第231話 研修へ出発!

 いつもの早朝より早い時間に、おれは陽太ママの車で移動していた。

 後部座席に陽太&小猫、助手席におれ。何かがおかしかったが二人とも無言で乗り込んで、そのまま寝たので文句も言えない。

 そしておれは気をつかう陽太ママの横で寝るに寝られず、さりとて仲良くしゃべりもできずに、今日の予定を復習中。


 保育園の朝は早い。

 ウグイスから届いた次の研修は、前回お邪魔したみらい保育園で行う、働くバージョンらしい。

 前回はお手伝いだったけど、今回は働く。スケジュールを見ても前回と全く同じだったから、そこまで大変じゃなさそうだけど、朝がめっちゃ早かった。


 着いたら即 ①窓を開ける ②洗濯 ③開始準備 などなどを実行する。

 担当は最初の時と同じで、おれは一歳児の担当。もちろん咲良やゆめさん、源太たちとも一緒だ。


 おれ達は今度の研修のために、個人情報保護の誓約書や、簡易保険に入ってる。

 先生は同じらしいけど、ハルコ先生はお休みなんだって。

 頼りになる先生が少ないって、不安しかないなあ。


「滝夜くん」


 ふいに名前を呼ばれてどきっとする。


「はい」

「うちに来てくれてありがとう」


 突然そんなこと言われて、まともに返事できる訳もないんだけど。


「そんな、ぜんぜん……」

「あの子があんなに楽しそうにしてて、初めて親として嬉しい気持ちになれた。それに、父のことも。君が来てから、母も毎日本当に嬉しそうで。良く来てくれたね」


 マジで何て返せばいいのか分からないやつだ。おれがこないだ陽太にお礼を言った気持ちそのままに、真っ直ぐで真摯な思いが伝わってくる。


「良かったと、おれも本当に思ってます。お礼が言いたいのはおれの方ですよ」

「そう言ってくれると嬉しい。この先も、何でもフォローするから、小さなことでも言って下さい」

「いや、今でも充分にしてもらってるので……」

「それなら良かった。まあ、父でも母でも、陽太でもいいので、遠慮なく言って欲しい」

「ありがとうございます」


 すごい感謝されて、こっちが恐縮する。

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