」
「げぇ?まじ?だりぃ、、、」
「早く出せよなー。どうせ大学行くだけなんだしよ。」
「おーう。じゃーなーー。」
そう言って、いつものT地路で、
いつもと同じく、愁に手を振り別れを告げる。
「進路調査なぁ、、、。」
小声で声に出してみる。
本当は、提出期限が先週だったことも、
愁がもう提出しているであろうこともわかっていた。
だけど俺は、いつまで経ってもその、1枚の紙の、小さな欄を埋めることが出来なかった。
進路調査なんて、なんのためにやるのか、、。
だいたい、調査することで何が変わるんだよ。
やっぱりクソみたいな世界だ。
いつも通り、どこにぶつければいいかも分からない愚痴を吐きながら、家の近くまで歩いた。
すると、ふと、耳慣れない歌声が自分の家の向かいから聞こえた。
曲名は分からない。歌詞も聞いたことの無い曲だった。
「え.....?」
気づくと俺の頬には、ひと粒の水が流れていた。
その歌声は、俺にどうとも表せない虚しさと悔しさ、切なさを覚えさせた。
(この家、空き家じゃなかったっけ。)
新しい住人が来たのだろう。
表札には見慣れない苗字が飾られていた。
(鷦鷯?いやむずっ)
いつの間にか歌声は止み、ただまたいつものおなじ景色、音が流れていた。
「ただいまー。」
「あ、さくにぃおかえりー。」
「あれ?にいちゃん今日バイトは?」
「休みだわ。お前らの飯誰がつくんだよ。ばーか。」
「え?今日おかん遅番なの。知らなかったわ」
能天気な弟たちを横目に、俺はカバンを階段下へ投げた。冷蔵庫の中には、買い置きの肉や、魚、野菜。料理をするには申し分ない食材が置かれていた。
「おーい。凜空、空夜ー。宿題したのかー、、、?」
「「してなーい。」」
「はい。ゲーム終わりー。今すぐ始めろ。」
「「ほーい。」」
ゲームを辞めさせ、2人が部屋へ向かうのを確認し、今日の献立を考える。
変わらない一日だ。何も。ただ普通の。
そんな時だった。
ピンポーン。
「はーい。」
「すみませーん。向かいに越して来たものですが。」
今思えば、この時だった。
どうしようもない程につまらなく、疎ましいこの世界が俺を変えようとしたのは。
白色の君 。。。。 @nyosu0809630
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