第二部 Ⅹ:創世記 その1
夜が明ける。アリス3号は沼から
アリス3号の耳に、ふと不思議な声が聞こえて来た。
ティコ フィリ フィコ フィク ルルルル ル
見ると頭のすぐ上のこずえで、ツグミくらいの大きさの四羽の黒い小鳥たちが、こんな
ティコ フィリ フィコ フィク ルルルル ル
恋に破れたロボットの
乙女が鍵を投げ込んだ
ティコ フィリ フィコ フィク ルルルル ル
いじわる兄貴に叱られて
二度と家には帰れない
ティコ フィリ フィコ フィク ルルルル ル
ぜんぶ見ていた
鍵を呪文で見つけ出す
ティコ フィリ フィコ フィク ルルルル ル
沼のほとりの
魔法の小屋に鍵がある
ティコ フィリ ティコ フィク リリルル ル
なぜか小鳥の言葉が分ってしまった。一晩中沼に潜っていたせいで、きっと毒の成分がアリス3号の聴覚センサーを侵してしまったに違いない。
アリス3号は小鳥の歌を確めようと沼の周りを
「前から思っていたんだけど」
先に立って案内するアリス3号が
「お前って、ほんとに転んでもただでは起きない奴だな」
「ヘヘ、ソレホドデモ … 」
皮肉で言ったのに、乙女ロボットは得意そうだ。
いずれにしろ、一刻も早く鍵を取り戻さないと、レモたちのきょうのレッスンの時間に間に合わなくなる。
「ホラ、アソコ!」
向う岸の茂みに黒い
「アニジャ、トツニュウシヨウ?」
アリス3号が顔をのぞく。
「もう少し様子を見てみよう」
気は
その場にかがみ込んで、ふたりが朽ち木の足場から様子をうかがいはじめた時、小屋の黒壁からにじみ出るように、何者かがふいに姿を現した。ちっぽけな、チラチラ瞬く生き物だ。まっすぐこちらに向って来る。まずい。ここに隠れていることがばれてしまっているらしい。妖精だ。が、いよいよ迫って来た相手を見た瞬間、ふたりは思わず立ち上って顔を見合わせ、大声で叫んでいた。
「アレグレットダ!」
「アレグレット・アレグラメンテ!!」
ポカンと口をあけた銀河の鼻の頭に止まるのかと思うほど、ぎりぎりの距離まで来ると、アレグレットはホバリングして空中にあぐらをかいた。
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