76.灰色の森到着

 邦奈良の都出発後、特にモンスターに襲われることはなかった。

 (車の突撃で散っていったとしか言えない)

 そして、いまは灰色の森前線基地なる場所にいる。

 この場所は、灰色の森を監視し、不審な動き、特にモンスターの出現を監視する場所らしい。


「ご苦労様である。皆のもの変わりはないか?」


「おや、リオンさん。特に変わりは……あるっちゃあるか」


「ほう、どんなことであるか?」


「深層部の方にモンスターがでたっぽいんですよ。ただ、先行偵察班によると脅威度は極低いとかで」


「それは変わりと言えば変わりであるなぁ。気にしておくである」


「それで、そっちの三人は? リオンさんのお仲間で?」


「そうであるよ。全員優秀なハンターである」


「優秀じゃなきゃ『青雷のリオン』が仲間をつけないってな。期待してるぜ、あんたたち!」


 激励を受けて前線基地を後にしようとする。

 すると。


『森からミミクリーゴリラ3、ミミクリーゴリラ3! 迎撃態勢をとれ!!』


 早速獲物がやってきたようだ。


「あー、前線基地の戦士たちよ。あれは吾輩たちでやるから見ていてくれである!!」


 リオンが声をかけるとともに、前線基地の方では臨戦態勢を一時解除する。

 だが、俺たちを抜けた場合、即座に対応できるかたちだ。


「フォーメーションは!?」


「リオン抜きのトライアングルで!」


「ひっさしぶりね、そのフォーメーション!!」


「さあ、接敵するぞ!」


 先頭のミミクリーゴリラの攻撃はアヤネが盾で受け止める。

 すると盾に弾き飛ばされて、後続を巻き込み倒れ込んでしまった。


「あちゃーやり過ぎたわ。ミキとフート、適当にわけて」


「じゃあ、私が先手をもらいますね」


 ミキがミミクリーゴリラに駆け寄って行き、大ジャンプから拳を突き落とす。

 すると、ミミクリーゴリラ3匹まとめて身体に穴が空いた。


「えぇぇぇ……」


 どうやら絶命したらしく、ミミクリーゴリラのいた場所にはドロップアイテムが残されていた。


「ふぅむ、攻撃力過剰になっているのはフート殿だけかと思いきやミキ殿もとは」


「まったく嬉しくない事実だな」


「魔物相手には手加減無用ですが、対人戦では手加減が必要な場合もありますからなぁ」


「うっわー、聞きたくなかった」


「とりあえずお二方と合流しましょうぞ」


「だな」


 ミミクリーゴリラのドロップアイテムの回収も終わり、前線基地からの歓声にも応える。

 その後、俺たちは本格的に森の中へと入っていった。

 よくよく考えれば、森の中の移動はリオンの案内で引率してもらっただけだった。

 こうも緑の匂いが強いと感覚が狂いそうだ。


「いかがですかにゃ、人の手が入っていない森の感想は」


「なんというか……圧倒されてしまいます」


「森自体も私たちにプレッシャーをかけてきている感じね」


「そうだな。俺の感覚も結構狂ってきた」


「にゃはは。初めてでその感覚を感じ取れれば上出来にゃ。さて、ここからは森の奥に向けて進むわけなのにゃが……テラとゼファーを先行偵察に使ってもいいかにゃ?」


「テラとゼファーか……この二匹なら危ない場面があっても逃げ帰ってこられるし、大丈夫だろう」


「感謝しますにゃ。それではテラ、ゼファー、先にいる魔物を見つけてくるにゃ」


「「オウン」」


 二匹は小さくなくとその場から一気にかけ去って行った。

 それぞれ別行動をするわけではなく、二匹一緒に探索するようだ。


「ふむ、これは育て方が出ましたかにゃ」


「なにがだ?」


「フート殿は二匹を常に平等に扱ってきましたにゃ。なので二匹の間にも、対抗心よりも協調心の方が強く出ているようですにゃ」


「それってマズいことか?」


「いえいえ、囮を務めてくれるというのであればむしろ助かりますにゃ。二匹別々に違う群れを連れてくる可能性が少ない、という意味でにゃ。……っと、どうやら帰ってきましたにゃぁ」


 二匹が連れ帰ってきたのは猿型の魔獣。

 数は……20くらい?

 相当怒っているけどなにをしたのかな?


「木の上の魔獣ですからにゃ。フート殿の出番にゃ。ガツンと行ってくださいにゃぁ」


「はいよ。精霊よ……サンダーレイン!」


 普段と同じ感覚でサンダーレインを使ったのがマズかった。

 落ちてきた雷の雨は普段の3倍以上になり、追ってきた猿を全滅させた

 だが、同時にテラとゼファーにも当たりそうになってしまったのだ。

 ……もっとも、雷魔法も食べるテラにとってはおいしいおやつだったみたいだが。


「フート殿、やり過ぎにもほどがあるにゃ」


「いやはや。まったくもって済まない」


「ニネットの作った指輪とネックレスのセット。フート殿のもミキ殿のも強すぎるにゃ」


「そこをうまく調節して使っていくしかないんだろう」


「ですにゃあ。ああ、頭が痛い」


「「ガオン」」


「ああ、ご飯な。ちょっと待ってくれ」


 こんなときでもマイペースな二匹にほっこり癒やされる。

 そして、土属性魔法と風属性魔法を数回食べさせた後、おやつに雷魔法と回復魔法も食べさせておく。

 ……おやつをあげるたびに毛並みが変わっていってるんだが、大丈夫かなー?


「吾輩たちのご飯はまだ後で大丈夫だにゃ。では山道をもうしばらく歩くのにゃぁ」


「おっけー」

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