148.礫岩の荒野到着初日
「さあさあ、ここが『礫岩の荒野』にゃ!」
ネコに連れられてやってきた礫岩の荒野。
だが、ここは……。
「いや、そう言われても……」
「ひたすら荒野が広がっているだけですね」
「左手側の遠くには熱帯樹林? のようなものも見えるが……」
「ああ、あそこはいっちゃダメにゃ。あの森は【毒尾の雌飛龍】フレイディアの縄張りにゃ。いまの戦力じゃ相当厳しいにゃ」
「フートの強化版マキナ・トリガーじゃダメなの?」
「おそらくマキナ・トリガーでも殺しきれませんにゃ。よくて……体力の2割を削れる程度かと」
「そんな化け物なんですか……」
「そもそも雷耐性がありますにゃ。耐性をぶち破ってそこまで削れることがすごいのですにゃ」
「じゃあ、もし出会っても雷系の技はダメか」
「有効なのは……水と土ですかにゃぁ」
「とりあえず覚えておく。今日のキャンプ地は?」
「もう少し南に行ったところが入り口キャンプですにゃ。結界も張れているのでゆっくり休めますにゃ」
「例の冒険者崩れと出くわしたりしてね」
「そのときは規定に従い『優しく』無力化するだけですにゃ」
「それもそうか。じゃあ、そこに向かおう」
車に乗ったまま移動していると、ときどき魔物の群れに遭遇する。
とは言っても5匹から10匹程度の小規模な群ればかりなのだが。
「フート殿、お気づきになりましたかにゃ?」
「魔物の群れが小さい規模でまとまっていることか?」
「はいですにゃ。これからしばらく……2週間程度はあれとやり合ってもらいますにゃ」
「あの、そんなことをしていて時間は間に合うのでしょうか?」
「そうよ、私たちには時間がないの!」
「お三方にも礫岩の荒野の洗礼を受けてもらいますにゃ。まあ、本当に危なくなったら手助けしますのでご安心を」
リオンの言葉が気になったが、とりあえず入り口キャンプに到着する。
そこは、明らかに最近まで誰かが寝泊まり……と言うか、適当に生活していた跡があった。
「リオン……」
「例の冒険者どもでしょうにゃ」
「どこに行ったのでしょう?」
「元騎士だろうといまは冒険者崩れ。そんな連中が礫岩の荒野で生き抜けるはずはないのですにゃが……」
「そんなことより、とりあえず掃除しましょう。これじゃ、気持ちよく使えないじゃない!」
「吾輩たち、ハウスの中で生活するのに掃除の必要はありますかにゃ……?」
「気分の問題ですよ。ぱぱっとやれるだけやっちゃいましょう」
「だな。とりあえず、この不快な匂いから。クリーン!!」
魔力過剰なクリーンで一帯を浄化してしまう。
これで匂いは消え去ったはずだ。
「さて、ちゃっちゃと片付けますよ。フートさん、不要物はここに集めますので最後に焼き払ってください」
「了解だ」
そして、30分ほどかけて大雑把な掃除は終了。
不審物というか不要物は白光の翼で焼き払い掃除完了だ。
「ふぅ……慣れないことをしたら一気に疲れが出たな」
「それは慣れないことをしたせいではなく、長旅の疲れもありますにゃ」
「そうですね。早めに夕食にして今日はもう休みましょうか」
「賛成。私も疲れてきたわ」
「それでは、そう言うことで。フート殿、ハウススキルを頼むにゃ」
「ああ……」
ハウスを呼び出そうとしたその瞬間。
「テメエら! 俺たちの縄張りに勝手に踏み込んでるんじゃねぇ!!」
おそらく、件の冒険者崩れだろう。
そいつらのうち何人かが帰ってきたらしい。
「ほほう。ここは共用のキャンプ地であるぞ。そもそも、お主らは何者であるかな?」
「俺たちはサジウス領冒険者ギルドのものだ! お前たちこそ何者だ!?」
「『青雷のリオン』とでもいえばわかるのではないのであるかな?」
「『青雷』だと……俺たちの追っ手か!?」
「ふん、追っ手をかけられる立場であることは自覚があるようでなによりである。だが、ここを訪れたのは、吾輩の仲間たちのレベル上げが目的であるよ」
「……へっ、驚かせやがって。なら、消え失せな。仲間たちは他んところに行ってるが、そのうち帰ってくるんだからな」
「なるほど。それはいい話を聞けたのである」
そこまで言うとリオンの体がぶれ、男ふたりの背後に現れた。
そして剣の腹で気絶させて縛り上げ、目隠しもする。
最後に何か花火のようなものを打ち上げて作業は終了したようだ。
「何をやったんだ、リオン」
「たいしたことではないのであるよ。先ほどの信号弾は『侵入者発見、直ちに援軍求む』である」
「つまり、そいつらを回収してもらうのね」
「ややこしいことになる前に、私たちはハウスに引きこもりましょうか」
「それがいいのである。礫岩の荒野はほこりっぽいのでシャワーを浴びたいところであるな」
「じゃあ、アンタが一番で良いわよ。家の中を砂だらけにされても困るもの」
「催促したみたいですまないにゃ。では一番風呂はもらうにゃ」
さて、リオンがいなくなったところで作戦会議だ。
「……あの、先ほど見かけた魔物。あれ、小規模な群れでしたが、一匹のレベルが130になってましたよ」
「見間違いじゃなかったのね……」
「小規模な群れを複数形成してるってことは、どこかに親玉もいるんだろうな」
「……ほんと、スパルタね、あのネコ」
「でも、時間のない私たちにはもってこいです」
「だな。どの属性が効きやすいかはリオンが教えてくれるから、他の皆は弱った敵の迎撃を」
「一撃で倒せるとは言わないのね?」
「さすがにこのレベルになるとな」
「じゃあ、明日からはそう言うことで……お風呂、次は私で良いですか?」
「構わないわよ。そうじゃないと晩ご飯が遅れるしね」
「ありがとうございます。それでは明日から、がんばっていきましょう!」
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