六話 城なし怒涛の大地震
ラビを騙した奴らを種無しにした。
金品強奪した。
ラビをお空に連れてきた。
ようやくラビを愛でながら芋畑の作成に着手出来ると思ったのだが緊急事態が発生した。
ラビがおしっこをしたいと言ってきたのだ。
空の上は寒いからおしっこをしたなってしまったんだろう。
しかし困った。
トイレまだ作ってない!
城なしに戻った俺は、まずラビにその事実を伝える事にした。
「すまんなラビ。まだトイレが無いんだ」
「トイレとは何なのです? その辺でするから大丈夫なのです?」
くりくりした可愛い瞳で何て狂暴な事を言うんだ。
そう言えば以前転生に詳しい仲間が、この世界は転生者の為に存在する。
だから言語の壁は存在しないと言っていた。
なら、通じないと言うことはトイレを知らないと言うことか?
一体どんな生活をしていたんだ。
「女の子がその辺にぶちまけちゃダメだ」
「でもでも、もう漏れてしまうのです」
お股を押さえてもじもじしていると言うことは、もう限界が近いのか。
やはり、悠長にトイレを作っている余裕何て無いな。
取り合えずたちしょんで済ませよう。
「立ったまま、乙女の聖水を解き放つんだ」
「ふええええ!? ご主人さまそれは無理なのです。女の子の体は──」
俺は乙女の体について詳しくラビに説明してもらった。
そんなの知らなかった。
しかし、その様な構造になっていると言うことは、ブリッジすれば水平に飛んでいくのでは無いだろうか?
「ラビ。俺は名案を思い付いた。ブリッジして城なしの外に飛ばすんだ」
「ご主人さま。ぶ、ブリッジって何なのです? ナニをどうするのです? 嫌な予感しかしないのです」
「よく見ているんだぞ? ブリッジと言うのはこうするんだ」
俺は足を大きく広げ、腰を背に向かって曲げ、手を地について腰を高く突き上げた。
「これがブリッジだ! これなら水平に乙女の聖水を発射でき、女の子でも城なしの外にぶちまけられるハズだ!」
「無理無理無理なのです!? 恥ずかしくてそんなこと出来ないのです!」
「無理と言うのはやってみてからでも遅くはない。さあ、ぱんつを下ろすんだ!」
「ぱんつ何て履いてないのです……」
履いてないだと?
どうなってるんだよ異世界は。
チンピラから強奪した物の中にぱんつがあったので、事が済んだら出してあげよう。
「さあ、勇気を出して頑張るんだ。ほら、チョロチョロー」
「ふえぇ」
その時、城なしが揺れた。
「な、何だ!? 地震か? ラビ。しっかり踏ん張るんだ!」
「ぶぶぶ、ブリッジしながら踏ん張るなんて出来ないのです。出ちゃうのです! あああ、揺らしちゃダメなのですー!」
城なしは尚も揺れ続け、地表に一本地割れが走ったかと思うと、次には綺麗に整形された溝になった。
更にそこに水が流れると城なしのふちにはトイレが出来上がった。
城なしが見かねてトイレを作ってくれたのか?
すごいぞ城なし。
洋式便座で水洗とか最高じゃないか。
石が足りないのか壁も屋根もないけど。
ともあれ、これでラビのピンチを救える!
「ラビ、トイレが出来たぞ。これで──」
手遅れだった。
城なしに小さな虹が掛かってしまった。
「あ、あ、あ、やっちゃったのです……」
俺はこのたちしょんに天空式大開脚ブリッジたちしょんと名付けた。
この光景は未来永劫忘れる事は無さそうだ。
「うう。もうお嫁に行けないのです」
「ずっとここにいればいいさ。毎日愛でてあげよう」
「本当なのです? 見捨てられたら嫌なのです……」
それはどうだろう。
さて、それはそれで置いといて芋とタマゴを処理しなければ。
「さて、ラビ。さつま芋を植える準備をしよう」
「お芋植えるのです?」
「いや、芋からでも芽は出るけど、ツルから増やすんだ」
手にいれた芋のツルをナイフで腕の長さぐらいに切り揃える。
「こんなに刻んでしまって大丈夫なのです?」
「大丈夫。さつま芋は最強の作物だからね」
さつま芋のツルってのは刻んで少しぐらい放置したところでくたばりはしない。
店で売れ残った萎びたツルでも十分育つ。
「さつま芋は肥料が他の作物に比べて少なくてすむし、何より繁殖力が凄い。土にツルが触れてるだけで根っこが出てくるんだ」
「じゃあ、土に植えておくだけでたくさんお芋ができて、たくさん食べられるのです?」
「いや、芋にしたい部分じゃあないところ根っこが出てきちゃうとあんまり芋が大きくならないんだ」
だからツルが土に触れないようにする手間が掛かる。
だからこそ城なしで育てる意味がある。
土にツルを触れないように育てるのにこれほど適した場所はない。
それに城なしに季節とか関係無さそうだしな。
さつま芋は日本では冬があるから一年で枯れてしまうが、もとは多年草。
年中収穫できるようになる。
「でもまあまずは苗を増やすところから始めるけどな。いっぱい食べたいだろう?」
「いっぱい食べたいのです!」
「そうだろうそうだろう」
難しいことは何もない。
ウエストポーチから土を無造作に出して、そこにツルを刺せばハイおしまい。
水を撒かなきゃならないが、ジョウロなどと言う便利なアイテムはない。
そこは、布に水を染み込ませて絞る事でどうにかしよう。
「さあ、これで終わりだ。根っこが生えるまではこまめに水をやらないと、さすがに育たないから水やりを手伝っておくれよ?」
「ラビが面倒を見るのです!」
「よしよし、ラビはいい子だな。さあ、次はタマゴを処理するわけだが──」
土にタマゴ植えても鳥は生えてこんわなあ。
タマゴを温めれば孵るとよく聞くけれど、何度ぐらいで温めれば良いんだろう。
人肌をちょっと過ぎると茹でタマゴになりそうで怖いな。
「タマゴはどうするのです? 割ってすするにしては小さすぎるのです」
「た、食べないよ? 温めてふ化させるんだ。よし、ラビにママになって貰おう。タマゴをこの布でラビに巻き付けてやる」
「ママ! 凄いのです! ラビがんばってママになるのです。あっ、ひゃん、冷たいっ」
まあこれで解決とはいかんわな。
寝るときもこのままだと大惨事だ。
朝起きてタマゴが潰れていたらラビが泣いてしまう。
夜は焼いた石を布でくるんで湯タンポがわりにして温めよう。
「おっと、忘れるところだった。ほら、ラビはこれが欲しかったんだろう?」
「あ! お芋のお花なのです!」
「頭に刺してあげよう。さつま芋の花はなかなか咲かない貴重なモノなんだよ」
「ご主人さまありがとうなのです!」
ラビの髪は落ち着いたバニラ色だから青い花が良く映える。
女の子には花を。
喜んでもらえてよかった。
さて、次は何をして空の上を楽しもう。
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