[No.5] 魔法使いの少女 意識失い墜落死?

 《デゼルト高原こうげん》の牧草ぼくそう地帯ちたいで、十代なかばと思われる少女の遺体いたいが見つかった。

 発見者は羊飼ひつじかいの少年である。家畜小屋から羊たちを連れ立ち、牧草地へと向かう道中、移動していた群れの数頭が立ち止まり、メェーメェーとしきりに鳴き始めた。気になって近づいてみたところ、草原そうげんで倒れていた少女を発見。すでに息をしておらず、体も冷たくなっていたという。

 遺体の少女は、魔法使いの見習みならいとみられている。

 うつせになっていた体は、黒いワンピースを着用しており、高所こうしょから落下したかのように手足ががっていた。付近ふきんは牧草地であるため、転落するような高い建物や樹木じゅもくなどはなく、また、近くには所有物と見られる竹箒たけぼうきが落ちていたこともあり、ほうきを使用しての飛行中になんらかの不足ふそく事態じたいが発生し、墜落ついらくした可能性が高いようだ。

 とある有識者ゆうしきしゃは、少女が高速飛行中の意識いしき喪失そうしつにより落下してしまったのではないかという見解けんかいしめしている。空を高速で飛行するさい、体重の何倍ものおもみが全身に加わったようになり、その加重かじゅうえられず意識を失ってしまうことがあるそうなのだ。上位層じょういそうの魔法使いならば、負荷ふか軽減けいげんまたは完全になくしてしまうことも出来得できうるらしいが、見習いではそれが難しいとのことだった。

 近年、おのれの能力を過信かしんしたり、無謀むぼうな飛行をおこなう見習い魔法使いが増加傾向にあり、このようなケースの事故が度々たびたび起こっているようである。外出中、空からってきた見習い魔法使いと衝突しょうとつしないことをいのるばかりだ。

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