ぶるーあーす

めめんと森

第1話

「は?何処ここ?」


目の前で起きた異常に脳が追いつけない。

いや、そもそも前後の記憶がハッキリしない。


最後に覚えているのは…そう、職場で昼休憩に入ったので今日は何を食べようかとスマホで検索していた所だ。


(どうしたらこんな事になる?)

(いや、落ち着け…先ず他に何か忘れてないか確認しよう)


真倉まくろ 煌輝こうき

25歳

会社員〈地方の車関係中小企業の営業課〉

独身〈一人暮らし〉

略。


(うん、なんの面白みもないな…)

(とはいえ前後の記憶以外は覚えているか。)


自身の確認をし気持ちを落ち着かせたところで目の前の状況に再び向き合う。


「どうゆうこと!?」


うん、落ち着ける訳ないよね。

それでも状況を理解しようと辺りを見回す。


周りは石造りの壁で囲まれ、目の前にはちょっとした祭壇?の様なモノがあり何かを安置する為の丸い窪みがある。

部屋自体はそこそこ広いようだ。

見上げると天井は丸い穴が中心に空いており、祭壇の丸い窪み目掛けて穴から日光が差し込んでいた。


辺りをひとしきり見回すとようやくそこで右手に何か握っている事に気付く。


「なんだこれ?水晶?」


見るとそれは赤い水晶玉だった。

十中八九祭壇の丸い窪みにハマっていたのはこれだろう。


(なんで俺こんなの持ってんの?)


そう思いながら半ば反射的に日光にかざそうと腕を持ち上げた瞬間…。


「あっ…」


ストンッ……ガシャーン‼︎


手が滑り水晶玉は地べたへ向かい派手な音と共に粉粉に砕けた。


「マジか!うわっやばっ!」


無意味と分かりながらも慌てて拾いあげようとするも、どんな材質で出来ていたのか…

砕けたその姿は砂のようになって最早原型がない。

この玉だったモノが何に使われていたかは知らないが相当大事なものだろう事は想像できる。


『ギャーーーーーーー!!』


赤い砂を見て真っ青になっている俺の背後に突如耳をつん裂く声が襲い、反射的に振り返るとそこには凄い形相で頬に両手を当てた赤髪の少女が立っていた。


『あ、あ、アンタ……』


ワナワナと震える少女…。


「あ、あのーこれはですね…その…」


次に来るリアクションを想像し必死に言い訳を考える。


『何やってんのよー‼︎これがどんだけ大事なもんかわかってんの‼︎』


「ひっ!ごめんなさいごめんなさい‼︎いやちょっとキレイだなって思って覗こうとしたんですよそしたら勝手に水晶が滑っちゃってまさか滑るなんて思わないじゃないですかいやそもそもなんで俺の手にあったかとわかんなくててかここがどこかも知らなくてですねつまりそのごめんなさいでしたー‼︎」


控えめに言って社会人としてカスでした。

はい、すみません。






とまあ、これが俺と彼女との出会いでありここから世界を巡る冒険に出るなんて事はまだ思ってもなかったのだ。








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