第3話 小惑星タレス

 2101年、小惑星タレスは、開拓使たちの努力により、人が何とか住める環境が整っていた。ただ、タレスの大地の数十分の一の程度であったが。


 厳しい環境で生き残ったのは、4200人に過ぎなかった。


 開拓使たちは、20年の間、数日に一度、大地に骸を葬らざるを得なかった。その骸は、ある人の夫であり、妻であり、また、子たちであった。


 タレスの大地に開拓使たちが根を下ろした時、人々の目は、漸く鉱物採集に向けられた。


 タレスの大地の発掘作業が開始され、地質調査が何度も行われたが、スニタニーは、全くといって、発掘されることはなかった。


 新政府は、知っていた、タレスは、有用な鉱物が存在しないことを。その事実を知っていながら、開拓使を派遣したのは、将来、癌となる人々を宇宙の彼方に投擲したかったからに過ぎない。


 開拓使たちは、来る日も来る日も、発掘作業を続けた。スニタニーが発掘され、スニタニーを地球に送り、再び富を得ることを信じて。スニタニーが地球で発見され、採掘されていることも知らずに。


 地球との通信は、タレスに降りたった時から、電波は厚いガスに遮られ、途絶えていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る