第13話 それぞれの動き
「お前――」
「騙されるか、ばぁかッ!」
全力だった、どうせ時間の問題で変身は解ける、だったら、この一撃に全てをかけた、ぺルラのあの顔は完全に俺を舐めてた、だからあの一撃で一瞬怒りの表情を見せたんだ、不意打を考えていたのはお前も一緒だ文句を言われる筋合いはない、ざまあ見ろ。
――『フレア』と『エア』が混じり合い大きな爆風と光を発生させた、砂埃と爆風に
アキラは変身状態は解け、そのまま吹き飛ばされて――
「......ん?」
あれ......ここは何処だ。
「どうして外で寝てるんだっけ?」
夜を照らしてる月を見ていて
「......ッ!」
思い出した。
ッそうだ、ぺルラ!
「あ、クソ、あいつはッ」
起き上がろうとするが
「痛、いたたッ......」
全身が痛い、倦怠感が全身を襲う。
「ッ逃がすかよ......あの女、絶対ロクでもない奴に違いないんだッ」
ほふく前進をしようとするが、重りが乗ったているような身体で全く動けない......
「はぁ......はぁ......パレハ、アイーシャは......へベルナ......はぁ、眠......う、我慢しろぉ」
ぺルラは死んでないはずだ確信している、だからこそ、急がねば。
「いち、にぃ、いち、にぃ......どこまで飛ばされたんだよ、ここ何処だ......ッ!」
人の足音が聞こえて来た。誰だ、味方か、敵か、判断がつかない。
勘弁してくれ、もう戦闘なんてできないぞ、というか、もう歩けない。
「.......っ」
クソ、ルキウスでもなんでも良い、首都近辺で反社組織が暴れてたんだからさっさと動けってのッ
「――っ?」「――!」
声が聞こえて来た、何か少女の声と何人かの男の声。数が多い気がする。
「っ見つけた」
「ッ!『ファイ――」
「っあ、待って、私は味方ッ」
条件反射的に魔法を撃ってしまいそうになった、幸い、撃たずに済んだ、それに味方?
「みんな見つけた、見つけたよッ」
鎧姿の少女はそう言って周囲に知らせるとぞろぞろと人が集まってきた。
あぁ、増援だ......
「大丈夫!?」
「......いや大丈夫じゃない」
緊張が解けたのか、もう、身体に力が入らなくなった、変身はただでさえ体力使うのに結構ダメージを受けたのが大きかったか。
「待ってて、すぐに病院に」
「あぁ......」
いや、俺より。
「......いや、ま、待て......俺よりみんなを」
俺は平気だ、きついが死ぬことはない、、それより他の皆が心配だ、吹っ飛ばされたパレハとアイーシャ、それにウルオーノとかいう奴も危ないはずだし、へベルナ達だって......
そんな心の声を見透かしたかのような答えが聞こえて来た。
「アキラ君、アイーシャ君とパレハ君、採掘場の皆さま含めもう保護しましたよ」
「へ?」
少女の後ろから一人長身に黒いコートに黒いシルクハット、黒いペストマスク、全身を黒で統一した男が現れた、前と違うところと言えば黒い杖を持っている所、一度見かけた事がある、確か
「【黒装隊】の......ギルドマスター?」
「えぇ、ファウストと申します......貴方とは一度お会いしてましたね、まさかこういう形で縁があるとは驚きです」
【黒装隊】のギルドマスター、ファウストと言うのか......
「みんな、無事なんだな?」
「はい、怪我人はいましたが命に別状はありません」
「......みんなが無事なら、良かった」
試合に負けて、勝負に勝った感じか?あぁ......良かった......いや良くない、全く良くない、誰も死ななくて良かっただけだ。負けて良いわけないな、うん。
「ッ......次こそ、勝って......やるぅ......」
「さぁ、アキラ君を連れて行ってあげなさい」
「ハッ」
【黒装隊】のギルドマスター・ファウストの一声を聞いて、疲れ切って眠ったアキラを連れて行く、そんな姿を後ろから見ている。少女はそんなファウストに質問した。
「あれ、今いる【黒装隊】の人はファウストさんだけですか?」
「えぇ、今回は私のみですが......それが?」
「あ、いえ?大丈夫です」
少女は言葉を選んでいるのか、色々と考えながら答える。
「あ、えっと、すごい迅速な動きですごかったです」
「ははは、ありがとう、とはいえ私が迅速だったのは、偶然近くにいたからで」
「でもすごいです、現場に来たのだって一番乗りだったんですよね?」
「一番乗り......いえいえ、誇張しすぎですよ、近くにいた所爆発音が聞こえて来て、他の冒険者に合流した形だったから、そう解釈されたのでしょうね」
ファウストは困った困ったと頭をかく動作をして答えた。
「そろそろ仕事場に向かわせてもらっても?」
「あ、引き留めて、申し訳ありませんッ」
「構いませんよ、また時間があったら、お話でもしましょう」
ファウストはそう言って、そのまま歩いていくのだった。
◆◇◆◇
へベルナは採掘場から出るや否や、穴ぼこだらけの地表の状態に困惑した、それからすぐに兵士やらギルドの冒険者やらがぞろぞろと現れ始めた。
「一体何があった?」
へベルナ達はそう聞かれた、自分たちが何をしていて、どうしてここにいたのかを説明していると、遠くから声が聞こえて来た。
「発見しました、パレハ=プロイントスをアイーシャを発見しました」
「っ、状態は?」
「怪我はありますが、大丈夫そうですッ」
そこから、情報が集まり始め、【
「......そんな事が」
「でも、リードルは捕まったみてぇだな、若い奴が良くやるぜ、ドリナ一人相手にこんな大所帯で対処してたのが恥かしいくらいだ」
バルガとガレナは申し訳なさそうにしていたのは敵の首領を倒すのを先輩が手伝えなかったからだろう。
「それで、そいつがドリナですか」
兵士の一人はドリナを見る、ドリナは『闇の鎖』を両手に巻かれ、俯いていた。
言われるがままにドリナはトボトボと兵士に連れられて歩いていく、しかし、最後にガレナは気になっていた事を聞いた。
「ねぇドリナ、貴方が育った国って、魔導国家バルマザナ?」
「......そうですが......何か?」
ドリナは最後にそう答えると、そのまま兵士に連れられて行くのだった。
へベルナはドリナの答えた事に思うところがあったのか
「魔導国家バルマザナ......」
「......大丈夫?へベルナ」
「......大丈夫ですよ、私の事よりもアキラたちのほうが心配です」
へベルナはそういうと近くの冒険者の元へ走っていき、仕事の手伝いをするのだった。
■
兵士に待機を命じられ、ドリナは小さな小屋に向かうとそこには『闇の鎖』で身体を巻きつけられたリードルが座っていた。
「ま、マスター......申し訳ありません......」
「構わない、俺も同じだ......」
「......負けてしまいました」
「お前が負けたのなら俺にも勝てない、相手だった」
お互い話す事は出来たが、近づく事は許されなかった。
「......ケイテスはどうしたんだ?......殺されたか......」
「ケイテス?見ていません、私一人でしたが......」
「......なに?」
リードルは困惑していた、てっきりケイテスは採掘場に居るはずだと考えていたからだ、ただ、もしかしたら増援を相手に戦闘をした可能性もあった。近くの兵士に聞いてみる
「おい、ケイテスは見つかったのか?」
「お前に話す事はない」
「ッ答えなくてもいい、今回、採掘場にいた仲間は俺とドリナ、ケイテス、そして協力者としてモトク、そしてもう一人、名前は知らないがもう一人いたはずだ」
「......お前たちには厳正な場で動機を含め、洗いざらいすべて話してもらうつもりだ」
「ッッケイテス......」
リードルは懸命に話す、ケイテスの所在がわからない、リードルは見つかる事を祈っていたが、結局そのケイテスが見つかる事はなかったのだった。
◆◇◆◇
西ソルテシア旧魔石採掘場 最深部
アキラたちを救出してから採掘場内部の状況を確認するために三人のギルド関係者が中に入っていった。
「ふぅこれが件の奴か、結構綺麗?......いや、まぁまぁ禍々しいか.......」
「魂の檻......意味深な事をドリナは言っていたらしく、その話をそのまま信じるのなら、これが......魂だという......」
話に聞いていた通り、赤い結晶の中をうごめく何かがあった。
「プロイントス家の奴も、こういうのがあるって把握できなかったのかねぇ」
「全くだよ......」
「まっ、没落した家だからしょうがないか」
中央部には祭壇らしきものの、その中心には紋様がところどころ目を模した形をしながらカクカクと放射状に拡散されている。
「ほう、これか......」
中央に落ちている、赤黒い魔石の欠片らしきもの。
「おいおい、話に聞く限りそれやばいんだろ?もうすぐ正式な調査隊が来るはずだ、それまで触らない方が良いって」
二人は会話している間、もう一人は興味深そうに魂の檻を見ていた。
「あれ......ちょっと、みんなこっち来て」
「なんだ?」
魂の檻の中をゆらゆらと動いていた塊、しかし、魂の檻と言われていた赤い結晶が徐々にひび割れていく。それと同時に塊も急速に小さくなり、見えなくなっていく。
「ッおい、外に知らせろッ」
「ッわかった!」
大変だ、みな外に向かって走る、そして先ほどの出来事を伝えると、大騒ぎが起きた、仮に魂の檻と言われた物が本物だったとしたら、これは重大な事だからだ。
しかし、その不安は杞憂に終わった、同じ頃、意識不明者の人々の意識が回復し始めたからだ。そんな時に調査隊が現れた。
ギルド統括冒険者協会の調査官である。
「では、魂の檻が破損している可能性があると?」
「はい、出た時には既に割れていました」
「ふむ、わかった、とりあぜず中に入らせていただこう」
割れてしまったのは仕方ない、そう思っていたのだが
「......全部壊れてるな......」
調査隊が到達したころには魂の檻は割れているどころか崩壊していて、壁の赤い結晶灰色の石に変質していて、それが壁から落ちてまるで瓦礫の山のようだった。
「......では作業を始めるぞ、さぁ取り掛かれ」
男が手を叩くと調査委はそれぞれの持ち場で活動を始めるのだった。
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宝暦999年
ギルド統括冒険者協会
西ソルテシア旧魔石採掘場最深部、赤の祭壇(仮称)調査記録
最深部にて、明らかに異質な人工物を見つける、灰色の扉を開くと隠し通路を発見、階段を下りる事で赤の祭壇へと向かう事が出来た。
中央部には地面が凹のような形で出っ張っていて、天井も落ちていく形でお互い近づくように伸びている、『血の結晶¹』は現状そこでのみ見つかっている。凹を中心として紋様がところどころ目を模した形をしながらカクカクと射状に拡散されている。
周囲の壁には『魂の檻²』と呼称されていた赤い結晶があったと報告を受けていた、しかしながら到着した時点ではそれらは既に崩壊していて、ただの灰色の石と化していた、それはガレキのように朽ちているのみだった。
しかし、崩壊前の状態については
トラッテ=リュテルの記録³とへベルナ=マギアフィリアの証言⁴、他同行者の証言⁵により、把握する事ができた、ドーム状の壁と天井に散りばめられた『魂の檻』、その中心部分がちょうど凹の中の部分だと思われる、地面の紋様もそこが中心だ。
この赤の祭壇の紋様は重要な意味を持っているはずである、また歴史の中で今回の出来事と似たような事件が起きていないのか調べる事でもわかる事が――
≪省略≫
――回収した『魂の檻』の残骸と『血の結晶』の詳細はギルド統括冒険者協会にて現在調査中である。
西ソルテシア旧魔石採掘場最深部、赤の祭壇(仮称)調査記録
報告者
ギルド統括冒険者協会
ガーゲイラ=レイバーラ
¹強力な精神汚染の効果を持っているアイテム、それ以外の事は不明、本来はもっと巨大であっただろうと推察できる。名は血のように赤黒いという事から、仮称である。
²当時、洞窟内にて光を浴びた者の魂がこれに囚われた、発動条件、解除条件も不明である。
³トラッテ=リュテルの図解
⁴「赤い結晶の核に薄い青の塊がユラユラと浮遊していました。何かを知らせようと動いてる気もしましたし、無意味に浮遊しているだけにも見えました」へベルナ談
⁵内容はへベルナと概ね同じである。
≪省略≫
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