【お急ぎの方へ☆サクッとネタバレ】とある寸借詐欺男のしくじり

第1話


 とある夕方。

 ターゲットを探していた寸借詐欺男(若者ではなく、いい年した中年男)は、三十代半ばと見られる女性に声をかけた。


 見た目はごく普通に見えたこの女性であるも、何やら”尋常ならざるほど暴力的で独占欲の強い彼氏”を持っているらしく、全身痣だらけのうえ、乳房に根性焼きもされ、三回も中絶させられているといったことを、焦点の合っていない目をしたまま話し始める……


 ヤバいメンヘラ女に声をかけてしまったと、そそくさと逃げ出そうとした寸借詐欺男であるも、女性は「あなたは困っている私を助けてくれないんですかぁ? あなたは哀れな私を見捨てるんですかぁ? あなたは救いの手を差し伸べてはくれないんですかぁ? どうしてですかぁ?」と追いかけてきた。


 年甲斐もない超全力疾走で、恐ろしきメンヘラ女をなんとか振り切ることができた寸借詐欺男であった。



第2話


 また別の日の夕方。

 今度は、左手の薬指に指輪をしているごく普通の主婦っぽい女性に声をかけた寸借詐欺男。


 好感触に思えた(あっさりと騙されつつあるのは明らかであった)新たなるターゲットだが、「(お金を貸せるかどうかは)主人にL○NEで聞いてみますから……」と夫に連絡を取ろうとした。


 今回もヤバいと、そそくさと逃げ出そうとした寸借詐欺男の前に、筋肉隆々のたくましい肉体をトレーニングウェアに包んだ女性が登場!

 何やら、この筋肉女は主婦の”お義姉さん”であるらしい……


 筋肉女に寸借詐欺だと一発で見抜かれた挙句、「ここから一番近い交番にまで行きましょう。私が案内しますから」と、ギン!と睨み下ろされた寸借詐欺男は、またしても逃げ出した。



第3話


 二度のしくじり。

 だが、凝りもせずに、新たなる場所(駅)で新たなるターゲットを探す寸借詐欺男。

 今度のターゲットは、男子小学生だ。

 小学生がそんなに金を持っていないであろうことは奴も理解しているも、小さな成功体験を積み重ねておきたいといった、ふざけた理由であった。


 小学校低学年と見られる幼気な男の子に対し、”嘘の作り話(自分の息子が大怪我をして病院に運ばれた。急いで病院に行きたいも財布を落としてしまった。早く駆け付けないと息子は死ぬかもしれない……)”でグイグイと迫る、最低にも程がある寸借詐欺男。


 その時、「私、この子の”おば”なんですけど、何か御用でしょうか?」という声が奴の背中にかかった(声の主は、絡まれている男子小学生を助けようとしたのだ)。


 振り返った奴の目に映ったのは、(第1話で登場した)メンヘラ女であった。

 この女性、実はメンヘラの振り――即興での作り話&迫真の演技――をしていただけで、真のメンヘラではなかったというオチ。

 なお、メンヘラではなかったが元ヤンではあったのか、「まだ懲りてねえのか!! いい年こいて寸借詐欺なんてしてんじゃねえよ!! こンの最低の寸借詐欺野郎!!!」と怒鳴りつけてきた。


 女性を黙らせたかった寸借詐欺男は、反射的に女性の右頬を殴ってしまった。

 よって、傷害の現行犯で逮捕されてしまった寸借詐欺男。

 取り調べが進むうちに、寸借詐欺詐欺容疑も加わるのはほぼ間違いない……


 この話にはさらなるオチがあった。

 声をかけた男子小学生の”本当のおば(伯母)”は、(第2話ににて)奴を心底ビビらせた筋肉女であった。

 何という巡り合わせなのだろうか?

 

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