第80話 ねむねむごはん

 この後はうさ衛門先生によると、お昼ごはん→お昼寝の流れ。

 おれ達は本当なら、最初に集まった部屋で弁当を食べるはずだけど、子どものごはんやお昼寝を見るのは勉強になるので、弁当はちょっとおあずけ。


 大きな机の周りに、小さなイスを並べる。

 子どもたちはぐずぐず言ったりしながらおててを洗ったり、エプロンを用意したりしてバタバタしつつ、なんとか席につく。


 コップ以外はエプロンを机の上に広げて、その上にごはんの皿を並べるスタイル。

 食べこぼしをなるべく防ぐ為だ。

 ごはんの前にはお歌。

 みんなで空耳アワー再びの、可愛いお歌を歌って、「いた~だきます!」


 スプーンとかは自分たちで持ってくるようで、カラフルなキャラクターのをぐーで握って、器用にお口へ運ぶ。

 今日のごはんは、野菜スープ、ポテトサラダ、肉だんご、ごはん。

 すっごい少なくて、ちょっとずつだけど、美味しそう!

 腹減ったな……


 アジマルくんも、みんなもだけど、ごはんの一部はエプロンが食べてるな!

 お口からスプーンからお皿からこぼれた食べ物が、余すところなくエプロンにキャッチされている。


 てか、これエプロンなかったらどうなんだ。

 床はごはんだらけになってる未来しか見えない……

 そしてお口のまわりは、すごい有様!

 マンガみたいに米つぶやらスープの汁やら、あらあら大変!


 でもごはんを食べる子どもたちは、遊ぶときと同じで真剣。

 美味しそうに、楽しく食べてる。


 ……カクン


 あれ、ミミカちゃんのおめめが白目……

 ただでさえ細い首で支えてる丸い頭が、重そうにカクンカクン揺れている。


「もしかして眠い?」

「眠いね」

「わー、眠そう……」

「少しおなかに入ると、眠くなっちゃうのよね。さあ、頑張って食べちゃおう。はい、ミミカちゃん」


 食べるときにちゃんと食べないと、おなかすいちゃうよ!

 あー、でも眠そう!


「ミミカちゃん、後少しだよ~」

「もぐもぐしよう」

「美味しいね~」


 たくさん声をかけて、女子ーズ頑張って食べさせる。

 よし、頑張れ! と思って見てる隙に、男の子にもおめめ半開きの子どもが!

 慌てておんなじように応援する。

 あとちょっと! あとちょっとなんだよ!


「よく頑張って食べたね~」


 まだ残ってる気もするけど、うん、食べた食べた。食べました!


「手を合わせましょう」


 パン


「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした!」


 お皿を下げる人、下敷きのエプロンからこぼさないように、首から外してお口を拭く人、手分けする。


 エプロンを各自の袋にしまい、歯磨きの用意。

 自分でもなんとなくできる子もいるけど、ほぼやってあげないといけないから、先生の見ながらひざに乗せて磨いてあげるらしい。


「アジマルくんおいで~」


 呼ぶと逃げる。お~い!

 照れてんのか、すごいテンションで逃げるけど、ほかの子もいるし危ない。

 アキコ先生がキャッチして、渡してくれた。

 ふぅ


 さて、おひざに頭を載せて、「お口開けて~」と言うと、パカッと開けてくれる。


 口、ちっちぇ~!

 歯、少ししかない~!

 生えかけの歯が変なとこにある~

 ちっさい歯、ちっさい歯ブラシでそっと磨く。


「ハイ、いいよ、みんなうがいに行って~」


 手洗い場へ向かい、お茶を入れてたコップでうがい。

 ぶくぶくとか、ちゃんとうがいできてはいないけど、歯磨き粉使ってる訳じゃないからまあいいのか。


 机や椅子を片付ける。

 ごはんの散らばる床を簡単に掃除して、子どもたちのおむつ替え。

 おふとんを出して並べ、カーテンを閉め、静かにおやすみの音楽を流す。

 自分のおふとんへ飛んで行き、座ったり寝転んだり。


 眠い子はすぐに、眠くない子はこっち見て笑ったり、うろうろしたり。

 うさ衛門先生によると、眠くない子は静かに遊ぶ約束らしいけど、3歳児クラスまではお昼寝する子の方が多いんだって。


 寝ちゃった子どもは、いっぱい動いてた時と全然違って、感動するくらい可愛い。

 こんなにちっちゃいのに、たくさん遊んだね。


 うさ衛門先生の指示で、先生方に無言でぺこりして、退室。

 上靴を取って、そのまま静かに元の部屋へ移動する。

 みんな寝てるからね。

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