第24話 嘘でしょ ACT 4
久々に二人でこの店の焼き肉を堪能した。
本当にこうしていると『俺達別れたんだよな』と言うのが、偽りの事実の様に思えてくる。
「私達、より戻そうか」そう、香から言われた言葉がいまだに耳に残っている。
実際、俺は香の事を本当に、俺のこれからの人生を賭けてもいいと思うほど愛していた。……だから、結婚という意思を固めたんだろう。きっとそうなんだと思う。
でも、香は俺の持つ想いとは違っていた。
「雄太の事は好きだよ。でも私は結婚までは考えていない」
その一言が俺には大きな意味をなしていた。
「なぁ香」
「なぁに雄太」香はニコッと屈託のない笑顔で俺の顔を見つめる。
「お前、あの時、俺の事は好きだと言っていくれたのに、その先には進めないって言って言ったよな」
「そうねぇ、そう言ったのかしら」
「ああ、あの関係のままが、お前はいいと言っていた」
「うん、そうだよ。結婚とかは私はまだ時期早々だから」
「時期早々ったて俺たちの年齢考えたら、もう……」
「う――――ん。結婚って年齢でするものなの? 私はさぁ今は仕事が楽しい。結婚して家庭に浸からなくとも、家事に追われたりして、このテンポが崩れるのが嫌なだけよ」
「家事に追われるって、確かにそう言うのはついてくるかもしれないけど、俺と一緒にいることが嫌な訳じゃなかったんだ」
「あははは、だからさぁ。私は今でも雄太の事は好きなんだよ。でもあなたは結婚という事に先走り過ぎていた。それが私には重荷に感じちゃったんだよね。このままずるずる行ったら、お互い本当の破局を迎えるんじゃないってね。本当は私はその破局を回避したかった」
「ちょっと待て、それじゃ本当は別れる気はなかったて言う事なのか?」
「さ、それはどうでしょう。でもね、こうしてあなたと距離を置くことで見えてきたこともあるし、私の考えも少し変わって来た。でもあの時のあなたのままだったら、無理だったのは事実だよ」
「ようは結婚という事に、こだわり過ぎていたという事なのか」
「うんうん、分かって来たじゃない。結婚はさぁ多分『あ、今なんだ』って思う時が来た時が、その時期なんだと思う」
「それって何時頃来そうなんだよ」
「分かんないよぉ、そんなの」
ったく、自由気ままだな。自由気ままかぁ……何となく、美愛が自分の居場所を探しながら、自由を求めていたんだということに似ているのかなぁ。
いいや、多分根本から気質が違う。
でも二人とも一つ言えているのは、型枠には嵌まりたくないって言う事かもしれないな。
「それはそうとさぁ、雄太引っ越したんだってぇ」
「あ、ああ、そうなんだ」
「どうしちゃったのよ。あそこもそんなに悪いとこじゃなかったのに」
いやいや、言えねぇだろ。お前と一緒に暮らすために借りたところなんだって。
「いや、別に飽きただけだ」
「ふぅ――――ん! そうなんだぁ。飽きたんだ」
オイオイ、香の奴酔って来たのか。目が座って来たぞ。
こうなると絡むんだよなぁ。
「ねぇ、私と別れて本当は雄太、よかったと思っているんでしょ」
「はぁ? オイオイ、そんなことねぇだろ。俺がどれだけショックを受けたか分かんねぇだろ」
「ふぅ――――ん。そうなんだぁショックだったんだぁ」
あ、やばぁ、この展開は香の奴、相当腹ん中に溜め込んでいるな。
香は店員を呼んで「済みませぇ――ン。日本酒冷でくださぁい!」おとと、こりゃマジだぁ。此奴が日本酒を頼む時は……荒れる!!
「ま、待て。明日も仕事なんだろ今日は日本酒はやめとけ!」
「いいじゃない私は今、日本酒が飲みたいのぉ!」
ドンと、香の前に置かれた日本酒。皿の上に桝に入ったコップに、並々と注がれた酒をグイッと一口喉に流した。
んーその様は可憐とは言えねぇが、男の俺でもたまに惚れ惚れする時がある。彼女が日本酒を口にする姿は嫌いではないが……。
「あのさ、雄太」
酒で威勢を付けたかの様に、香は俺の顔を間正面から見つめ。
「私に何か隠し事してない?」
「隠し事って?」
何で今のお前に俺は隠し事を……し、しているんだけど。
「ま、今は私達事実上付き合っていないんだから、ばらしちゃいなよ。良くないよぉ。こそこそ裏で如何わしいことしてると」
「如何わしいことってなんだよ」
「あら、しらを切る気なんだぁ。別にいいんだけど。でもさぁ、私と結婚の事考えていた割には、身の転換が早いんだって思ってね。ほら言ったでしょ。私の気持ちも少し変化したって」
「そ、そうだったか……。でも俺は何もしてねぇぞ!」
「ねぇ、訊いた? 私たちが別れた理由が広まっていること」
「ああ今日、お前が俺を呼び止めた後、山岡から訊いたよ。俺が裏で女作ってその縺れで別れたって言うのをな。まったく根も葉もない噂だよ」
「ふぅ―ン。ま、でもさ、私があなたに別れ話をするまでは、雄太は私一筋だったという事は信じてあげるよ。その気持ちは十分に私は受け止めていたんだから」
「そ、そうか。当たり前だろ、俺が浮気なんかするか。結婚を求めた、お前がいたんだから」
「だよねぇ。でもさぁ、あの身の振り方はないと思うんだけどなぁ」
「だから何だよ。確かにお前と別れてから、俺は荒れてた時がったのは否定はしねぇけど」
「うんうん、訊いてたよ。熱まで上げちゃったんだってねぇ」ニマぁ―と微笑しながら香は言う。だけど此奴の目はマジだ。
「雄太さぁ、あなた何時からロリコン趣味に走ったのぉ?」
「はぁ? ロリコンって……。どういう意味なんだよ」
「まだ白状しないの?」
私知ってるんだけどあなた達の秘密……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます