第106話 僕んちにおいでよ
「ハジメの場合と滝夜じゃ、拡散エリアが違うだろ。参考になんねえよ」
「確かに、ハジメのフォロワーは中学生が大半だもんね」
「大人なんてちゃんと動画追ってるやつ、いないだろ」
「そうだね」
人気者に相談というなら咲良にだって対策は聞けるはずだもんな。
というか、おれに害がありそうなのは重症な咲良のファンが原因である可能性が高い訳だから、聞いとくべきだとも言う。
と思ったら聞いた人がいた。
「今、咲良もいないよね? 咲良のファン層ってどれくらいなの?」
『老若男女……と言いたいところですが、中年層の男性にはファンが少ないようですね』
「おじさんは朝ドラ見ないからな」
「おじさんはネットドラマも見ない」
そっか。じゃあファンで男なのはおれ達みたいな学生が多いってことか。
「想定加害者は男? 女?」
『予断はお勧めしません。単純に割合でなら男性ということになりますけど』
想定加害者……
おれ、なに加害されるんだろ……
「受講生なら行動範囲はウグイスが把握してるはずだろう?」
「うん」
「それ以外の学生かなあ」
手詰まり感。
そこへ、のんびりした声がふんわりと。「あのさ~」
「滝夜僕んとこ来ない?」
「僕んとこ?」
「そう。僕んとこ」
「お前誰?」
「山田陽太」
「誰???」
全員の脳内がハテナで埋め尽くされる前に、怪しい声がヒントを教えてくれた。
「はるたん、知名度低いんじゃな」
「意外とそうみたいだねえ」
「「「「妖怪♂か!」」」」
ああ、納得。
そうか、あいつか。そんな名前だったのか。
「滝夜ん家やガッコが狙われて、へんなやつウロウロしてるから嫌だってことでしょ? だから、縁もゆかりもない僕んち来なよ」
「おまえん家どこ?」
「う~ん、滝夜ん家から言うと、ほぼ反対側だね」
「山の方?」
「そう。有名温泉の34代目なんじゃ~」
「「お坊ちゃまだ!」」
「納得~」
気のせいか「あわあわあわあわ……」って声が聞こえる。誰だ。
「部活はできないけど、刀のおっしょさんならいるよ?」
「刀?」
「うん、居合い」
まさかの真剣!!
「僕のじいちゃんだから遠慮はいらないし」
「ありがとう……」
まさか妖怪♂にマジ感謝することになるとは。
「あ、はい! はい! 俺も行きたい!」
「え? マコだって行きたいしゅ!」
「え、行きたい人は行けるの??」
「行きたい人~」
「「「は~い」」」
動揺のあまり語尾がおかしくなってるヤツいるし。
「わ~、なんか楽しいね~」
「そうじゃのう」
「良かったね、小猫ちゃん」
「うむうむ」
なんだか合宿のノリになってきたんだけど。
『あの、余計なことかもしれませんが、大勢で押しかけるのはシーズン的にご迷惑ではないでしょうか』
輝夜の言うことは最もだった。
しかもおれ達、親にも了解得ずに決めちゃってる。
『一度陽太さんに持ち帰って頂いて、日程など決めるのが良いかと思われます』
「あー」
「だよね~」
「私もお母さんに聞かなくっちゃ」
『ここにいらっしゃらない人にも聞いてみるのがいいと思います』
「じゃあ、ママにオッケー貰ったら聞いてくれる?」
『承りました』
なんか、楽しい夏のイベントが決まりそうで、おらワクワクしてきたぞ。
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