316.魔法の嵐を打ち破れ

『まずは腕試しだ。紅蓮王のかいな!』


「ちょ! その規模の魔法が腕試しって!」


 俺のイフリート・アームよりも巨大な炎の腕。

 それがアヤネを殴りつけようとしている。

 これが腕試しって、アグニの攻撃力はどれだけだ?


「炎相手なら! 氷河の守り!」


 アヤネは瞬時に氷の鎧を形成し、紅蓮の腕を受け止める。

 受け止めるが……かなりの距離を押し込まれてしまった。


「なんなのこれ! 氷河の守りが一瞬でとけて、その後は堅牢頼みだったんですけど! 堅牢もギリギリもったけどもう無理!」


「堅牢を回復する手段がないのが痛いですにゃあ」


「元より使い捨ての盾だからな」


「気持ちを切り替えましょう、アヤネさん。守りを破られても、地龍王様と樹龍王様の加護、それにフートさんの回復魔法があるから、即死さえしなければ大丈夫ですよ」


「他人事だと思って……。まあ、その通りなんだけど。っていうか、フートの回復魔法が必要かどうかわからないレベルの回復力があるんですけど!」


 地龍王の加護と樹龍王の加護が重なることで、とんでもないレベルの自己回復力を得ることができた。

 ただも、そこにも落とし穴があるわけで……。


「回復しきる前に二撃目を喰らったら終わりだぞ。というわけで、回復魔法もバンバン飛ばすからな」


「はーい!」


『話は付いたようだな。次いくぞ、紅蓮王の息吹!』


 紅蓮王の息吹……イフリート・ブレスか!

 規模や威力は桁違いだろうが間違いなくイフリート・ブレスのようである。


「アヤネ!」


「わかってる! 消炎の盾!」


『さすがにこれは避けられぬし受けられぬ。かき消すのが正解だろうな』


「ちょっと待つにゃ! このペースだと……」


『次だ。水氷の奔流!』


 水氷の奔流!?

 ホワイト・アウトと大海嘯の合成魔法か?

 どちらにしても受けるわけにはいかない!


「アヤネ、無水の盾だ!」


「え!? ここで使っちゃっていいの!?」


「これは広範囲全体魔法! 予想が正しければ、相手を凍らせて動きを鈍らせるもののはずだ! 打ち消さないとまずい!」


「わかった! 無水の盾!」


『いい判断だ、フート。これを防げなければ、次が躱せなくなるからな』


 ええい、次はマリナ・ジェイルとアイスコフィンの合わせ技か!


『ゆくぞ、深海の氷獄』


「くっ……これも広範囲、でも躱せないわけじゃない!」


「この範囲から出ればいいのね!」


「危険ですね! やはり、モンスターというものは!」


「危険だからモンスターにゃ!」


 俺たち4人の周囲に少しずつ水の膜が張られていったが、それを全員回避する。

 氷の膜はドーム状になった後、一気に凍てつき内部のものを押しつぶしていった。


『次だ。嵐帝の溜息』


「な、タービュランス!?」


「フート、火と水以外は無効化技なんてないよ!?」


「とりあえず、全員を守れるものは!?」


「ええと……あった! オーラプロテクト!」


「よし! 全員、耐えしのぐんだ!」


「くぅっ! これは……!」


「結構きついのですにゃ!」


「まさか、属性無効技を揃えてこなかったことが、こんなところで足を引っ張るなんて!」


 それぞれに言いたいことはあるようだが、俺は癒やしの効果がある樹魔法を形成し続けるので忙しい。

 レベル5相当の回復魔法をかけ続けてくれるはずなのだが……全員のダメージの方が大きいようだ。


『ふむ。風属性には耐えられなんだか。これは土や雷を試しても一緒か?』


「にゃ。来年までに基本五属性と光と闇、すべての無効化スキルを覚えてきますにゃ!」


『それがよい。この程度であのダメージでは、次に土神の激情を起こせば全滅だからな』


 土神の激情……タイタンズステップかな?

 どちらにしてもタービュランスの段階で瀕死なんだ。

 これ以上、全体魔法を重ねがけされたらたまらない。


『ちなみに吾はこう言うこともできる。影法・刃波』


 突如としてアグニの影が盛り上がり、それが解き放たれる。

 それは風のような速さで突き進み、俺たちの背後にある大岩を両断した。


『今のは影魔法。影龍王の加護によって得られた加護の残滓。本来の力の半分未満だがな』


「あれで、半分未満ですかにゃ……フート殿の炎魔法と同規模ですにゃよ?」


『影龍王もイレイザーらしいからな。状況によって攻撃力が変わるらしいので、あまり出向くことはないそうだが』


「にゃはは……これは、フート殿も威力が高いからと言って炎魔法を練習しないわけにはいかないですにゃよ?」


「同感だ。……あて、魔法のお披露目は終わったし、次は剣技のお披露目かな?」


『心が折れていないのであればな。……この程度で折れる心であれば、吾を倒すなど到底無理なのだが』


「いいわよ、受けて立とうじゃない!」


「これからは反撃もさせていただきますよ?」


「にゃはは! フート殿、回復をバンバン飛ばしてくださいにゃ!」


「はぁ。無茶はしてくれるなよ?」


 無理だとはわかっていても、一応釘を刺しておく。

 属性魔法だけでもあのレベルとか、リオンに無効化スキルのあてがあってよかったよ。



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すみません、作者体調不良のため22日の更新を休みます。

この寒さにやられたました。

数日更新が滞るかもですがご了承お願いします。

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