117.岩山の上で作戦会議

「うーん」


「どうしましたにゃ、フート殿?」


「なにかあったの?」


「どうかしましたか?」


「いや、俺って最近、なんのスキルも覚えてないからさ」


「……仕方がないんじゃない? ソウルパーチャスっていっても万能なわけじゃないんだし」


「そうですよ。それに、いまはレベル上げ、大事です」


「わかっちゃいるけどさ……」


 四人+二匹でのんびり話をしているのは小さな岩山を登った山頂付近。

 岩山といっても、ほとんど大きな岩といった感じだが。

 ともかく、そこである場所の状況を確認しながら雑談をしていたわけだが。


「……あれってなに? 背中に宝石みたいなのをひっつけた亀に見えるけど」


「アヤネ殿、ほとんど正解ですにゃ。あれはジュエルトータスといって……わかりやすくいうと体当たりしかしてこない亀ですにゃ」


「なら、フートの魔法で楽勝じゃない?」


「そうでもないのですにゃ。背中の宝石が対魔法シールドを張っているせいで魔法ダメージが通りにくいのですにゃ」


「むむ……フート、大海嘯でいけそう?」


「多分無理。シールドとやらがある限りは7発から9発は必要だろうな」


「うげぇ、そこまで硬いの……」


「それがめんどくさい部分ですにゃ。でもあの宝石を割らずに倒せば……」


「割らずに倒せば?」


「なんと魔宝石が手に入るのにゃ。片手で持てるくらいの大きさですがにゃ」


「それって、いる?」


「吾輩たちの資産を考えるに不要ですにゃぁ」


「なるほど、それじゃあ、背中の宝石を割っていく方針で……」


「ちょっと待つにゃ、アヤネ殿。こいつらは仲間意識が強く、一匹が襲われると全員動き出しますにゃ」


「亀ってことは足が遅いんじゃ……?」


「かなり速いですにゃ。吾輩たちが走れば追いつかれることはありませんが、逃げ回っても追い詰められますにゃ」


「……かなりの強敵?」


「はいですにゃ。だからこそ、吾輩、ここからの偵察をしているのですにゃ」


「……数は……18匹か。かなりしんどいな」


「フートさん、あの宝石を割れば大海嘯で倒せそうですか?」


「多分一発は無理だ。二発目が必要になる。ここのところ大海嘯を乱用していたから、習熟度が上がって20秒間隔で撃てるようになったが……それでもきついだろうな」


「大海嘯を使ったらターゲットがすべてフート殿に集まりますにゃ。フート殿の素早さでは逃げ切るのは厳しいですにゃ」


「間に私がはいるのは?」


「アヤネ殿が守るのはありなのですが……数匹は確実にアヤネ殿を無視してフート殿を追い回すにゃ」


「なによ、ここに来てヘイト無視!?」


「ヘイトというのが敵愾心のことならばそうでしょうにゃ。この先、魔物によっては威嚇や威圧を無視して攻撃者を攻めようとする魔物も増えてきますにゃ」


「俺、大ピンチだ」


「なので、フート殿にも防御力上昇効果のスキルは覚えて欲しいのですにゃ。数発耐えてくれれば、吾輩とミキ殿で確実に始末しますにゃ」


「はい! フートさんは絶対に守り抜きます!」


「……意気込んでるところ悪いんだけど、とりあえずこの18匹はどうするの?」


「そうですにゃぁ。一応、威圧や威嚇が効かないわけではないので、アヤネ殿には耐えながら宝石割りができるか試してほしいにゃ」


「了解よ。他の皆は?」


「あの亀、弱点は水か?」


「はいですにゃ。なのでフート殿には……」


「水の舞殺刃だな。単体攻撃にはなるが、攻撃力は大海嘯の何倍もある。それに2連発くらいならできそうだ」


「ではそれで。ミキ殿は?」


「私は新しく覚えたスキルで物理貫通を狙っていきます。多分、防御力を貫通すれば一撃で倒せるはずなので」


「……ミキ殿がコワイにゃ」


「ネコ、アンタは?」


「吾輩は水の魔法剣で切りつけますにゃ。そうすればダメージが蓄積していって倒せますにゃ」


「魔法剣って……大丈夫なの?」


「魔法剣は物理扱いなんですにゃ。さて、そうなるとテラとゼファーをどう扱うかですにゃぁ」


「ゼファーは腐食のブレスでアヤネを援護してもらおう。腐食化が進めば物理攻撃力も攻撃回数も減るし、アヤネのダメージが蓄積したら回復のブレスで回復することもできるし」


「了解よ。よろしくね、ゼファー」


「ワォン!」


「で、テラだが、リオンの援護に回そうと思う。テラのブレスはとにかく視界を遮る。そんな中連続攻撃を受けたら、相手はパニックに陥るだろうさ」


「了解であるよ。今日はよろしくだにゃ、テラ」


「オンオン!」


「さて、作戦は決まったな。それじゃあ、行くぞ!」

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