II章(闇の中で振る双翼—前編)_part_A

 謎の光に包まれたマルコが宙に浮いて、彼女のそばから、両端に水晶玉をぶら下げた絹のようなものが現れ、まるで『女神』のように、突然みんなの前に降臨してきた――


 マルコは冷ややかな目つきで、上空から戦意を燃やしていた人間を見下ろし、ひとまず相手を無視する。それから、ずぶ濡れの彼女はゆっくりと小さな手を上げ、雨がぽたぽたと手のひらに落ちるのを見つめている…


 続いて、彼女はあたりを見回し、まずは気絶していた少女と敵の従者を眺め、それから対戦している男たちに目を向けた。数秒後、小さな口から気温差による白い息が吐き出された――


『はぁ~寒くて熱くて、いやな感じじゃのう…この雨とか、後ろの「情熱の家」とか、それとも…下にいる連中とか…皆が出番のタイミングを間違えとるようじゃ……あぁ~不愉快じゃ!仕方がない、少し処理してやらねばな!』


「うん?!これは……」


 地面に立っている男たちは、マルコが小さな手を振っているのを見つめて、まるで何か動きがするようだ。そして思った通りに、不思議なことが次の瞬間で目の前に起こりました――


 後ろの家で燃えていた烈火が、彼女の手のひらに一点集中した後に、突然小さな炎に変わって、そしていきなり魔法のように消えてしまった!それをおかげで、彼女はたった一人で、あっという間に火を完全に消滅した。


「?!ほお~実に面白い能力だな!」


 しかし、それを見た敵は、ますます興奮したようだった…


「こ…この女の子は、一体…」


 この光景を見ていた少年も驚きました。それから、彼女は今の状況を確認するため、足元にいる人たちに事情を聞き始めました…


『…まさかこの村がこんなことになるとは……おい、そこの人間よ、これはそなたらの仕業か?』


「はぁ?…あははは~―!いや~勘違いするな、あのクソガキってそんな腕前持ってねぇ…ところでお嬢ちゃんよ、ちゃんと家の前で眠っていればいいじゃねえか?急に目が覚めて、あんな鳥肌が立つような恐ろしい気配を身につけてって、本当にいいのか?お前今この姿を見ていると、俺様の『戦闘細胞』も、勝手に働き始めたんだぞ――!」


 と言った瞬間、大将の足元の土が、激しく震えました。そのとき、地面の下から、血と土にまみれた謎の鉄球が飛び出してきて、それから相手のまわりを、うろうろと漂っていました。そして、鎖の繋がっている部分と、彼が腰から取り出した取っ手とが、自動的に結びつき、こうして、分離していた武器が再び一つになってきた。


「?!何だよ、あれは…」


「ほら、よく見ろよ!これは俺様の宝物――『崩星槌(デマイズ・メテオ)』だ。これを使えば、このあたりに逃げ回るゴキブリを、簡単に滅ぼすことができるんだよ!」


 驚いた少年に少し説明すると、相手は鎖を大きく振って、勢いよく一気に鉄球をマルコの方向に投げつけた!


「?!危ない、早く逃げろ――!」


 少年はマルコの安全を心配し、すぐにここから逃げるように指示した。しかしその一瞬、「デマイズ・メテオ」の攻撃軌道が、彼女が片手で召喚した見えない障壁に阻まれ、そのまま空中に弾き飛ばされ、相手の足元に落ちてしまった。


『…あらら~「お嬢ちゃん」か?なかなか懐かしい呼び方じゃの。じゃあ、今度はこっちの番じゃぞ。お・じ・さん✩~』


 そう言うと、マルコは傍らに巻かれていた謎の絹を振り回しました。絹の両側の端にはそれぞれ宝玉がついていた、左側が黒、右側が白だ。そして同時に、彼女のそばに赤・青・緑の三色の炎が急に現れた、そのうち、青と赤の炎を宝玉に注ぎ、その黒と白の宝玉も対応する色に変わりました!


「?!ほお~ほかの手段があったのか…面白い。なら、今から少し貴様の実力を試してみろ――!!」


 自分の攻撃があっけなく防がれ、そして彼女の余裕な表情を見ていると、相手の戦意がついに燃え上がった。それから、敵の大将は再び彼女に二度目の攻撃を仕掛けた!しかし、今回の攻撃威力は明らかに違う。相手の武器は強力なエネルギーに包まれ、周りに大きな衝撃波を生じさせることがその証拠だ!


『…フン!その汚いものを、二度と近付けるな!』


 そう言いながら、マルコは絹に繋がれた青い宝玉を投げて、敵の武器と激しくぶつけた。両者の武器のサイズは大きく異なっていたが、お互いの攻撃力は拮抗しており、なかなか勝負が決まらなかった。そして、彼女が少し目をそらした隙に、何かに気づいたようだった…


『…?!逃がさん!あの娘を返しておくれ!』


 次に、マルコは隣の赤い宝玉を放り投げた。だけど、今回狙ったのは「デマイズ・メテオ」ではなく、倒れた少女を担いでおり、この戦いに巻き込まれて命を落とすことを恐れて、今逃げようとしたの兵士だ!


「?!しまった、うああぁ――!」


 相手に当たった瞬間、彼女は敵の手から少女を救った。一方、少年はそれをきっかけに、大将の背後から剣を出し、奇襲をたくらみますが、相手その強力な気配に一瞬ではじかれてしまった。


「…くそ、見破られたのか…」


「……ぁあ~後ろに邪魔なやつがいることを忘れそうだ。ならば…お前からやっつけろ!!」


 敵は少年を殴ろうとした瞬間、不意に自分のほうへと一つ変な物体がするすると飛んできたことに気づいた。そう…あれはマルコが出した赤い宝玉だった!


「?!チッ……」


 大将はすぐに攻撃目標を変更し、赤い宝玉に拳を向けた。両者の攻撃がぶつかり、激しい爆発と煙を引き起こした。そして煙が完全に消える前に、マルコは再び絹を伸ばし、少年を連れて相手の前をすり抜け、二人のそばに引っ張ってから放した。


『…無事か?少年。』

「…ぁあ~助かった」


「…フン!余計なことを……うん?」

「たっ…助けてください、大将!!」


 先ほどの攻撃で倒れた兵士は、地面にうつぶせになって、自分の隊長に助けを求めた。しかし……


「……ぁあ~慌てるな、今すぐその苦しみから解放してやるからなぁ――!!」


 すると、大将は手に持っていた武器を振りかざし、部下に無情に襲いかかった。それから悲鳴が上がると、あの兵士はもう二度と動けなくなった……


「なっ?!なんてひどいことを……くそ!あいつはお前の味方じゃないのかよ!」


「はあ?だからなんだ、無謀なヒーローちゃんよ。あいつって、俺様のものだろう?ただ自分で最後の壊れた駒を処理しただけで、何が悪いんだ!それにさ…俺様が無能な部下をどうしようと、お前には関係ねぇだろう!」


「?!…くそやろう……」


『…なるほど。こりゃあ、まったくとんでもない危険な存在じゃのう…見た目も中身もな…』


「うん?ほいおい~随分怖い顔をしてるぞ!これは俺様に反抗し続けるつもりか?あははは――いい度胸だな!でもさ…もう余計なことはやめたほうがいい。くだらんゴミどもがいくら集まっても、俺には勝てねぇんだよ。そして、貴様ら全員がここで葬られる運命も、変わらねぇだからなぁ――!!」


『なに?!』


 敵の叫びとともに、周囲の気配が再び変化した。そして今度、相手の武器「デマイズ・メテオ」は自分の『意識』を持っているかのように、長い鎖を引きずって、持ち主の周りをグルグル回っている。まるで攻撃のチャンスを狙っていたり、大将の出撃指令を待っているみたいだ……


『?!へえ…なかなか手強き敵じゃのぉ……いいか少年、われは今自分の力の一部を貸しておく。彼の攻撃は全部われが防ぐから、心配はいらん!さあ、これから一気に駆け上がって、あの野蛮な男をできる限り倒すがよい…!』


 その時、彼女は隣の少年が驚きから抜け出せず、ぼんやりと目の前の敵を見つめていた。


『おいコラ、話をちゃんと聞け――!』

「?!ごめん、聞いています。しかし…」

『ったく、いまぼーっとしてる場合じゃない!…?!ほら、あいつは武器に力を蓄えているぞ!この瀬戸際で、一瞬の過ちは許せん!自分の命を守ることが最優先だ。他の事はその後でなぁ!』


 少し落ち着くと、少年は意を決し、手にした剣を振り上げ、再び目の前の敵に立ち向かおうとしました。


「…そうだな……じゃ、せなかは頼むだ。あなたこそ、僕が敵を片付けるうちに、そいつの攻撃に耐え切れずに倒れたら困るぞ!」


 マルコは一言も言わず、ただ顔にかすかな微笑みを浮かべた。


「ああ~うるせえ。何をごちゃごちゃ言ってるんだよ、おい!死ぬ前の遺言を伝えているのか?…もういい、貴様らの道はここまでだ!くらえぇ――【流・星・爆・弾】!!」


 ついに、凶暴な大将が戦意を燃やし、思い切り強化された武器をこっちに叩きつけてきました!


『なら~この身も少し本気を出すかのう……さあ、行くぞ、少年!わが力に加われ――!【赤いの炎撃、翠の風速――!!】』


 マルコは傍らにあった緑色の炎を、少年の体内に注ぎ込んで、そして宝玉の中に宿る赤い炎を剣に付着させ、最後には少年自身の「気」と合わせて、剣の威力をさらに増幅させる!


 かすかな希望が目の前にあることに気づき、少年はいきなり自信を持って、今度こそ敵を倒せるという気持ちで、勇気を振り絞って一歩踏み出した!


『続いて、蒼いの冰晶、双珠注入!』


 続いて、彼女は身近に残った炎を二つの宝玉に注ぎ込み、黒と白の宝玉がたちまち青くなりました。それから、彼女は宝玉をぶら下げた絹を素早く振り、相手の追撃を阻んだ。しかし、互いの武器がぶつかり合うと、弾かれた鉄球は急に軌道を変え、走る少年に襲い掛かった!


『そうはさせん――!』


 危機に気づいた瞬間、マルコが放ったばかりの宝玉も、鉄球の方向をたどって少年を守ります。はじき返された鉄球が再び少年に追いつきますが、空を舞う宝玉は少年を援護し続けて、目の前の次々と連続攻撃を防ぎます。こうして、マルコは正面から大将と激しい攻防戦を繰り広げた。


 戦火が飛び散り、両者は互角で勝負がつけ難い。やっと相手の前に立った少年が、剣を振りかざして敵に思い切り斬りかかろうとすると、目の前に鉄球が現れ、相手の盾となりガチャンとその攻撃を受け止めた!


「?!…くそ!あともう少しだ…」


「アハハハハ~――!甘すぎるんだよ、ガキども!この程度で俺様を倒すつもりか?まだ千年早いだ――!」


『へえ~でも続きがあるじゃぞ。おじさん(・ω-*)♪~』


 この時、マルコの宝玉が、後ろから少年の足の間をすり抜けて、すばやく大将の足もとまで飛んで行った後、一瞬で跳び上がり、目標の顎に命中した!そして同じ時に、土下に待ち伏せていたもう一つの青い玉が地面から出てきて、相手の武器を弾き飛ばした!


「チッ……おのれ――!!」

『今こそ好機じゃ、いけ――!』


==【はあああああぁぁ――!!】==


 張り切った少年は、わずかなチャンスを見逃さず、思い切り反撃に出た!全身の力を込めた一撃、そしてマルコが刀身に宿した炎の効果で、何とか敵の鎧の一部を破壊し、相手の体に深い傷を負わせた。


 凄まじい剣気が当たった瞬間、大将は強烈な波動で後方に押し出され、あたりは塵が舞い上がった…そして――

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