第6話 救いの手
話の区切りがついた所でちょうど料理が来て、詩音がやっとマスクを外した。
けれどサングラスは依然としてつけたまま、オムライスを口に運び始める。
「…サングラス外さないの?」
「あー、、、」
詩音は少しだけ考える素振りを見せ
「…ちょっと目が弱くてさ、サングラスかけてないと目が光に刺激されて痛くなるんだよね」
と言いながら苦笑した。
「そ、そうなんだ、、何か変な事聞いてごめん」
「え」
詩音が驚いたような顔をしたと思ったらすぐに笑い出す。
「な、何で笑うの!?」
謝っただけなのに、、!
「あはは、何でもない」
「…悪いと思ってくれてるんだったらさ、今度は僕が質問してもいい?」
「なに?」
私は腑の落ちなさを感じながらも先を促した。
「昨日、泣いてた理由」
「…っ!」
「…聞いてもいい?」
…気付かれてたんだ、泣いてたこと、、
頭からつま先まで雨を全身に浴びていた私は顔ももちろんぐしゃで、泣いてる事なんて気付かれないと思ってたのに、、
思い出すだけで苦しい記憶、悲しみ。
少しの間だけ忘れていたあらゆる負の感情が再び私の中で渦巻く。
「…やっぱり初めて喋る奴なんかに聞かれたくないよね!ごめん」
俯いてしまった私に慌てて謝ってくる詩音。
確かに聞かれたくなかった。
詩音にも他の誰かにもその事は聞かれたくなかった。
けど、誰にも聞いてもらえず1人で毎日抱え込んでる方が辛いのではないか?
もしも誰かに話を聞いてもらえればこの心が少しは楽になるのではないか?
そんな希望も同時に浮かびあがった。
昨日、私が泣いてたことを知ってるのは詩音だけ。
私から救いの手を求めたのではなくて詩音の方から私に救いの手を差し出してくれた。
昨日の事を知っている詩音だけが私に救いの手を差し伸べてくれる。
それを拒む理由なんて私にはない。
私は決心して詩音の顔を正面から見据える。
「…浮気」
「え?」
そして誰にも言えてなかった、昨日あったできごとを話し始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます