第228話 知り尽くして

「嬉しいけど、べつに滝夜のためじゃないからね?」

「うん。それでも言いたかったんだ」

「僕が来て欲しかったの」

「うん」


 ツンデレかよ。

 でも、きっかけはどうあれ、おれは抱えきれないほどのものを陽太にもらったと思うんだ。


「はあー。ごはん食べよ」

「うん」


 ため息つかれても、なんか笑っちゃうな。


     +


「え? 見てないの?」

「見たけどやらんぞ」

「えええ~?!」


 昨日見た、適性を調べるやつ、一緒にやり合いっこしようと思って言ったら、二人とも興味ないらしい。


「なんで~? 占いみたいで面白いじゃん」

「就職しないから」

「お、おう」


 シンプルなお答えだった。

 そういえばこの二人って、家事やらない子ども要らないで、さらに就職もしないんだ。

 陽太継がないって言ってたもんな。

 いまさらだけど、特殊だよな~。


「小猫もなんだ」

「そうじゃな。専業主婦じゃ」


 脳内の専業主婦という単語と、ニャースがエプロンして振り向いてる映像がどうしても結びつかないんだぜ。


「まあヒマじゃし付き合ってやるが?」

「やったあ! ありがと」

「面白そうだから僕も見たい」

「見学かよ」


 さて、お片付けも済んだ食堂でリンクを踏んでみると、『こんにちは』と現れたのは輝夜。


「あれ?」

『あれ? じゃありませんよ。GATEの診断サイトです。滝夜さんは4月からのデータがありますから、足りないところだけ実施しますね』


 そんな感じなんだ。

 確かに、輝夜はこの4カ月ちょっとのおれを、かなり余すところなく知ってる。

 試合中ですら一緒だし、寝る時だって外すの忘れることがあるくらいだ。

 そりゃデータあるだろう。たぶん、大多数の14歳はウグイスに丸ごと把握されてる。


 でも、それがなんだって思う。

 おれはもっともっと輝夜に知って欲しい。おれっていう奴がどういうことを考え、しゃべって、何が好きなのか、誰と出会ったのか、何処へ行ったのか、どんな風に笑っていたのか、まるでおれのコピーを抱えるみたいに知っていて欲しい。


 それは何だろう。

 便利だからとかじゃないことは確かなことだ。

 親友とか幼馴染とか────いや、たぶん母親に対する気持ち。

 これは危ういことなのか、今はまだ分からないけど。

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