第18話 赤い機体

アシアは、回収された赤い機体をデッキから眺めていた。

隣には、サクラ准尉補がいる。

「アシア小隊長、整備班の調査によれば、この機体は盗賊のものではありません。反連合独立勢力の物とも適合しないようです」

サクラが手元の資料を見ながら言う。


アシアは片手に持っていたコーヒーカップを口につける。

視線は依然として、赤い機体を眺めたままだ。

アシアはコーヒーには、たっぷりとミルクを入れるのが好きだ。

辺境ではミルクが流通していないから合成ミルクであったが。

アシアが口にした時にはコーヒーはすっかり冷めていた。アシアはコーヒーを少し口に含み呟く。


「機体にはAIが搭載されていたはずだたな」

「ええ、AIは現在も解析中ですが、小惑星連合の物ではありませんでした。

もちろん、地球の物ではありません。

地球はすでに、このような機体を開発製造などできませんから」

「それなら一体、これはどこから来たんだ」

「現在、わかっているのは、外から来たということだけです」

「これに乗っていたやつは今、どこにいるんだ」


サクラは資料から目を離すと、アシアへ曇った視線を送る。


「調査部がどこかに連れて行っちゃいました」


アシアは、コーヒーカップの琥珀色の液体をしばらく見つめていたが、ふいに、カップの液体を飲み干した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る