新人(?)ハンターと新人冒険者、ゴブリン

43.初ハント!

「それではみんな準備は万全かにゃ」


「ああ、大丈夫だ」


「ちゃんと言われたとおりライトとかも完備したしね」


「私も水筒とか準備してあります!」


「君らの場合はあまり必要がない気もするのだがにゃぁ。はぐれたときの念のためというやつだにゃ」


 昨日一日間が空いたのは、リオンが冒険者やハンター御用達のお店を紹介してくれるためだった。

 そこで基本となる、ナイフやロープ、タオル(この世界は紡織技術も進化しているのだ!)、ランタンや魔導ライト、ポーションなどを買った。

 ポーションについては店によって良し悪しが激しく、よいポーションを売っている店は自分で見つけろとのこと。

 ……自分でスキル覚えてポーション作ろうかな。


「とりあえず今日のところはゴブリンハントという基本中の基本なのでなにも起きないとは思うのにゃが、念のため装備はしっかり調えておいたにゃ。これに毒を使う魔物相手ならば毒消しポーションがいくつか。疫病系ならば耐病ポーションを用意するにゃ」


「せんせー。毒消しはともかく、疫病に耐病で効くんですかー?」


「アヤネ殿いい質問ですにゃ。答えは効いてしまうんですにゃ。ただ、販売元が腐った教会どもしかないせいで非常に高価ですにゃ」


「とりあえず、病気を治すにはそれに見合ったポーションが必要になるってことだな。ポーションってやっぱり、売ってもらったポーションストッカーに入れておくべきか?」


 最初にポーションを買ったときに勧められてそのまま買ってしまった、ポーションストッカー。

 ポーション瓶をいくつもはめておける構造になってはいるが……。


「吾輩はいくつかはめているが、お三方は必要ないのにゃ。なにせアイテムボックスがあるからにゃ。ただ、いざというときに必要なポーションが出せるように集中しておくのにゃ」


「わかった。これで準備は完了か」


「完了ですにゃ。普段なら吾輩の車でひとっ飛びなんですが、都の街並みになれてもらうためにも今日は歩きですにゃ」


「了解したわ。じゃあ。いきましょうか」


「「ウォン!」」


 久しぶりに全力で身体を動かせるテラとゼファーのコンビもうれしそうだ。

 新しい家に来てからずっと、朝夕の散歩は天気がよければ欠かしたことはないが、やはり思いっきり走りたいのだろう。

 いまも、俺の横で今か今かと待ち遠しくしている

 尻尾がビシンビシン当たって少々痛いのは我慢しよう。


 家を出てハンターギルドの前を通り、街をしばらく歩いていく。

 中心部では人通りも多かったが段々まばらになっていき、やがて街門へとたどり着いた。


「さて、今日の狩り場に最も近い東門ですにゃー」


「歩くと結構距離があるもんだな」


「ハンターギルド本部は南門よりですからにゃ。東門そばには東支部がありますにゃ」


「そう。早くいきましょう」


「まあまあ、そう慌てずとも獲物は逃げないのである。ゴブリンは繁殖力旺盛であるからして。……というわけで通ってもよろしいかな?」


「ハンターギルド所属のハンター四名を確認しました。どうぞお通りください」


「……なぞ技術が怖い」


「まあ、楽なことはいいことですよ」


「あの、ハンターさん。こういうことを頼むのは筋違いなんですが……」


「なんであるかな? 話は聞くであるぞ」


「実は、30分ほど前に5人組の新米冒険者が出ていったんです。ただ、装備がかなり貧弱なのにこちらから出ていくのはと。薬草摘みでしたら西門か南門ですし、心配になってしまって」


「ふむ……それは確かに気がかりではあるな。であるが、冒険者とハンターが不干渉なのも不文律。危険な場面に出くわさなければ手助けはせんのであるよ」


「はい、それでかまいません。……この時期は新米冒険者の行方不明や死亡数があまりにも多く、こんなことをお願いしたところで全体の数が減るほど犠牲者数は少なくないのですが」


「まあ、其方も門番という立派な勤めがあろう。あとのことは天の采配に任せるがよい」


「ええ、もし見かけたらお願いします」


 衛兵と話をしていたリオンが戻ってきた。

 ふたりの会話は聞こえていたのだが……どういう意味だろう。


「ぷはー、疲れましたにゃ」


「そんなことより、さっきの話の説明をしてよ」


「うーん? 衛兵の話は聞こえてたんにゃろ? あれが大体すべてであるのにゃが」


「つまり無謀な新人冒険者5人組がゴブリン狩りに向かったと」


「そういうことにゃ。確か、向こうのギルドでも見習い昇格の条件として街中のクエストをいくつかこなすとか、薬草摘み系のクエストを何回かこなすとか、ゴブリン討伐を成功させる、とかがあったはずにゃ」


「つまりそいつらは一番最後のを達成しようとしたわけだ」


「そうなりますにゃ。一番大変だからこそ最後に書かれているのににゃぁ。街中のクエストや薬草積み系のクエストをこなしていれば、魔物の怖さは自然と教えてもらったり、薬草積み中の遭遇戦で知れるものなのだがにゃぁ」


「それって大ピンチじゃないの」


「たとえ大ピンチであっても助けには入れませんにゃ」


「どうしてですか?」


「それがハンターギルドと冒険者ギルドの決まりですからにゃ。どちらか一方が死にそうになってる、あるいは全滅しかけているとき、あるいは救援を求められたときにしか手出しはしない、そういうルールがあるのですにゃ。……まあ、新人未満のGランクが教えてもらっているとは思いませんがにゃ」


「そういえば、ハンターギルドにせよ、冒険者ギルドにせよどういうランクわけになっているんだ?」


「ざっくりといってしまえば、Gランクが見習いで一定期間に本ランクに上がれなければ放逐ですにゃ。Fランク以上が正式会員になりますが、こちらも決まった期間内に活動実績がないと降格ないし剥奪になりますにゃ」


「そうなんですね。さすが実力社会というか……」


「ちなみにハンターギルドは、前回納品から3年以内に次の納品が条件ですにゃ」


「……緩いんだな、ハンターギルド」


「……まあ、日帰りでいけるところもあれば片道半年以上かかる狩り場もありますからにゃぁ。それくらいの期間を持たせないとどうしようもないですにゃ」


「なるほどねぇ」


「ちなみに、吾輩たちCランク以上の場合は期限が5年以内になりますのにゃ」


「大物狙いが本当にできそうだ」

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