22.ギルドマスターとの語らい
遅くなりました。
本日2話目でございます。
(寝坊した)
明日こそは1話のはず……!!(いま確認した)
**********
「入りますぞ、マスター殿」
「ああ、かまわんよ」
部屋の中にいるヒトから確認を取り、入室する。
室内にいたのは彼女、部屋の主であるギルドマスター『シーブ』のみ。
これだけであってもなかなかの気迫を感じるのだから、このヒトは苦手なのである。
「まずは、赤の明星の方々の出迎えご苦労。……まさか、一日で行って帰ってくるとは思わなかったが」
「宿の手配でも追いつきませんでしたかな?」
「それこそまさか。きちんと男女別で部屋を用意させているよ」
「それならば結構。いやはや、今回の赤の明星も一癖も二癖もある人材のようですな」
「ほう、なにかしゃべったのかね?」
「詳しくは聞いておりませんが、魔黒の大森林のネームドモンスターを一匹葬り去っている可能性がありますぞ」
「……それは重大事案なのでは?」
「まだそれを聞き出せるほど信頼関係を築けていません故。手探りの状態ですなぁ」
「そうか。それで、彼らはどのようにして生き延びていたのだ?」
「死道に一週間から十日ほどいたようですな。そこで魔物相手に経験を積んだようなのですが……」
「なにかおかしな点でも?」
「吾輩が【簡易鑑定】のスキルを持っているのはご存じですかな?」
「もちろんだ。それがなにか?」
「いえ……合流したときに確認したのですが、全員レベル20にしかなっていなかったのであるよ。同じ敵を倒して同じレベルになることはありえると思うのですが、レベル20は低すぎるのですぞ」
「そうね。レベル20といえば灰色の森入り口付近の安全レベル。死道ともなると、30から50はほしいところよね」
「と、いいますか、勝手にそれくらいまでは上がるはずですぞ。赤の明星はレベルアップも早いはずですし」
「それもそうよね。ということは、なにかを隠している……?」
「そうなるのでありましょうな。なにを隠しているかはこの先聞いていくつもりであるのですが……」
「それは『誓約紙』も使って?」
誓約紙とは、なにか物事を取り決める際に取り交わされる合意内容を書いた魔法紙である。
この誓約内容を破ると、破った内容によりペナルティが科され最悪死んでしまうように設定されておる。
恐ろしいシステムであるが、これもまた赤の明星が作り上げたシステムである。
「誓約紙を使わないわけにいかないでしょうな。彼らが隠している秘密事項は相当重そうである」
「あら、どうしてそう判断するの?」
「まずは身なりであるな。赤の明星は一般的に美男美女と呼ばれるものであるが、保護された時点では大抵服や顔が泥まみれ、髪もボサボサなのが通例である」
「ええそうね。……まさか、今回の赤の明星は違うの?」
「汚れがないのは『生活魔法』のクリーンで説明がつくのである。仲間のひとりがシャーマンであるからして。ただ、髪の毛がしっとりしているのはおかしいのである。そこになにか秘密があると思われるのであるよ」
「……見た目って大事よね。意外なところから情報が漏れるんだから」
「その辺は隠しようがなかったので仕方がなくもあろう。さて、彼らに対する今後の対応だが……」
「基本予定に変更はないわ。今日のところは宿に泊まってもらい、明日から首都のほうに向かってちょうだい。あなたの『足』なら三日か四日でつくでしょう」
「であるなぁ。それが最速であるし、ハンターギルドへの紹介も吾輩が行ったことになっている。ここで見捨てる選択肢はないのであるよ」
「じゃあ、直近の予定はそれで決定ね。そのあとは、このままハンターギルドに所属してもらいたいところだけど……」
「そればかりは本人たちの意向も踏まえてであるな。女子二名は冒険者ギルドにも興味があるようであるし」
「……女性のほうが?」
「女性のほうがである」
吾輩としてもこういう場合、男性のほうが冒険者ギルドに憧れるものと相場が決まっているものと思っていたのであるが。
ハンターギルドでは基本的に、そのハンターパーティが狩れないような依頼は回さないのである。
なので、一攫千金を狙ったクエストは受けることができず、地道に稼ぐしかできないのであるからなぁ。
そこについてもフート殿とは話しておくべきであるな。
彼の場合、「面倒だからハンターギルドのほうがいい」と言いそうであるが。
「……なんだか変わり者の赤の明星ねぇ」
「変わり者なのは認めるのであるよ」
「そう。……ああ、そうそう。国内に落ちたもう一組の赤の明星について情報がまわってきたわ」
「ほほう。それは興味があるな」
「隠すつもりはないわ。落ちたのは南方領の方、四人組、男三人に女ひとり、南方領の貴族が保護した」
「……それは面倒な火種になりかねないのであるな」
「そうねぇ。でも、あっちも『保護』されてしまっている以上、うかつに手出しはできないし」
「追加情報はないのであるか?」
「未確定情報だけど。男のひとりが【聖剣召喚】とか言うスキルを使ったらしいわ。見事に山を真っ二つにしたって」
「それはまた……話半分、話の方が半分くさい話である」
「そうね。要注意に越したことはないわ。せいぜい、王族貴族の派閥争いに巻き込まれないようにしたいところね」
「そうですにゃぁ……」
「あら、リオンの猫語、久しぶりに聞いたわね」
「頭の痛くなる問題が多くて気が抜けたにゃあ……」
「本当よね。これ、本登録するときに大問題になるんじゃないかしら」
「吾輩、Bランクハンターであるが、それを抜かれると師匠としての威厳がにゃぁ……」
「そこまではいかないんじゃない? よくてD止まりでしょ」
「だといいけどにゃあ……」
そのとき、だったのである。
一階から受付嬢の奇声が響いてきたのは。
「……ちょっと待って!? 三人ともアイテムボックス持ち!?」
「……早速、問題発生よリオンちゃん?」
「今行くにゃ……」
ああ、もう少し気が抜けたままでいたかったのにゃ……。
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