とある異世界の新聞記事より抜粋

猫渕珠子

MONTH 1

[No.1] キノコ狩りの男性 ゴブリンに襲われケガ

 昨日正午しょうご過ぎ、《コモネ村》の村外れの森で、同村内に暮らす無職の男性・アルベルトさん(68)がゴブリンと遭遇。棍棒こんぼうのようなもので殴られ、顔や手にケガをった。命に別状べつじょうはないという。ゴブリンの体長は約1メートルほど。着衣ちゃくいなどからオスの成体せいたい推測すいそくされる。

 アルベルトさんは、夕食にするキノコをるため森にっていたところを、運悪くゴブリンと鉢合はちあわせしてしまったようだ。ゴブリンは普段れをしていることが多いが、このときは不幸中の幸いか、はぐれ者と見られる一匹だけだった。手にしていた歩行用のつえを武器に応戦しつつ街道かいどうへと逃げ出たあと、近くを通りかかった冒険者パーティに助けを求めてなんがれたとのことである。

 ゴブリンはあらたに加わった人の気配をさっしたのか、冒険者パーティが臨戦りんせん態勢たいせいを取るよりも先に森へと姿を消してしまったらしい。冒険者らはアルベルトさんに応急処置をほどこしたのち、村医者のもとまでったそうだ。

 また、同日夕方には、コモネ村付近の街道で、雑木林ぞうきばやしの向こうを走り去るゴブリンの目撃情報も寄せられている。同一個体であるかはさだかではない。

 昨今さっこん、ゴブリンとの遭遇事案が増えていることもあり、ハンターギルドでは、不用意に森へ近づかないようにと注意の呼び掛けをおこなっている。

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