とある異世界の新聞記事より抜粋

[No.3] 沼の底からガイコツ兵士現る!?

　ガイコツ兵士現（あらわ）るなどと銘打（めいう）っているが、案（あん）ずるなかれ。魔法や魔術の効力によって彷徨（さまよ）う〝生（い）ける屍（しかばね）〟の類（たぐい）が出没（しゅつぼつ）したわけではない。ただの屍だ。

　先（さき）ごろ、《ジレッヴィ村》に住（す）まう少年が、近隣（きんりん）の森にある沼へと釣りに訪（おとず）れていた。しかし、長（なが）らく粘（ね）ってみるも釣果（ちょうか）は芳（かんば）しくない。そのうち日も傾（かたむ）き出してしまったので帰宅することにし、これが最後の一投（いっとう）だと決めて放（はな）っていた糸を手繰（たぐ）り寄（よ）せていく。

　そこで手応（てごた）えがあった。

　竿（さお）のしなり具合（ぐあい）からすると、かなりの大物である。期待に胸を膨（ふく）らませ、獲物（えもの）を水面から引（ひ）き揚（あ）げた、その次の瞬間、少年は大声で叫んでいた。歓喜（かんき）の叫びではなく、悲鳴（ひめい）である。

　釣り上げたのは、鉄兜（てつかぶと）を被（かぶ）った人間の髑髏（しゃれこうべ）だったのだ。

　少年からの一報（いっぽう）を受けたジレッヴィ村の自警団（じけいだん）は、翌朝、沼に赴（おもむ）いた。

　水中を浚（さら）ってみると、沼底（ぬまそこ）から頭部（とうぶ）を除（のぞ）く白骨化（はっこつか）した遺体（いたい）が発見された。性別は判別できていない。着衣（ちゃくい）のプレートメイルには槍（やり）で突き抜かれた痕（あと）があり、また、水苔（みずごけ）や藻類（もるい）が生（む）してもいたため、事切（ことき）れてからずいぶんと長い間沈（しず）んでいたと推測（すいそく）される。

　同村内では遺体に該当（がいとう）するような人物がおらず、冒険者同士の諍（いさか）いの末（すえ）に殺害された人物ではないかとみている。