ショートショート集
影沼いど👁
豚に真珠、あるいは死人にブーケ
委員会の会議を終えて家に帰ると、何故か部屋に同級生がいた。もしも私が主人公で彼女が幼馴染だったりしたらありふれた風景なのだろうけれど、私も彼女もれっきとした女子高生で、ついでに一年半未満の付き合いしかない。
「おかえりー。あ、どうぞおかまいなくー」
「いやおかえりじゃなくて。連絡くらいしたら?」
言いながら、思いっきり寝転んで雑誌を広げる山之辺の脇腹を軽く足でつついてやろうとした。
そう。あくまで軽く。何か妙な奇声をあげるだろうな、と思いながら。
「えっ」
結果として私の目論見は完全に失敗した。奇声をあげるどころか彼女は気付きもしなかった。その上、私のつま先には何の感触もなかった。貫通していた。彼女の体越しに、私の靴下が見えてしまったのだ。
「あっ、ごめん。うち、さっき死んじゃってー」
ああ霊かなるほどだったら物理的アプローチなんて出来やしない。え、霊?
「このまま帰るのもなーって感じだったしー、
来ちゃったって。
いやいや。
「え、山之辺死んだの?」
「死んだよー。あの足どけて。なんかお腹にサッカーボール入ってる気分」
「あ、うん、ごめん」
「それとよかったらページめくって欲しい。さすがに飽きたよこのページ」
「ああ……そっか、開きっぱなしで出ていった気がする」
とりあえずよくある高収入求人のページを開いてあげると、山之辺は私と雑誌を何度も見比べた後ようやく体を起こして姿勢を正した。
「あ、お茶くらいいれてこようか?」
「いえいえおかまいなくー」
少し透けてて触れない以外、山之辺に変わったところはなかった。だからこそ、お茶とお茶菓子を用意してから間抜けな質問をすることになってしまう。
「ところで飲めるの?」
「飲めなさそうだね」
山之辺はティーカップの中で手をひらひらと振ってみせた。その度に小さな水面が静かに揺れる。影響がないわけではないらしい。
「あ、でもなんていうんだろ、こう……味じゃないんだけど、気持ちみたいのは分かった。依野ちゃん雑にいれたなー」
「まあティーパックにポットのお湯だしね」
山野辺相手なら特に使う気もない。入学したての頃、席が近いというだけで話すようになった。長電話もしたけれど、学校外で会う程の関係ではなかった。趣味も休日の過ごし方も性格も重なり合うところが一つもなかったし、何よりお互い他にもっと近しい友人がいた。それだけの話。
「山之辺、他に行くとこなかったの?」
「いろいろ回ってきたよー、誰にも気付いてもらえなかったけど」
言いながら彼女は指先を紅茶に入れてかき混ぜた。その目はカップに向いているのに別のものを見ていた。今まで見たことのない山之辺だった。
「ここまではっきり見えるのは私も初めて」
つい数時間前まで同じ教室で授業を受けていたそのままの姿……というにはくつろぎすぎているけれど、生死に関わらず山之辺は実に山之辺だった。
「わーなんか変なキャラ作ってるーって思っててごめん」
「まあだいたいそう思うもんだから」
だから出来るだけ口にしないようにしている。高校になってからの友人では唯一山之辺だけが知っているのは、引かれたらそれはそれで別にいい相手だから、ということになるのだろう。
「っていうか依野ちゃん、動じなさすぎでしょ。幽霊だよー死んでるんだよー」
「なんか、山之辺は山之辺でさ」
なにそれーと山之辺は笑った。私もつられて笑う。話し手と聞き手、お互いに暇を潰し合うだけで、他の用事や友人がいればそっちに行く。手持ち無沙汰にシャーペンをノックして芯を戻すよりは楽しいと思える。
同窓会で会えば喋るだろうけど、連絡を取り合うこともなければ、どうしてるか考えもしない。
私と山之辺はそういう関係だった。
少なくとも、彼女が死ぬまで。
ひとしきり笑って、山之辺は宙に浮きながら「事故だったんだー」と言った。
「依野ちゃんに言ったっけ? 三枝くん好きなんだって」
「聞いたと思うよ。趣味悪いなって思った覚えあるし」
山之辺は黙って動かなければそれなりに見れる容姿をしている。胸はないが、少しだけ平均より背が高くて、細身。感情そのままストレートな豊かな表情だとか、大きな瞳だとかは羨ましく思っていた。胸はないけど。
「そこ議論するの時間の無駄だから何も言わないけど! いいじゃん三枝くん。優しいし、背も高いし」
「汗臭いゴリラだよ。声もうるさいし。前話しかけられた時ツバ飛んできて最悪だった」
「依野ちゃん容赦ないなあ」
「で、そのゴリラに告白して振られでもしたの?」
「まーその通りだけど。ゴリラじゃないよゴリラじゃー。あれでも読書したりするらしいよ?」
「嘘」
「……夜眠れない時にって言ってたけどね。小3の時に買ってもらった本未だに読破してないって」
「いや、え、あのゴリラが山之辺振ったの? 農奴が叙勲されるようなもんだよ?」
「依野ちゃんの中で三枝くんどんだけ立場低いの。一年生の頃からレギュラー取ってばりばり試合で活躍してる野球部の四番だよ?」
「でも臭いじゃない」
「あれがいいんだよ!」
山之辺は匂いフェチらしい。私は清潔さの方が大事だ。両者譲らない議論を三十分は続けたところで、部屋の扉が遠慮がちにノックされた。
「……尚? 友達でも来てるの?」
「あーちょっと電話してただけー」
どうせ見えないのに、山之辺がすっと背筋を正した。
扉を少しだけ開けて、遠慮がちに母が顔を見せた。いつもより辛気臭い表情で。
「何か用なんでしょ」
「そう……あのね。学校から電話がかかってきて」
それだけ聞いてなるほどそういうことかと私は山之辺を見た。これからお通夜が開かれるのだろう。そう思って母を改めて見直すとその手にはやはり香典袋が用意されている。
「……クラスのお友達の子が亡くなったって」
「そうなんだ」
焦れったい。私はもう知っている。それを勿体ぶられても苛立つだけだ。離婚の時もそうだった。母から聞いたのは家から父親の荷物がなくなってからだった。
「分かった、お通夜あるんだよね。行くからそれちょうだい」
この人の速度に合わせるのは時間の無駄。だから私は立ち上がって、母の手からそれを取り上げる。
「場所と時間。メモってあるならそのメモ」
私が進めれば母は緩慢でも動く。メモを受け取った私は準備があるからと扉を閉めた。
「依野ちゃんおっかねー」
「幽霊よりはマシだよ」
こんなところを誰かに見られるなんて想定外だ。わざわざ誰も呼ばなかったのに。
「いやーうちが死んじゃったせいでなんか喧嘩させちゃってごめんね?」
「いつも通りだから。別に山之辺の生死なんて関係ないよ」
きっと山之辺は家族仲は良好なのだろうと思った。納得しきれない顔でうなり続けていたし、何より彼女は私と真逆の存在なのだから。
お通夜の会場に向かう道すがら、私はコンビニで肉まんを買った。そろそろ手袋を出そうと思った。
「いいなー依野ちゃん。私の分ー」
「食べれないでしょ」
それにコンビニ袋提げてお通夜なんて行ったら怒られそうだ。もう故人と顔合わせて話してるのに、行く意味も見いだせない。
「っていうか山之辺はここにいていいの?」
「うーんいやーまー言いたいことは分かるよ」
私は会って話している。山之辺の幽霊と。それはつまり、会場には山之辺の死体だけしかないということだ。いくら悲しんでも悔やんでも、ただ温度を失った肉の塊しか、そこにはない。
「でもさあ、もう私から何もしてあげられないのにさ、そんなの見せられても困るよ」
「それもそうだね」
「あっさりしてるなー依野ちゃんは。責められるかなって思ったのに」
「死んでまで義務とか責任もないでしょ」
私は出て行く前の父との会話を思い出していた。もう私に対して何もする気のない父の謝罪を。自分は謝ったという事実を押し付けるだけのただの自己満足。あんなものなら無いほうがいい。
「ねえ、山之辺。行くのやめよっか」
だからふと思った。小さなポーチにいれてきた香典袋を開く。思ったよりは軍資金に出来そうだ。
「えっ、あの、依野ちゃん?」
「これで山之辺死んじゃって残念会でもしようよ」
山之辺はぽかんとしたまま数秒私を眺めて、ついにこらえきれずに大爆笑を始めた。宙に浮きながら、お腹を抱えて。まったく色気のないパンツがさらされていた。普段の私なら人目を気にして叩いてでも止めただろうけど、今の彼女は誰にも届かない。死んでてくれてよかった、なんて思うのはさすがに不謹慎すぎるだろうか。
一度家に戻った私は、出来る限り大人びた服に着替えた。化粧も髪型も普段とは変えた。その間ずっと山之辺に急かされ続けたが黙殺した。彼女のお通夜で生徒も教師も多くが出歩いている。余計な面倒に巻き込まれたくはない。
「まさか依野ちゃんがこんな提案するとはなー。真面目に見える子ほど、ってやつだ」
「山之辺がうちにいた時点で'いつも'じゃなくなってるから」
そのまま少し踏み外したままにする。たったそれだけのことなのだ。
携帯の電源を切ったのは家を出てすぐだった。クラスのSNSからの通知が五月蝿かったからだ。信じられないとかショックとか悲しいとか泣いちゃうとか、そんなテンプレートが飛び交う画面を見せたくなかった。
「いやーそんなもんでしょー。例えうちが死んだって明日は来るしテストだってあるしー。っていうか依野ちゃんはもっと悲しめよー友達でしょー友達だよね?」
「一応ね」
それなりの衝撃はある。ほとんど毎日会話していた相手だ。優先順位が低かっただけで、その時間に愛着がなかったと言えば嘘になる。例えるなら子供の頃から使っていた本屋さんが潰れてしまったようなものだ。残念に思いながら、すぐに代わりを見つける。
それを言うと山之辺は、
「冷めすぎでしょ依野ちゃん。うちなんか振られただけでこの世の終わりって思うのに」
「前方不注意でひかれて死んだの?」
「うち依野ちゃんと違って繊細だから! ショックで泣きもするし、いけると思ってた自分が恥ずかしくてダッシュもするし」
その時のことを思い出しているのか山之辺の瞳は潤んでいた。幽霊って泣けるんだ。
「死亡オチはさすがにやりすぎじゃないかな」
流れだけだとギャグみたいだ。実に馬鹿馬鹿しくて、情けなくて、山之辺らしい。周りが何にも見えなくなるくらいに三枝くんを好きだったのだ、この子は。
「振ったら事故って死んだって、一生トラウマなりそう」
「やーめーてーそういうこと言うのやーめーてー。絶対気にするよねあーもうどうしたら気にしないでくれるかなー」
山之辺は頭を抱えてその場でぐるぐると縦回転を始めた。なんか見たことある。あ、パソコンのイルカのやつだ。
「山之辺を消す方法」
「消そうとしないでよ! ひどいな依野ちゃん!」
あの電柱にめりこんだ陰気なモヤモヤと山之辺は相性が悪そうだし、話し手ではない山之辺なんて私からすればチョコのかかってない柿の種と一緒だ。存在価値がない。
「ところで、どこに向かってるの?」
「カラオケ」
されないといいな、年齢確認。
利用者、二名。それと部屋の番号が書かれた伝票をテーブルに置く。
「別に一人でよかったんじゃないの? うち、見えないわけだし」
「こういう時はそうするものなんだよ」
山之辺にはこのロマンは分からないだろう。それから私はウーロン茶と日本酒の熱燗と大盛りのポテトを注文した。すいているのか届くのはすぐだった。
「わーお依野ちゃんしぶい」
「お供えだよ、お供えってお酒でするものでしょ」
私の頭に浮かんでいたのは、よくある映画のワンシーンだった。うまいか、なんて言いながら墓にかけるやつだ。
「うーん、そういうのならうち、午後ティーがいいな」
「アリがたかるからやめといた方がいいよ。アルコールで消毒する意味もあるんだよきっと」
「なーるほど! 依野ちゃんは頭いいなー!」
たぶん違うと思う。
「それで、なんでカラオケー?」
「山之辺でも楽しめるかなって」
私は山之辺の前にスイッチを入れたマイクを立ててやった。まあ幽霊の声なんて拾わないだろうけど、気分は大事だ。
「それに、人目もないしね」
わざわざ携帯を構えて電話しているフリをしなくてもいいし、時間も気にしなくていい。うってつけといってよかった。
「依野ちゃんと来るとは思わなかったなー。お互いに好きなの違いすぎるもんね」
「入れるだけ入れてくから好きなの歌いなよ。失恋ソングとかなんかいっぱい知ってるでしょどうせ」
「どうせって何さ! 名曲多いじゃん!! めっちゃ泣けるじゃん!」
「え……だって、フラれたら悲しいだろうけど。当たり前のこと言われても」
「当たり前なのがいいの! 自分だけが特別じゃないのがいいんだよ!」
そういうものらしい。正反対の彼女とは何を議論するのも時間の無駄だ。はいはいと流してリモコンに表示されていたランキングを上から順に予約した。
「うっわー依野ちゃん雑すぎる……歌えるけど」
「しばらく山之辺歌ってて。私、少し話し疲れたから」
「放置できるからか! 放置できるからカラオケにしたな!」
その後も何かごちゃごちゃと文句を言っていたが、歌詞が表示されるなり山之辺は歌い始めた。下手だった。マイクはやっぱり彼女の声を拾わなかった。気付いた彼女はさらに声を張り上げて、音程を外した。私はそれを、ソファーに横になって聞いていた。
「山之辺、なんでフラれたの?」
「好きな子がいるからって言われたー!」
やけくそのテンションで彼女は歌い続けた。ランキングの上位にはラブソングが多かった。
「依野ちゃんはー? 好きな人いないのー?」
「いないよ」
「今までずっと?」
頷く。自分が誰かにそういう気持ちになることも私は想像出来ない。あんな両親を見てしまったからなおのことなのかもしれない。夜遅くまで家族のために働いてくれる父が自慢だと語った母は浮気をしたし、お前のためだから頑張れるんだよと頭を撫でた父は私を母に押し付けて消えた。
「じゃー恋を知ってる分うちの勝ちだねー」
「死まで知ってるのはどうなの」
「それより依野ちゃんも歌ってよ。さすがにこんな連続で歌わされたら霊力尽きちゃう」
「別にいいよ」
ストローが音を立て始めたグラスを置く。一向に減らないポテトをつまむ。
「あ、霊力が尽きてもって意味。私は歌わないよ」
「依野ちゃんひどすぎる。故人は悼むものだよ?」
「このまま憑かれても困るよ」
「依野ちゃんに憑くなら三枝くんに憑くし」
「そうして。ふったら死んだ女の霊って、実に怨霊だけど」
「まーもーるーしー!」
叫んで再び山之辺はマイクに向かって声を張り上げた。千の風になった。きっと今頃、彼女の家族や親戚やクラスメイトや先生たちがお悔やみ申し上げているのだろう。
常識的に考えれば彼女を連れて行くべきだったのだろう。でも、私が連れてきたのはここだった。香典まで使い込むつもりで。
「依野ちゃん、当たり前のこと言っていい?」
「いいよ、なに?」
「うちさ」
山之辺は言葉を喉に詰まらせていた。私は待った。彼女は視線を幾度もさまよわせて、結局私より少し斜め下のソファーを見ながら口を開いた。
「死にたくなんて、なかったよ」
当たり前のことを、ようやく口にした。それがきっかけだったのか、彼女は泣いた。大声をあげて泣いた。こぼれた涙は宙でどこかへ消えていった。
「いっぱいやりたいことあるの! まだまだ友達とこんなふうに遊んでたい! 幸せなお嫁さんになって、依野ちゃんにブーケ投げたかった!」
思ってしまったのだ。その会場にいる誰もがやりきれない気持ちを抱えているのだろう。それは否定できるものではない。けれど、一番やりきれないのは山之辺自身だ。私と正反対の彼女なら、きっと彼らを気にして自分のために泣けないと思ったから。
「私も当たり前のこと言うね、山之辺」
私は冷めている。周囲に気を使って自分を押し殺すなんてこともない。したいようにするし、言いたいことは言う。彼女とは正反対だから。
「死人には何も出来ない。どうしようもなく運が悪かった。将来の夢とか幸せとか、そういうのが叶うことはもう絶対にない。生きてればいいこともあるかも知れないけど、死んだら何もない」
原因がどうだったって死ぬとはそういうことだ。私が見てしまったものたちも、そこにあるだけで何もしてくることはない。見てしまった私の気分が少し悪くなるだけ。慰めることもできないくらい、彼女にはもう何もない。
「山之辺」
私には視える。言葉を交わせる。
私と山之辺は友達だった。
「あんたは死んだんだ」
当たり前のことを、言った。
話せてしまったから。視えてしまったから。だから余計な寄り道をしてしまう。余分な口出しをしてしまう。
私と山之辺はただの話し相手で、他に用事があればそれを優先する。そういう友達だ。高校を卒業したあとは連絡も取らない。そういう関係だ。
このまま友達だとか、あるいは私が成仏させてやろうとかーーそういう関係では、ない。
泣き疲れて眠った彼女を眺めて、私はそんなことを考えていた。人が呼吸で胸をそうするように、彼女は宙で小さく浮き沈む。こぼれた涙の粒が弾けて消える。
私は一曲だけ歌うことにした。
山之辺を想って、なんてことは一切ない、ただ私が好きなだけの選曲。物悲しいメロディーが特徴的な古い海外のポップス。
山之辺とはいろんな話をしたけれど、記憶に残るような会話はほとんどしていない。話すことが目的な話題が九割、言いたいだけの話が一割。
山之辺は死んだ。私の退屈な時間が少しだけ増える。
歌い終わった時、山之辺は消えていた。
ここに長居する理由もなくて、私は会計を済ませて店を出た。結局一人分の料金しか支払わなかった。香典に手を付ける必要もなかった。外の空気は冷え切っていた。
満月の下を私は歩いた。もしも私が彼女と親しい友人だったのなら、何かを思い出して歩くものなのだろう。何もない私は途中の自販機で買ったココアでかじかむ指先を温めながらそこへ向かった。
会場についた時、一つ思い出したことがあった。話すようになったのは、席が近かったからだけではなかった。
「直」
呼ぶことのなかった彼女の名前を一度だけ口にして、私は受付に向かった。
後日談を少しだけ話そう。私は相変わらずだ。母との仲は少しだけマシになった。少なくとも山之辺に見せてしまったような態度はもう取っていない。
ゴリラが大人しくなっていたので、私は一つ噂を流した。子供をかばった、なんてありがちな嘘を付け加えた。動いてから考える山之辺らしい、なんて簡単に広まった。元気になったゴリラが告白して来たから、人類以外と付き合う気のない私は即座にお断りした。
月を跨ぐごとに山之辺がいないことが当たり前になっていく。私は本を持ち歩くようになって、ゴリラの告白を何度も断って、受験生になった。
私たちは生きている。過去のことは忘れていく。
私の苗字が変わったらまた来るよ、山之辺。忘れてなければね。
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