　今月９日、《リパーフート市》にある魔物園（まものえん）〝リパーフート・モンスターパーク〟で、雄（オス）のミノケンタウロス一頭（いっとう）が園内から逃げ出し、辺（あた）りは一時騒然（そうぜん）となった。

　事件が起きたのは、朝の開園時間前。

　魔物使いの職員が出勤してくると、飼育檻（しいくおり）の扉が開いていることに気づき発覚。中に居るはずのミノケンタウロス一頭の姿が見えなくなっており、逃げ出したのだと察（さっ）した職員は慌（あわ）てて園内を捜索（そうさく）した。

　すぐに屋外（おくがい）通路上を歩いている姿を確認するに至（いた）ったのだが、ミノケンタウロスは、牛面（うしづら）の鼻から荒い息を吐き出し、四本脚の蹄（ひづめ）を打ち鳴らして、極度（きょくど）に興奮（こうふん）していた。上半身には拘束具（こうそくぐ）が取り付けられているが、危険な状態である。

　その職員は、なだめようと試（こころ）みたが上手（うま）くいかなかった。普段、飼育を担当しているのは別な魔物であるため専門外。ゆえに扱（あつか）い方をよく知らなかったのだ。対応に苦慮（くりょ）しているうちに、ミノケンタウロスは突如（とつじょ）として駆（か）け出（あ）し、園外へと逃走してしまう。

「モォ～、びっくりしたわぁ。馬かと思ったらミノケンタウロスなんだもの！」

　牛のように興奮してインタビューに応じてくれたのは、魔物園近隣（きんりん）に暮らしている主婦・アニタさん（43）である。玄関のポストに新聞を取りに来た彼女は、パカラッパカラッと鳴り響いてきた蹄（ひづめ）の音でふりかえった。すると、自分がいるほうへ猛然（もうぜん）と迫（せま）ってきていたのは、なんと荒れ狂う雄（オス）のミノケンタウロスだったのである。