116.雨の日のレベルアップ
「うーん、これじゃあ、今日の狩りは無理そうだな」
ハウスの外に見えるのは分厚い雨雲と土砂降りの雨。
普通のハンターだとこう言うときどうしてるんだろうね。
「確かに今日は休んだ方がよいでしょうにゃぁ。魔物も弱っていてボーナスステージではあるのですが、どうせ大海嘯でドーンは変わりませんしにゃぁ」
「うーん、ならレベル5位で新しい水魔法を創造してみるか?」
「……そんなことできますのにゃ?」
「不可能では無いと思うぞ。必要なのは詠唱句とそれに込めるイメージだから」
「世の魔術師に聞かせたら勢いつけて殴られそうな話ですにゃ」
「そうかねぇ」
「そうですにゃ」
大雨の外を見ながらのんびりリオンと話す。
なお女性陣はというと……。
「うーん、うまく切れないわね……」
「力を込めすぎなんですよアヤネさん。もっとナイフの切れ味で押すようにして切らないと」
「なるほどねぇ。……私、転生前も料理下手だったんじゃないかしら」
「それといまとは関係ありません。簡単な焼き物とスープくらい作れるようになっておけば、ひとりになったときでも便利ですよ」
「ひとりになったときねぇ……発情期のときに家から追い出されるとか?」
「……そう言うことを言う人にはいざっていうときにフートさんを貸してあげません」
「……ひとりでなんとかしてみるからいいのよ」
というわけで、キッチンで料理教室をしているわけだが……話は全部筒抜けなんだよなぁ。
「アヤネ殿、発情期のことを甘く見すぎてますにゃ」
「え?」
「発情期になると、とにかく我慢できなくなるそうですにゃ。ひとりで慰めても意味が無いと聞いておりますにゃ」
「……ほら、私って赤の明星だし、なってみないとわからないじゃない」
「発情期が薄いといいんですがにゃぁ」
「……そういえばリオン。その間ってリオンは里帰りをするんだったか?」
3月と4月にかけては休養期間と定めてある。
アグニとまた戦うのが7月頃だから、余裕は3カ月なのだが。
その間にリオンは一度ケットシーの里に帰るらしいのだ。
「はいですにゃ。吾輩、2月下旬にお三方を都までお送りした後、一度里帰りをさせてもらいますにゃ」
「里帰りしてなにをしてくるんだ?」
「新しい武器や防具を発注してくるのですにゃ。魔物素材やモンスター素材がたんまりと手に入ってますにゃ。装備を大幅に更新できますにゃ!」
「……それって里帰り期間中で間に合うのか?」
「間に合いませんにゃ。なので、6月頃にまた里に行き受け取って参りますにゃ」
「了解だ。ちなみにケットシーの里ってどれくらいの距離にあるんだ?」
「吾輩の愛車ですと3日ほどでついてしまいますにゃぁ」
「近ッ! ずいぶん近くにあるのね!」
「里が近いというか、転送装置が近いというか……まあ、受け取りには時間はかかりませんにゃ」
「わかった。休息期間はのんびりしてきてくれ」
「はいですにゃ。……ところで料理はできそうなのですかにゃ?」
「……今日中に生姜焼きとスープは教えます」
「よろしくお願いします、ミキ先生……」
……これは前途多難だな。
「……そういえば、フート殿。ソウルはどれくらいたまっておりますかな?」
「ソウルか……最近見てなかったな」
「ここ10日間は毎日狩りで忙しかったですからにゃ」
「ちょっと待ってくれ。……あ、ギリギリレベル110に届く」
「おお、ついにレベル110になれるのですかにゃ!」
「ああ、ただし残りソウルは2万残らないけど」
「それだとしてもレベルは上げるべきですにゃ! さあ、早く早く!」
「わかったよ。……よし、レベルアップ完了だ」
「……何か変わったことはありますかにゃ?」
「5レベルしか上がってないしなぁ。あまり変化は感じられないよ」
「そうですかにゃ……。新しいスキルが来ないかと期待していたのですがにゃ」
「……そういえば、リオンってアヤネが使っている堅牢とか、ミキの閃撃、瞬撃は使えないのか?」
「瞬撃だけは覚えられましたにゃ。他は無理でしたにゃ」
「俺は全部無理だったし……ソウルパーチャスって謎が多いんだよなぁ」
「覚えるスキル傾向で取得可能なスキルが決まっているんでしょうにゃぁ」
「多分そうだろうな。タンクのアヤネが堅牢を使えて、ストライカーのミキが閃撃、瞬撃を覚えるんだから」
「謎の深いスキルですにゃ、ソウルパーチャス」
「だな。……いい匂いもしてきたな」
「焦げないといいですけどにゃ」
「ミキもついてるし大丈夫だろう」
「ですにゃ」
しばらく待って出てきた昼食は生姜焼き丼とポトフのようなスープだった。
ミキがいろいろ指導したが、全部アヤネの手作りだそうな。
「……うん、おいしいな」
「でしょう! 私だってやればできるのよ!」
「……お肉、焦がしかけましたよね?」
「……はい、調子に乗りました」
「まあまあ。きちんと食べれるものができたのですから大丈夫ですにゃ」
「そういえばフートたちって料理はできるの?」
「うーん、タレなしで生姜焼きを作るのはめんどくさそうだけど、できるかな」
「フート殿、生姜焼きの作り方は?」
「まず、薄切りにした豚肉に火を通して、醤油とショウガを混ぜたタレを作り、そこに火を通した豚肉を戻して味付け……であってるよな?」
「そんな感じであってますよ。フートさんも作れたんですね」
「作れたというか……これを見たらなんとなく作り方がわかった」
「確かにそんな感じですにゃぁ。吾輩でもできそうですにゃ」
「……敗北感が半端ない」
楽しい昼食を終え、洗い物を終わらせたらレベルアップの話になった。
「フートさんがレベル110になれたって言うことは、私たちもそれなりに上がるってことですよね!」
「そうね! 試してみましょう、ミキ!」
ふたりもソウルパーチャスを使いレベルを上げ始めた。
そしてその結果は。
「レベル107まで上がりましたよ!」
「十分な成長ね」
「それに新しいスキルも覚えられるようになってました!」
「どんなスキルにゃ?」
「【武撃砕】といって硬い相手にも攻撃が全力で通じることが起こるようになるスキルみたいです! 硬い鎧や鱗を無効化できます!」
「私の方は【剛陣の盾】ね。使うとエネルギーの膜を作って後ろの仲間も守れるらしいわ。……完全にブレス対策ね」
「ふたりとも覚えましたかにゃ?」
「当然です!」
「覚えない理由は無いわよね」
「となると、フート殿だけが新しいスキルが無かったというわけですな」
「まあ、そのうち何か覚えるさ」
「そうですにゃ。それでは明日は楽しい楽しいモンスターハントですにゃ!」
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