17.目指せ森からの脱出
「よし、これで準備万端ね」
アヤネが盾の持ち具合を確認して問題ないことを確認している。
俺も新しい装備を身につけて、軽く魔力を集めてみたりしている。
「ああ、これ以上はまたソウルを稼いでから考えるとしよう」
「オッケー。ミキも大丈夫?」
「はい、私も大丈夫です」
「よしよし。……そういえば、二人って【HP上昇】とか【MP上昇】のような直接ステータスが上がるスキルって取ってるの?」
初めて聞くスキルだ。
そんなスキルもあったんだな。
「私は取ってないです。フートさんは?」
「俺はいま初めて知った」
「覚えておくと便利かもよ。HPはともかくMPは上げておくと便利だし」
「確かに。MPは足りなかったら魔法の発動も失敗するしな」
「ちなみに、フートさんっていまのMPいくらなんですか?」
「俺か? いまは……253だな。極大魔法を使うと考えれば心許ないな」
「じゃあ、ステータス上昇のスキルも覚えなくちゃね」
「だなぁ」
新しいスキルの情報も手に入り、今後の目標もしっかり定まった。
とはいえ、最大の目的が森からの脱出なのは変わらないのだけど。
「それじゃ、今日の探索に向かうわよ。森の出口をいい加減見つけたいしね」
「……黒い森の魔物怖いです」
「気をつければそうそう遭遇しないさ。なあ」
「「ウォフ!」」
「さて、いきましょう」
ついに魔物のいる領域へと足を踏み入れる。
「ふぅ、今日も魔物の襲撃が多いわね」
「まあ、灰色の森からの襲撃だからソウル的においしいのだけど」
「ドロップ品もね。結構貯まってきたんじゃない?」
「ああ、ちょっと待って……魔石の種類によっては百個超えたな」
「百個……それだけ襲われているんですよね」
「でも、こうしてほぼ無傷で乗り切れるってことは私たちが強くなったってことよ」
「ですね……でも、アイテムボックスの容量は大丈夫ですか?」
「あー……そろそろ厳しいかな、いろいろ突っ込んでるから。整理するべきか。スキルレベルを上げるべきか」
「スキルレベルを上げたら? 私たちも必要なスキルを覚えてからなら、多少なら持てるようにスキルを覚えるようにするから」
「それまではお願いしますね。フートさん」
「まあ、了解だ」
魔物のドロップ品を集め終わったら、いい時間なのでお昼にすることになった。
まずはハウスを出してから、レッサーフェンリルたちにいくつか魔法を食べさせて満足させておく。
こいつら、朝はせっつかないけど、昼と夜は食欲旺盛だからなぁ。
レッサーフェンリルたちの食事が終わったらハウスに入って昼飯ができるのを待つことに。
最近はミキがキッチンに立つことが多くなって、俺やアヤネは楽させてもらっている。
……味付けがワンパターンなのは大目に見て。
昼食を食べ終わったら再び森の中を進むことになる。
相変わらず灰色の森からの襲撃が多いが、すべて一蹴させてもらっている。
全員の攻撃力が上がっているし、テラとゼファーという攻撃要員も増えた。
そんな状況なので、灰色の森は危険度がかなり減っていた。
代わりに黒の森の危険度が増した。
ときどき、黒の森のほうで危機察知に引っかかるときが出てきた。
そんなときは、灰色の森に身を隠してやり過ごすことにしている。
黒の森に魔物がいるときは灰色の森も静かになるから。
一度だけだが黒の森から魔物が黒の森から顔を出したことが出てきた。
五つの目を持つ蛇だったが、その大きさは太さが2メートル以上、長さは10メートル以上はありそうだった。
魔力だけで考えれば、雷の極大魔法が二度成功すれば討伐可能だろうけど、そのための被害も尋常じゃない可能性がある。
ソウルは惜しいが無理してまで手に入れるものじゃないし。
なにより、ミキの顔色がすぐれなかったから。
黒の森に生息している魔物とすれ違ったのはその一回のみだった。
それ以外の旅路は順調に進み、数日後にはアヤネとミキも神器とアイテムボックスレベル3を覚えた。
俺のほうはアイテムボックスをレベル7まで上げたけどね。
そして、歩き進むことしばらく。
灰色の森の中から戦闘音が聞こえてきた。
「こんなところで戦闘なんて……暇なのかな?」
「きっとあれよ! 冒険者とかが素材を求めて来ているのよ!」
「フートさんもアヤネさんも、そんなことを言ってないで助けないと……」
「いや、その必要はなさそうだぞ」
「そうね。戦闘音はもう止んだわ」
そして、魔物を倒してきたらしき人物が現れたのだが……。
「「「猫?」」」
「吾輩は猫ではない! ケットシーである!!」
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