雨の中のシンデレラ

村上 雅

第1話

        雨の中のシンデレラ


  突然降ってきた雨に、僕は何も雨具を用意していなかった。

 商店街の中にある、今日は日曜日でシャッターを下ろしている小さな会社の軒先のきさきに、僕は咄嗟に逃げ込んだが、ひさしが狭く風が吹く度に、大粒の雨の飛沫しぶきが舞い込んできて顔に降りかり、ジーンズの膝から下はもうびちょびちょだ。

 今朝、姉貴がテレビを観ていて、カップスープとトーストを口にしながら僕に話しかけてきた。

「今日は雨が降るんだって……真樹まさき、それに見てみー、今日のアンタの運勢は運命の人に出逢うよき日だってよ。これで、アンタもやっと運命の女性ひとに巡り逢えるのかもね。これで、やっとアンタの病気も治るかも……よかったね」

「何、言ってんだよ。見てご覧よ。窓の外は、こんなに雲ひとつなく、いい天気だつうのに……それに、そんな外れてばかりいる、そんないい加減な占いなんか当てにならないよ。僕の周りのみんなも言っているよ」

「まあまあ、童貞君。いいじゃあないか、信じる者は救われるって、アンタの周りの人なんかより、断然多いこの世界中のみんなが言ってんだから……なっ!」

 何を言っても、僕には敵うことの出来ない三つ年の離れた姉貴が、今朝もいつもの如く僕をからかい、笑っていたのを、今バッドネスな状況下の僕は、忌々いまいましく思い出させる。

 僕だって、姉貴がそんなこと言わなければ、僕の目でテレビの天気予報を見ていたのなら、傘の一本ぐらいは持って出掛けたはずで、あんな風に姉貴が僕をからかうから、つい何でもかんでも否定してしまうんだ。

 ンッ!? ちょっと待てよ。そう言えば、アイツ、僕が今勤めている今の会社の初めての出社の日に、僕が朝の仕度の時にアイツがやたらとかして、僕はいつも大事な時に何かしらの忘れ物をするからと、それもアイツは絶対僕が弁当を忘れて行くからと言っていて、それははからずも当って仕舞い、それもアイツは会社に弟想いのやさしい真樹の姉です、といけしゃあしゃあとやって来て、今の僕の先輩方の気をいて行ってしまった。

 おかげで、僕は入社して一年と半年が経つのにいまだに先輩たちはアイツに会いたいから逢わせろとうるさい始末だ。

 かく言う僕にだって、いなめないい目もある。それは、僕が過剰なほどプレッシャーに弱いという点だ。それをアイツは知っていて、アイツは僕の感情をもてあそんでたのしんでいるんだ。

 くうー、悔しい。アイツに又もしてもやられたってことなんだ……って言うことは、アイツ、此処ここで雨宿りをしていたら、何食わぬ顔で傘を片手にやって来て、恩着せがましく、僕に弟思いの姉を気取るんだろう。ああ、もうやぱり悔しい。

 ところで、僕は町上まちがみ真樹、二十五歳、独身って言わなくても分かっているか? なんせ、僕は未だに童貞なんだから……それに、僕は今の会社に勤めていると言っても、ただのアルバイト社員でしかない。僕は、悲しいかな今の時勢のあおりを受け、大学を卒業までになに一つ就職の内定も取れないままに出てしまった。それで、仕方なく情報誌で見つけた家具の組み立て配送関係の仕事に就いたということなのだが、職場に入った当初はまったく興味もなかった筈なのに、今ではもしやこれは僕にとっての天職ではと思うほどに楽しい。しかし、僕は人と話をするのが苦手で、人が嫌いという訳ではないが、話す相手と対じして、その人の目を見るというのが苦手なのだ。今朝、姉貴に〝アンタの病気〟と言われたのはそのことで、軽度の対人恐怖症なのだ……軽度なのだろうか? その度合いは判らない。

 そのおかげで、二週に一回まわってくる朝礼の司会でも、普段は十分程度で済む筈が僕の場合、三倍の三十分以上掛かってしまって、日頃は二日酔いで欠勤の多いこの会社でも、その日は何故か全員がそろうし、その上いつもは参加しない事務の女性陣までもが物珍しいのか集まってくる。そこで、社長は、その日を勝手に自分のスピーチの場と決め込んでいるようだ。おかげでその時は、他人ひとの目が苦手な僕はいやおうでも会社全体の視線の集中砲火を浴び、僕はその場で湧きつづける脂汗と全身の痙攣けいれんとを我慢がまんし続けることとなる。

 僕は、大学を出て、世の中に出ることとなり、この会社に入って先輩方の接し方も、見えなかったマニュアル的なものも最近ではわかり始め慣れてきた感があるが、相手が女性となるとこれがまるで免疫がない。未だに不様な様相を露呈、かもし出している筈だ。なにせ、その時の僕はフリーズ中で、何を話していたかも分からず、記憶が何処かへ飛んでいて情けない。

 しかし、こんな僕にも唯一の楽しみもある。それは、釣りだ。釣りといってもルアーフィッシングなのだが、結構なアベレージを経験していて、部屋には上手くはないが自家製の自慢の魚拓も幾つか壁に貼ってある。

 しかし、僕の自慢だった釣りも、今では姉貴に取られてしまった。姉貴の名は夏樹なつきというのだが、姉貴は大学の頃から色んなものに興味があって、趣味でブログを立ち上げ愉しんでいたのを、大手出版社などから依頼を受けるまでになり、今ではフリーのライターをしていて、仕事を請けるとサクサクとこなし、それさえも愉しんでいるようだ。

 それで、姉貴は常に自分の時間を持っていて、僕が近くの姫隠し山のふもとの池にバス釣りに行くと言ったら、勝手に付いて来て釣りさえも愉しんで、仕舞いには僕は姉貴に釣りを教えることに始終時を費やし、帰る頃には僕は何も釣れず、姉貴は五匹も釣り上げていた。そして後日、僕が気づいた頃にはちゃっかりアイツは釣り雑誌の仕事までしていて、たまに釣り雑誌の表紙にまで顔を出すまでになっていた。何でも、美人アングラーと釣りファンの間では持てはやされているようだ。そのお蔭で、僕は職場の先輩たちからの釣りの誘いにはうんざりする。

 僕の通う会社は、この町から駅を四つ挟んで五つ目の終点の駅前にある。僕はそこへと毎朝通勤するのだが、通い始めて毎朝会う女の子、僕は、僕の中では〝モーニング・ガール〟と勝手に呼んでいるが、その子は、目は余り大きくはなく、小さいせいで僕には瞳が大きく視得みえてつぶらなまなこに見えて可愛い。髪形は短めのおかっぱで、服装も余りお洒落な方ではないだろう。しかし、僕はなんていえばいいのだろう? そう僕には気取りもなく、さり気ない感じで、早く言えば僕に要らない気を使うようなことはさせないで、傍にいて僕をいやしてくれそうな、そんな空気を彼女から僕は感じる。

 僕は、彼女なら安心して話をし、その上、僕は彼女の目を見つめることさえ出来そうな気がする。しかし、僕は彼女のことを何も知らないし、名前すら知らない。唯、知っていることは、彼女がこの町の駅で電車に乗って、僕とは反対側の方へと行くということだけだ。

 そういえば、毎朝僕は彼女の方に目が行って、ふっと反対側の方に視線を感じそこを見てみると、一つ年上の小中高と学校の先輩の大田おおたがいて、僕をとおして彼女に熱い視線を送っている。僕がアイツに目をやると、アイツは決まって見ていなかったような素振りで、偶に僕を揶揄からかうようにウインクなんかしてくる。僕には、絶対に負けたくもない恋の宿敵ライバルのようだ。負けるもんか、あんな漫画のジャイアンみたいないじめっ子だったアイツに……特に友達の瞬ちゃんと僕はアイツに目の仇のように虐められていたから、この勝負は負けられない。しかし、僕には彼女に話し掛ける勇気もない。悲しいかな僕は、唯の意気地なしだ。だが、彼女と話す切っ掛けさえあれば、僕は絶対に話すことも出来るし、この僕が持っている彼女への熱い想いだって伝えることが出来る筈なのに……そう、切っ掛けさえあれば……。

 それより、なんなんだろうこの雨は、台風のように偶に強い風が吹いて来る。今、時間は未だお昼の三時前だというのにまるで夕方のように薄暗い。おまけに、僕のズボンの膝から下はビショビショで、履いてるスニーカーの中だってもう水が溜まっていて、ジュクジュクしていて気持ち悪い。

 このザーザーと煩く降りしきる雨の中を、もうこのまま家まで走って帰ろうか、走れば十五分では着くはずだ……アッ、嫌、それは駄目だ。僕は、姉貴に一駅先の街に行くのなら、このケーキを買って来てって二千円持たされ、おつりに五百円余って、それはお使いのお駄賃だからと貰ったちゃったし……それを、走って帰えるとなれば、このケーキは形を崩し、多分原型は想像も出来ないくらいになちゃって、その後、姉貴になんて詫びれば済むんだろうか。

 折角の休日、日曜だからと気を抜いていまって携帯の充電を昨日忘れたせいで、姉貴からのケーキの種類の変更の電話を最後にバッテリーは切れてしまった……ってことは、僕はこの雨が止むまで帰れないということか。

 誰か此処ここを通ってくれないかな……勿論、僕から声を掛けるのは出来ないけど、通りかかった親切な人が〝おや、この雨の中、大変ですね。どうぞこの傘に入って下さい。貴方の家まで送りましょう〟と言ってくれる奇特きとくな人なんか現れる筈もないし……ンッ!? 誰か向こうから人が来た。

 女の人だ。その人は、このザーザーと降り頻る雨の中、ビニール傘を差し足早に此処に向かってやって来る。少し茶髪めいたカール気味みの長い髪の若い女の子だ。段々と近づいてきた。

 その子は、大きな取っ手のついた紙袋を肩に掛け、短いスカートから出ている足は、高いハイヒールのせいか細く長く見える。如何いかにもお洒落で、今どきのって感じだ。

 僕に気づいても、きっと相手になんかしてくれないだろうな? 僕だって、そんな女の子とは会話なんて出来るわけないし、もし話し掛けられたとしても、どうこたえればいいのか困るだけだから、早く行ってくれればいいのに……オッ! 結構綺麗な人だ。もしかして、モデルさんなのかな?。

 その人は、僕の前を通り過ぎようとしていた。しかし、此方こちらの視線を感じたのか、一瞬僕の目を見た。そのせいなのか、持っていた傘を突然吹いてきた突風に傘の向きを対処出来ず、ビニール傘はコンビニで買ったんだろうやわい骨組みは一気にめくれ上がり、ビニールが剥がれた。それと同時に、彼女の履いていた高いヒールのせいでバランスを失いこけ、雨の路面に彼女は両手を突いた。その刹那、僕自身、信じられないことに、何故か彼女の許に僕は駆け寄っていた。そして、彼女の両肩を抱えるようにし、元いた狭い軒下に逃げ込んでいたが、しかし僕たちはすぐ離れた。

「だ、大丈夫? で、ですか?」

 彼女は、肩に掛けた袋からハンカチを取り出し、濡れた手を拭きながらただうなずきを見せた。

 僕は、その後の言葉が見つけらず沈黙が漂い始め、それと同じくして甘い香りが鼻をいた。それは、彼女の体からする匂いなのか、彼女に視線を戻すと、彼女が不思議そうに僕の手元を見ている。僕も釣られ見てみると、僕の手には姉貴に持って帰る筈のケーキが入った紙袋があって、それは彼女を助け起こす時に潰して仕舞ったのだろうもうグシャグシャにで、そこから潰れた苺と甘いクリームの匂いをさせていた。

「アッ、いいんです。こんなもん。これは、ただ姉貴に頼まれてお土産に買ったもんですから……気にしないで下さい」

「エッ、で、でも、真樹くっ……」

 その時、二軒斜め向かいの床屋のおじさんが、店を閉めるためシャッターを下ろしに出て来て僕たちに気づき、日差し用のロールバーをスルスルと伸ばし、此方においでおいでと手招きをしていた。

 僕は、彼女に目で合図を送ると、彼女はまた頷いて返事を返してきた。それを合図に、僕はまた信じられない行動に出ていた。それは、僕が彼女の手を取り、ザーザーと降り頻る雨の中を駆けていた。なんだろう、この居心地のいい彼女の手の温もりは……アッ! 彼女が僕の手を強く握り返してきた。それは、唯、彼女の高いヒールのせいで不安定になって走る足元が不安で、僕に身を任せているだけなのだろうか。

「おやっ、やっぱり真樹君じゃあないか。君もいつの間にか大人になっていたもんだな。こんな綺麗な彼女を作って……晩生おくてだとおじさんは思っていたが、なかなかどうして君もやるもんだね」

 「あ、あのう、一二三ひふみのおじさん、えりです。私、赤間あかま恵梨えりです」

 彼女は、一二三理髪店、床屋のおじさんを知っているのか、自分から名を告げた。

 「エッ! えりって……あ、あの恵梨ちゃんかい? これは驚いたね。恋をすると女の子は綺麗になると言うが、こんなにも見間違うほどに、おじさんも驚きまくりだよ。それにしても、恵梨ちゃんが真樹君とねえ……そいつはいい。おふたりはお似合いだよ。幸せになるんだよ。おじさんもふたりには沢山聞きたい話もあるけど、今からどうしても行かないといけない用事があってね。此処に軒を作っておいたから、ここで雨宿りをして行くといいよ。アッ、悪いが、ウチには傘が一本しかなくて貸して上げたいが、それを貸しちゃうとおじさんが今度大事な用にも行けないから、ごめんね」

 そう言っておじさんは、シャッターを閉めて仕舞った。

 僕たちは、先程の軒先よりはまだマシだが、それでも雨の飛沫は偶に吹いてくる、風にあおられ顔についたりもする。それが嫌なのか、恵梨という娘はハンカチを広げ顔の前で幕を張った。

 彼女が走って熱を帯びたのか、ケーキとは違う香りがしてきた。その香りは、甘さの中に少しの苦味を感じさせる渋い匂いだった。僕の気にする思いを知ってか、彼女が口を開いた。

「アッ、この匂いね。この香りは……今日、お友達に誘われて初めて行った占い屋さんで診て貰って……そこの占い師の小夜香さやか先生というひとが言うのには、今日私にとって、とても大事な日だから此方においでと、もう一つのお部屋に通されて……そこのお店は、占いの他に女の人の人生も変える為にと、お化粧品屋さんもしているみたいで、これから私の顔をよりよい方へと向かうための手助けをしてあげる、と言って私の顔にお化粧をして、電話でその方の知り合いのブティックに連絡をして貰って、この服を着ることになって……それから、今まで穿いたことのなかった短目のスカートにハイヒールなんかをして初めて歩いたんです。アッ! ごめんなさい。話は香りの筈だったのに、私ったら……」

「エッ、いいんですよ。どうせこの雨も今とは止みそうにないですから、沢山お話を僕に聞かせて下さい」

「あ、ありがとう。真樹君って、やっぱりやさしいひとなんですね」

「あ、ありがとう……」

 僕は、それを言うのがやっとで、何か一言気の利いた言葉を探しながらありがとう、と告げたが、彼女の長い睫毛まつげの奥のつぶらな瞳に見詰られると、何故かドキドキと鼓動が早くなって息が詰まって仕舞い、無呼吸の頭は思考停止状態となり、後は対人恐怖症の僕はお決まりの症状で多分、この後は記憶が何処かへと行ってしまう。結局、僕は彼女との思い出は何もない……のだが、嫌、違う。何故か違う。嫌、何かが違う。彼女は、はにかみながらも僕に話し掛けている。彼女の声は、今にもザーザーと煩く降り頻る雨の音にかき消されそうなほど小さいが、僕にははっきりと聴こえる。彼女のとても可愛い声が……たまに微笑んで、ンッ!? そうだ! 僕は、未だフリーズなんかしていない。そう僕は、僕は今、はっきりと彼女の顔を見ているし、彼女の声だって聞いている。でも、なんだろう。僕のこの強く打つ鼓動(ハート・ビート)は……もしや、これが恋の始まりの合図(シグナル)? 僕は、今、目の前の女の子に一目惚れをし……恋に落ちて、ってこれがフォーリン・ラブ!? っと、いうことは、このアクティヴな今の僕の鼓動は……かの言う〝ときめき〟なのだろうか……アッ、だめだ。ダメだ。駄目だ。僕に、こんな綺麗な女性がお付合いをなんて、淡い想いを持つなんて……これは、唯のひと時の雨宿りの間の彼女の時間潰しだけの僕は話し相手なんだから、儚い恋心なんて期待なんてしちゃうと、雨が上がる頃には、彼女はこの場を手を振り離れ……バイバイと……そして、僕は失恋(ハート・ブレイク)!? どうせ、そうなると分かっているのなら、こんな雨早く止んでくれればいいのに。僕に、せつない想いを残す雨なんか……僕にこのひとへの淡い恋心を持たせないうちにはやく。

「……チムニィ・チムニィって言ってね。それでね。ンッ、真樹君……真樹君、聞いている?」

「ンッ!? アッ、エッ? 聞いているよ」

「そうお? なんだか、真樹君、私を見ていたけど、なんだか可笑しな顔だっだわよ。真樹君、私の話を聞いていたのなら返事は?」

「エッ! へ、返事って?」

「真樹君、やっぱり聞いていなかたんだ。やっぱり、私なんか……」

 彼女の顔色が、雲って来た。この天気のように、大粒の雨が降りそうなほどに重く暗い雲がおおうくらいに。

「アッ、ごめんなさい。違うんです。ただ、この雨の音が邪魔で、貴女の声が聞きずらかったんです。だから……だから、ごめんなさい。もう一度お話をして下さい。お願いします」

「本当に、いいんですか? 私と話をするのは、真樹君、本当は退屈なんじゃあないですか?」

「ま、まさか、そんな、僕は、こんな綺麗なひととお話が出来るなんて……」

「真樹君、ホント? 本当に私を、真樹君は綺麗だと思っている……っの?」

「勿論です。誰が見ても綺麗で、それにプロポーションだって、最初見た時、絶対に何処かの有名な雑誌のモデルさんかなって思っていたんだよ。でも僕、ファッション雑誌なんか読まないから、どの娘だったかって捜しようがないから……だから、僕は絶対に貴女はモデルさんだと思っていました。って、ことは、貴女はモデルさんじゃあないってこと?」

「ウフフ……なんだか、うれしいな。それも、真樹君にそんなこと言われると……もう少しこのまま、私の魔法に掛かったままの夢に、真樹君付き合ってくれる?」

 「エッ! ま、魔法? って……い、いいですよ。魔法っていえば、僕だって今、まるで魔法に掛かっているみたいだ。あ、あのうー、ぼ、僕、ぶっちゃけて言っちゃいます。実を言うと、僕……アッ、笑わないで下さいね。僕、本当は女のひとと、こんな風にお話をするのが初めてで、不思議なんです。こんな風に僕が、貴女のような綺麗なひとと話をしているっていうのが……アッ、それで、貴女の魔法ってなんですか? 多分、さっき話されたことだと思いますが、もう一度話して下さい。お願いします」

「エッ、ええー、それは、ね……アッ! また真樹君、この雨の音で聞こえなかったら嫌だから、もう少しだけ傍に寄ってもいいですか?」

 僕が、黙って頷くと彼女は、僕の肩に彼女の肩が触れそうなほどの距離まで身を寄せた。すると、彼女からまたあの香りがしてきた。僕は思わず深く息をし、いつの間にか目をつぶっていた。すると、僕の脳裏に何故かあのモーニングガールが微笑んでいた。不思議な思いのまま目を開けると、彼女が微笑んでいた。

 僕の妄想に、かたわらの綺麗なひとがあのモーニングガールだったのならと、勝手に創った幻想はザーザーと大きな音を発てて降る雨が現実に戻してくれた。どうしてなんだろ、僕の傍には、多分誰もがうらやむような綺麗なひとがいるというのに、なぜ僕はモーニングガールを想い浮かべたのだろう。それは、僕の心が、やっぱりその娘、モーニングガールを求めているからなのだろうか。

 「ウフフ……真樹君も、誰か心に想うひとを想い浮かべた? 多分、それは私が身に付けた香水のせいなんだと思うわ。あの占い師の小夜香先生が、私がブティックでこのように服を着替えてきた時に、最後の仕上げだからって、確か〝エムワール・ドゥ・アンバー〟っていう香水をかけてくれたの。香水の名前は、フランス語だと思うけど、日本語にすると琥珀こはくの記憶だって言っていたわ。そしてね。この香りには、そのひとの今胸の中にあるひとの想いを、心に幻影として創るんだって。ねえ、真樹君、貴方も誰かの顔を想い浮かべたんですか?」

 僕は、黙って頷いた。その顔を、彼女は見て顔をまた曇らせた。

「そう……そうなんだ。真樹君、今、心の中には、そいうひとがいるんですね。訊いてもいいですか? その人は、どんなひとなんですか?」

「アッ、でも、僕は、ただそのひとのことを……ただ見ているだけで、未だ一度も話もしたことないし……そのひとがどんな声なのかも知らない。ただ、僕は、朝、駅で見ているだけで」

 「エッ! それ……真樹君、訊き辛いけど、訊いていいかしら。貴方が、想うそのひとって、まさかだけど……まさか、男の人じゃあないですよね」

 「エッ! エエー? な、なんで……なんで、僕が男の人を、ってからかわないで下さい。ごめんなさい。僕はそんな趣味なんてないです。そんな、自分を思っただけでも鳥肌が立ちますから、そんな洒落にもならない冗談はやめて下さい」

「ウフフ、ごめんなさい。でも……ウフフ、でもよかった。私は、別にからかった訳ではなくて、あのね……」

「オーイ、真樹君、オーイ、まさきー……」

 その時、雨の中に僕を呼ぶ声がした。この床屋のお店のおじさんの声だ。

「なんですかー……」

「おう、よかった。未だいたか。これを飲んでくれ……こんなモンしかないけど」

 っと、言っておじさんは、軒先のはしから、ひもで吊された物が降りてきた。吊るされていた物は、缶の珈琲と林檎紅茶アップル・ティーだった。

 僕は、プルトップに結んでいた紐を解き、おじさんに「ありがとう」とお礼を言うと、ザーザーと大粒の雨が降り頻る雨の中に、おじさんの「ああ、それじゃあな。風邪をひかないようにな」と言う声が返って来た。

 僕は、彼女に両手に持った缶を交互にかかげると、彼女は紅茶の時に頷いて見せ、僕はその缶を彼女に飲み口を開けて渡した。僕たちは、それぞれ同時に一口つけた。その時、お互いのお腹が、グ、ギュウルルーと鳴り、ふたりは目と目を合わせ笑った。

「恵梨ちゃん……ンッ!? え、恵梨さんもお昼、食べていないの?」

「エッ、ええー、今日、朝テレビを観ていたら、お友達の喜美恵きみえちゃんから電話が着て、その時、私はテレビの占いで蟹座かにざの貴女の運勢はお出掛けは駄目、今日は内面を磨くことに専念して、お外に出ての行動はひかえましょうてあって、そのことを喜美恵ちゃんに言うと、喜美恵ちゃんは、そんなの嘘だよ。だって、この世の世界中の蟹座の女の子はそのことを知らないで外にいたとしたら、みんなアウトじゃん。そんなのうそ、ウソ、嘘だから、って言って、その後、その番組の占いって当らないってもっぱらの評判だから、この際その真逆をしてみない? って喜美恵ちゃんが言って、私は断ることが出来なくて、それで……アッ! ごめんなさい。また、私ったら話を長くしちゃった。実を言うと、私も真樹君と同じで、余りひととはお話をするのが苦手なんです。アッ! 又ですね。ごめんなさい。そういうことで、朝食もとらずに街に出かけて、そのままです」

 「フーン、そうなんだ。ひとつ気になるから訊いていい。その喜美恵ちゃんって、本当の名は夏樹って本名がって……そんな訳ないよね。僕は、朝食べるには食べたんだけど、ただ側で姉貴が煩くてトースト二枚だけだったかなあ。アッ! そうだ、よかったら、このケーキ食べようか?」

 「だ、駄目です。それは真樹君のお姉さんの大事なお土産です」

 「アッ、いいんです。どうせ、こんなに潰れたモノを姉貴にやると逆に怒っちゃうんだろうなあ? だからね、捨てるには勿体無もったいないでしょう。だから、どうせなら……ね?」

 僕は、彼女の返事を待たずに、袋を破り想像通りに原型のなくなった一つのケーキを取り出し、彼女にケーキを乗せた紙の皿ごと渡した。彼女は、訳の分からないままに受け取り僕を見ている。迷っている彼女の背中を押す為に僕は、袋の中に三つある一つをそのまま素手で掴み、それを口に持って行きパフッと半分頬張ほうばった。

「ウーン、美味しい。恵梨さんも食べてみてよ。どうせ、捨てようと思っていたものだから……でも、食べたら美味しいよ」

 彼女は、それでも未だ踏ん切りがつかないまま僕を見ていると、彼女のお腹がキューっと、彼女の思いを代弁した。ふたりは目と目を合わせ、また笑いあった。僕はどうぞどうぞとディスチャーをし、彼女は僕を見つめたまま小さく頷き、一口くちにした。

 「美味しい……とても美味しいわ。でも、真樹君、いいのかしら」

「いいの、いいの……もし、僕たちが悪いことをしているというのなら、それでもいいんだ。あの映画のボニー&クライドみたいに、悪いことでも何でもし尽くすだけさ……ア、ハ、ハ……」

 そのセリフを、僕は吐き終わらないうちに、僕の目の前を町上夏樹、僕の姉貴がなにくわぬ顔で通り過ぎて行く。

 ああ、僕の手には、食べかけの潰れたケーキが……それに真っ赤な苺が、アイツに「これから私はコイツに食べられちゃうの」ってめっちゃアピールしているし……ああ、どうしよう。僕は、どんな風に家に帰れば、なんてアイツに、アイツに……ンッ!? 傘を差し、後ろ手にもう一本の傘を持っている……その手が、グッドのポーズをしている。あ、姉貴ーー、愛してる。ごめんなーー。ありがとうーーー。

「真樹君、どうかしたの?」

「ンッ? 大丈夫……どうもしないよ。恵梨さんこそ、何かあったの?」

「エッ? だって……だって、真樹君、貴方のお姉さんが此処を通ったのに、真樹君は何も言わないし……アッ! でもね。お姉さんに、ケーキのことをごめんなさいって合図を送ると、お姉さんが後ろの手で構わないからって、返事をくれたのよ」

 エッ? あのグットのサインは、僕ではなく、彼女、恵梨さんに……じゃ、じゃあ未だ僕を、許してはいないんだ。家に帰るのが、やっぱり怖い。

「エッ? どうして、恵梨さん、貴女はウチの姉貴を知っているの?」

「ウフフ、やっぱり、真樹君、貴方は私のことを覚えていなかったんだ。そして、未だ思い出せないでいるんだ。私、赤間恵梨……貴方は、昔小さい頃、私に魔法をかけたのよ……チムニィ・チムニィって、覚えていないの?」

 エッ! 赤間恵梨?……チムニィ・チムニィって、それは僕が小さい頃、メリーポピンズってディズニー映画で……その映画は魔法使いが主人公で、僕はその言葉が〝エントツ〟ってことを知らなくて、勝手に魔法の言葉で、願うことはなんでも叶うって思っていて……しかし、大人になって思い返せば、その映画の呪文の言葉は〝ビビデ・バビデ・ブー〟だった。確かその頃、誰かにその呪文を教えてんだ。ウーン、そう!? 鉄棒少女……その女の子は、僕が見るたびに放課後の校庭で鉄棒に乗っていて、クルクルと回っていたり、逆さまになっていたり、ある時、その子が鉄棒から落ちちゃって膝を擦り剥いて泣いていたのを、偶々僕が見つけ、その時、教えて上げたんだだっけ? 痛いの、痛いの飛んで行け……チチンプイプイ、チムニィ・チムニィって、その子の名前は……赤間恵梨って。

「え、恵梨ちゃん……あの鉄棒が好きな、女の子? だってあの子は、とても怖いおじさんに連れて行かれて食べられちゃった、ってみんなが言っていたよ。う、うそ、嘘だ、まさか、そんなことが……って、そうなの?」

 「そう、そうなの私は、鉄棒が大好きだった。クルクルと回れば、景色も回ってすごくいい気分。だけど、その鉄棒から落ちちゃって泣いているのいに、誰も助けに来なくて……その時の私は、父を早く亡くしてお母さんと暮らしていたけど、そのお母さんも病気がちで、幾らお母さんの名を叫んでも来てはくれなくて、来てくれたのが真樹君、貴方だった。そして、貴方がその呪文のチムニィ・チムニィって教えてくれたの。自分がして欲しいことや願うことをなんでも叶える言葉だって……だから、私はこれまで、ずっとその言葉を口にしていたわ。隣町の叔父さんの勧めで、母の病気の療養のために遠く離れた町に行っても、そこでチムニィ・チムニィって……もう一度、嫌えいつでもいて欲しい時に来てくれる貴方に逢える為、私がこの世で一番逢いたかった真樹君、貴方に……」

 彼女は、僕を見つめるその瞳に涙が溢れだし両目から零れ頬をつたい落ちて行く。

 ああ、知らなかった。彼女が、あの鉄棒の女の子、赤間恵梨ちゃんだったなんて……恵梨ちゃんがいなくなって、もう十数年の時が経つ。僕の彼女への記憶もあの時ぐらいで、そうだ、僕はその時以来彼女のことが心配でいつも気になって、恵梨ちゃんの家へ行こうとしたんだっけ、でも恵梨ちゃん家はあの虐めっ子の大田の家のすぐ隣で、僕はそれで行くのを止めたんだっけ……ンッ!? 恵梨ちゃんの記憶は未だある。それは、いつも何気に気づけば恵梨ちゃんは、いつもいた。僕の近くに、小さかった彼女はいた……しかし、その度に大田のヤツが僕を虐めるんだ。そうか、その頃からアイツは恵梨ちゃんのことが好きで、だから彼女が傍にいる時にいつも僕を虐めていたんだ。

「真樹君、それは違うわ。大田のお兄さんは、私を本当の妹のように大事にしてくれたけど、でも、真樹君が、知らないのなら教えておいた方がいいのかしら……」

 ンッ!? 僕は知らずしらずに、心で呟いていたはずの言葉をらしていたみたいだ。

 「エッ! 恵梨ちゃん、僕の知らないことって? それは、あの大田のヤツのこと? それとも、僕自身のことなの?」

「ウーン? それはね……それは、両方のことかな。ウウーン、違う。やっぱり、大田のお兄さん自身が原因でのことね」

「な、なに、その……アイツが原因で、それは僕にも関わることってこと?」

「そう、そう言うことなんだけど……真樹君、これから話すことを聞いても驚かないでよ……ウン、それじゃあ、話すね。実を言うとね。あの大田のお兄さんはね。昼間は郵便局での荷物の仕分けのお仕事をしているんだけど、夜はね、夜のお仕事をいているの。なんて言えばいいのかしら、同性の人達を求めてくるそんなお店のお仕事……」

 「エッ! それって……それって、アイツ、大田のヤツって同性愛者、ゲ、ゲイってこと? ク、ク、ク……なんだか、笑える……小さい頃、僕を虐めていたヤツが、そういうヤツだったんだ……ンッ!?」

 僕は、その時、アイツが駅のプラットホームで、僕にウインクを投げかける眼差しが脳裏をかすめた。僕の中に刹那的に走る悪寒おかんに身が震え凍りついた。

「真樹君、分かった? 何故、大田のお兄さんは真樹君、貴方を虐めていたのかを。

 大田のお兄さんは、小さい頃から真樹君と瞬君、二人のことが好きで……ウウーン、大田のお兄さんは私のことも妹のように可愛がっていたし、だからお兄さんは真樹君と私の両方を失いたくなくて、私が貴方のことを好きなのを知っていたから、だから、私に貴方への想いを気づかれないよう隠そうと、別にお兄さんは虐める気はなかったのに……でも、結局は想いとは裏腹な結果になってしまっていたわ」

「そうだったのか……アッ! アイツ、未だにそういう風な目で僕を見ている。そんな感じを今も受けるんだけど、そ、そうなの?」

「ウウーン、それはもうないと思うわ。だって、大田のお兄さん、数年前から特定の彼氏を見つけたんだって、この前私に話してくれたわ。それに、私に、真樹君へ早く心の内を明かしてあげなさい、って言ってくれたわ。だから、毎朝私に早くしなさいって急がんで、目で合図するの……もうこの際だから、真樹君、私、貴方に改めて、この想いを言うことにするわ。真樹さん、私は小さい時からずうっと貴方のことを想っていました。だから……だから、この想いをどうか受け取って下さい」

 僕は、その思いに応えることが出来ず、それどころか彼女の告白の途中から思考が停止し、ただ彼女の顔だけを見つめた。っと、その時、僕の視線は彼女の両頬に何本かの黒い筋を見つけた。フリーズした僕の口は、場違いな言葉をいて出させた。

「え、恵梨ちゃんの涙って、黒いんだね……」

「エッ! ウソ!?」

 彼女はそう言うと、咄嗟に頬に手を当て、その手を眺めてポツリと言葉を吐いた。

「私自身の生き方を変える為のこの魔法も、今消えようとしているみたいだわ。ウウーン、真樹君に、私のこの想いを伝えることが出来ただけでも、この魔法の成果は十分満足なことだった」

 彼女は、肩を落としうつむき、視線は手元の白いハンカチを見ているのか、泣いていた。彼女のクシャクシャに握るハンカチに黒い涙が落ちて墨のような染みを作る。彼女は、彼女自身の中に何かを決したのか、おもむろに顔を上げ僕を見つめ、声を震わせながらに言葉を告げた。

「真樹君、もう私のシンデレラ・ストーリーは終りみたい。今日、折角あの小夜香先生が、私の為って掛けてくれたこの魔法も、もう解けそう……でも、真樹君、お願い。私はこのまま嘘の自分を、貴方に見てもらうっていうのが、なんだか惨めで心が残るの。だから……だから、真樹君、お願いです。最後に、私の素顔、ありのままの私を見て下さい」

 そう言うと、頭に着けていた茶髪の長い髪のウィッグを取り外し、肩に掛けていた袋と一緒に僕の手にゆだねた後、短くなった彼女本来の髪をその場で振った。そして、彼女はこっちを向き淋しそうに微笑を作った。

 その顔は、黒髪のおかっぱ頭のヘヤースタイルで、目の下に取れかかった長い付け睫毛が異様だったが、僕はその目の大きな円らな眼に、まさかという思いに駆られた。そして彼女は、いよいよ意を決し、雨宿りに身を隠したこの軒を出て、ザーザーと大粒の雨粒が降り頻る中へと出て行き。両手を大きく広げ顔を打ち付ける雨に向け、僕への想いを口走った。

「真樹君、私は貴方のことが大好きだった。貴方が、私にあの呪文をとなえてから、あの頃からずっと好きだった。そして、その想いはやがて、いつしか貴方のお嫁さんになることが、私の夢へとなって行ったの……真樹君、でも……でも、もういいの。もう私は、貴方へこの想いを届けることが出来ただけで、もうそれだけで、もういいの……だから、だから貴方には、もうその答えは望まない。もう、いいの……エッ!?」

「チムニィ・チムニィイーーー……チムニィ・チム……」

 僕の心が叫んでいた。その心に全身が突き動かされ、僕は堪え切れず叫んでいた。この大粒の降り頻る雨に負けないようにと、彼女の心へ届けと叫んだ。

「ま、真樹君、どうしたの? どうして、その言葉を……」

 「恵梨ちゃん、恵梨ちゃんの魔法が解けそうなら、また僕がかけてあげる。今度は、絶対解けない魔法を……僕が、僕が絶対最強の魔法を恵梨ちゃんにかけてあげる。そして、恵梨ちゃんは、恵梨ちゃんは絶対ずっとずっと僕の傍にいるんだ。だから、チムニィ・チムニィ……だから、恵梨ちゃんは、僕の傍にずっといるんだ」

 気づけば、僕は恵梨ちゃんの傍にいて、ザーザーと大粒の降り頻る雨の中、僕は彼女の身体からだを抱き締めていた。彼女の魔法が解けないように、僕は彼女に呪文を唱え続けていた。

「嬉しい。真樹君、私、うれしい。私を抱き締めたこの手は、もう絶対に放さないで……ずっと、ずっとよ。私は、ずっと真樹君の腕の中で、覚めない夢の続きを見るの……ずっと、ずっとよ」

 僕の腕の中には、毎朝見るあの小さいまなこが、クリクリと大きな円らな瞳が僕を見つめている。その顔に、僕は覚めることのない呪文の仕上げに、封印として彼女の唇に熱いキスをした。

 ザーザーと大粒の降り頻る雨……この雨はやがて止むだろう……だけど、僕のこの恵梨ちゃんへと掛けた魔法はいつまでも解けることはない。いつまでも、いつまでも……チムニィ・チムニィ……




 あなたの許にも善い事がたくさん起りますように……

             チムニィ・チムニィ……





              FIN

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雨の中のシンデレラ 村上 雅 @miyabick23

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