第18話 普通じゃない

「終わった絶対嫌われた」






「何が?」







社員食堂でそんな独り言をもらす私に、同僚であり親友の香織が怪訝そうな顔をして聞いてくる。








「お酒飲んで記憶飛んだ」








「端的すぎだって!もっと詳しく!」







「…実は、、」






香織には詩音のことを一切話していなかったので、私は一から全て事情を話した。








「あんたバカなの?」







私が話し終わってから香織は開口一番にそう言った。








「確かにいい年して泥酔して記憶飛ぶとか、、、」







「そうじゃなくて!!なんでそんな素性の知れない男と飲むの!?」







「素性知れないって、、でも私に優しくしてくれるし」








「優しくしてくれるんだったらなんでもいいわけ!?…しかも起きたらホテルの部屋って、、まさか昨日意識ない間に何かされたんじゃ、、?!」







「それはないよ!」







「どうして言い切れるの?顔も見せない相手を信用できるわけないじゃない」








「それは、、詩音は目が弱いから…」









「まさかそんなこと信じてるの?!」








「え?」






「はあ、、そんなのウソに決まってるじゃない」







「う、嘘って、、なんでそんな嘘を、、」







嘘だとかそんな事考えた事がなかった。。。









「決まってるじゃない。その男は










凶悪犯罪者ね」










「は、犯罪者?!まさか!あんなに優しい詩音に限ってそんな事、、、」









「優しいっていうけどさ、あんたその男の何を知ってるの?」







「っ!」








「たった3回しか会ってないのに、、、めぐが弱ってるところをその男につけこまれたんじゃないの?」









「ちがっ、、」










確かに顔も見たことないしきちんと会話をしたのだって2回だけだ。









出会いだって普通の出会い方ではなかった。









私たちは何もかもが普通ではなかった。







毎回黒ずくめの詩音の格好も、少し話しただけで連絡先交換した事も、こんなに詩音のことを信用しきっている事も何もかも。







だけど詩音のことをそんな目で見たくはなかった。









それはきっと、、、








「まあ、犯罪者じゃなかったとしてもきっとろくな男じゃないよ。これを機にもう会うのはやめなさい」





「………」





香織の言葉は正しかった。







何回会っても顔を見せない男と会うなんて誰が考えても危険だ。






誰かに言われるまでそんな事にも気付かなかったなんて。。。







私は詩音の何をそんなに信用してたんだろうか。






詩音の何にこんなにも強くーーー








???






強く、、何だというのだろうか








その答えが出せないままモヤモヤした気持ちを抱えながらも、私は徐々に詩音に連絡する事がなくなっていった。


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