ソウルパーチャス！ ～魔獣の魂を集めてスキルを購入！～

88.ダークトライホーン討伐前哨戦

「フート、そっち、追加行ったわよ！」

「わかってる！　サンダーレイン！」

　空から降り注ぐ雷鳴がバイコーンやナイトメアホーンを打ち抜く。

　数匹のうち漏らしはアヤネとミキに任せて大丈夫だ。

「それにしても、地味な作業よね。群れの端から少しずつ叩いていくんだから」

「そういうことは言わない。俺も地味だとは思うが……」

「リオンさんがダークトライホーンの様子を調べていてくれてるんですよね。何か有益な情報が手に入るといいんですが。

「そっちの方も期待薄だろうな。そんなに変わったことがわかるとは思えないし……」

「ともかく、いまは魔物退治をがんばりましましょう！」

「それもそうね。いまは邪魔者を片付けることを優先しましょう」

　そうして邪魔な魔物を退治してまわることしばらく、リオンが帰ってきて驚くようなことを言い出した。

「にゃにゃ!!　ザコ狩りは中止にゃ!!　ザコを倒し続けていると、ダークトライホーンがどこか亜空間から呼び出してしまいますのにゃ！」

「あー、それは面倒なパターンだなー」

「無限沸きのザコとかやってらんないわよ！」

「リオンさん、他に変わった特徴とかなかったんですか？」

「変わった特徴……そうにゃ、魔物を召喚するとき、三本の角が光ってたにゃ！」

「ということは、その角が折れればザコの無限沸きは止まるかも知れないのか」

「そうなりますにゃ。問題はどうやって角を折るかなんですがにゃ……」

「とりあえず、フートの魔法ブッパを試してみたら？」

「そうですにゃぁ。ただ、失敗すると群れ全体に気付かれるリスクもあるにゃ」

「マキナ・アンガー2連発くらいならなんとかなるから大丈夫だよ。一発は指輪で強化出来るし。さすがに撤退戦は皆に支援してもらいながらになるけど」

「それくらい望むところです！」

「で、実際に角を折れそうな確率ってどれくらいだと思ってるの？」

「2割あればいいかなーと」

「つまり不可能だと思っているのね」

「まあ、なんとかなるさ。どちらかというと、メインは撤退時に、マキナ・アンガーを撃って魔物がおびえるかどうかを確認することだし」

「ま、いいわ。無理はするんじゃないわよ」

「もちろん。無理なんてしないさ」

「さて、それではフート殿も空の旅に出発にゃー」

「おうよ。行ってくる」

　ショットワイヤーを使って木から木へと飛び移る。

　この辺の作業はもうなれたものだ。

　木々の間の移動を数十分繰り返し、たどり着いたのはダークトライホーンの本営。

　今日もそこでダークトライホーンは寝そべっていた。

「さて、この距離でやれますかな、フート殿」

「正直、もう少し近づきたいけど……適当な木もないしここからやるしかないか。それじゃ、詠唱に入るよ」

　マキナ・アンガーの威力を高めるために詠唱を開始する。

「〈我が意に集え雷精たちよ。真なる力の一部を開放せよ。それを統べるは我の意思、……

　すると。

「ダークトライホーンがこちらに首を向けましたにゃ！」

「くっ、魔力の流れを読まれたか！」

　詠唱は中断したが集まった雷精たちは周囲に残ってくれている。

　あちらがなにかをする前に撃つしかない!!

　指輪による強化は……間に合わないか!!

「征け!!　マキナ・アンガー!!」

「ヴォォォォ!!」

　ダークトライホーンが一啼きすると、周囲に青白い膜が張られた。

　いやな予感がするが、ここで止めるわけにもいかない。

　そして、その膜にマキナ・アンガーがぶつかると急激に威力を落とし、膜を突き破りダークトライホーンの角には当たったが……当然のように無傷だ。

「フート殿、逃げるにゃ!!」

「ああ、わかってる！」

　気落ちしている暇もなく、俺たちは来た道をショットワイヤーで飛び抜ける。

　後ろからは、ダークトライホーンの周りにいた群れが追いかけてきているのがわかっていた。

「本来ならば、あそこでもう一発試すところでしたがにゃ！」

「魔法耐性バリアとか聞いてないぞ！」

「吾輩も初めて見ましたにゃ！」

　仲間との距離は半分ほど戻った。

　だが、この大群を皆のところに連れて行くのはマズい。

「リオン、マキナ・アンガーの拡散版を撃つぞ！」

「了解ですにゃ!!　何発いけますかにゃ！」

「精霊たちが回復したから2発だ！　行くぞ、マキナ・アンガー！！」

　俺の手から放たれる青白い雷鳴。

　それは拡散していき魔物の群れを焼いていく！

　だが、半数程度を焼いたはずなのに魔獣の士気は衰えずこちらに向かってくる。

「やっぱりダメか!!　2発目、今度は指輪による強化版マキナ・アンガー！」

　残った魔獣に向けて雷鳴をほとばしらせる。

　すると、魔獣は断末魔をあげる暇もなく事切れていった。

「終わったようだにゃ」

「魔石を回収してみよう。何匹倒したかわかると思うから」

「そうですにゃ。もう追っ手は来ないようですし、戦後処理にゃ」

　そうして、リオンと魔物のドロップを集めることしばらく。

　マキナ・アンガーの雷鳴を見て合流してくれた皆も加わっての作業は30分ほどで終わった。

　終わったが……。

「魔石だけで513ですにゃ」

「これってあのモンスターを守っていた魔物の一部なんだろう？」

「はいですにゃ。これはかなり困ったことになりましたにゃぁ……」

　これ以上、ここにいる理由もないのでキャンプ地に戻る。

　だが全員のムードは一様に晴れないままだった。