第43話 感じ悪いインタビュアが混じってる
────ここからは角度を変えて、お二人のペアについて聞いていきたいと思います。
ドキッとした。
「はい」
────それぞれ、どんな方でしたか?
「どんな……普通の中学生でしたよ。クラスメイトと同じような」
「わたし達も学校行ってる間は普通の中学生なんですからね?」
────いやいや、それは違うでしょう。居合わせた中学生はお二人を見てどういう反応でしたか?
なんか、感じ悪い……?
雰囲気が変わった……?
「少し騒ぎにはなりましたけど、すぐに先生が収めて下さいました」
「同じ中学生として参加しているからと」
────サインや写真を求められたりはなかったんですか?
「ありましたが、遠慮してもらいました」
「そういう場ではないので」
────なかなか冷静だったと。
「運営の方が混乱を避ける為に、休憩時間には別室を設けて下さいました。授業自体は一緒に受けて、色んな方と話し合いもしました」
────それは特別扱いではないですか?
「確かにそうです。隔離されているようで寂しい気もしましたし、できれば同じように参加したいのですが、そうしない方がいいと判断されたので」
「内容が結婚だったので、気を使われたのだと思います」
────それなら他の一般参加者だって同じではないですか?
「説明を受けた限りでは、帰りは男女別々になっていたそうだし、個人情報のやり取りや写真もやらない方がいいと注意を受けました」
「万が一のことを考えて、どこの中学かも言わないようにと」
────なかなか周到な配慮だね。
「そう思います。踏み込んだ内容を話し合ったので、クラスメイトより親密度が上がりやすいと思われたのではないかと」
────つまり片方が恋をして、つきまとっちゃったりするのを避ける。
「それもあると思います」
────ケアウグイスを通して連絡が取れると聞いたけど。
「はい」
────ちょっとペアの子と連絡取ってみてください。
は?
心臓の形がわかるくらいドキってしたぞ!
何言ってんだこのインタビュア!
「それは、あの、相手の方の迷惑になるので」
そうだそうだ!
急に連絡来たら心臓発作で昇天するわ!
『必要がないのに連絡を取ったりしませんよ。あくまで双方のケアウグイスがやり取りして、必要なら相手に伝える形です』
────そうなんですか。じゃあこの番組を見て、お二人に連絡を取ろうと思ってもできない?
『できません』
────なあんだ。できると思ってたくさん連絡来てるんじゃないですか?
『そうですね』
────それはお二人に伝えますか?
『伝えません。聞かれたら伝えます』
────じゃあ、逆に連絡をしたい子はいますか?
「そうですね、みんな楽しい方たちだったので」
「でも迷惑をかけるのでしないです」
────公の場だからそう言ってるだけで、こっそり連絡取るのは可能なんでしょう?
「可能ですけど、しませんよ?」
────先ほどまでSNSで情報収集していたんですが、今回の参加者はだいぶ発信しているようです。中学生くらいの年頃は、クラスごとSNSでつながっていることが多いですが、お二人の同級生は何か言ってきましたか?
「いえ、特には」
「自分のクラスはそういうことに慣れているので、ないと思います」
────どこの中学に通っているかなど、嘘か本当かわからない情報が拡散しそうではありませんか?
「そういう危険はあると思います」
「でも、対策はしていると思うので大丈夫だと思います」
────ペアの子や同じクラスになった人たちからの発信は怖くないですか?
「それは怖くないです」
「あと、個人情報の公開は監視されているはずなので」
────今回の件は、マスコミに強い規制がかかっています。それを不満に思う記者が多いことはご存知ですか?
「報道で知っています」
「学生を守る為に仕方のないことだと思います」
────SNSで情報を得るのは違反ではないので、色んな記事が結局は書かれることになると思いますが、取材が禁じられているので、返って誤った報道が量産される危険性が指摘されています。
「運営に聞けば正しいかどうか判断されると思うけど」
────正しくなくても売れればいい、ということを考える記者は多いという事実をどう思いますか?
「嘘でもいいなら、エンタメですね」
「そういう人もいると思います」
────仕方がないと。
「仕方ないですね」
「全国の中学生のみなさん、気をつけて下さい」
────では最後に、共に学んだ仲間たちへ一言お願いします。
「みなさんありがとうございます。楽しく学ぶことができました」
「遠慮することなくはっきり話してくれてありがとうございます。そしてご迷惑をおかけしてごめんなさい。わたしと一緒にいたことでトラブルになったら、すぐケアウグイスに伝えて下さい」
────すぐ通報、という訳ですね。ありがとうございました。
────さて、今回は結婚がテーマだったようですが、今後はどんな内容なのか、ご存知ですか?
「子育てと仕事、恋愛、病気と死」
「あと4回ですね」
────夏休みに二回もあるけど、どう思いますか?
「わたしは部活動もしていないし、仕事のスケジュールは2日程度なら全然問題ないものなので、大丈夫です」
「僕もそうですね。もともと、中学生のうちは仕事といっても毎日するようなことはないので」
────世間的な長期休暇に子育てや仕事のテーマを入れるのは、人手不足を補うことが目的であるという意見もありました。
「素人が関わることで、現場は手間を取られると思います。何かの助けになりたいとは思いますが」
────昔は地域のお店や企業に、2、3日手伝いに入る、仕事体験のようなものを行なっていたんですね。
「そうなんですか」
「2、3日ですか」
────職場を選ぶのには限界があり、内容も決まりがなかった。
「そうですか」
────今回のように一律の研修なら、そんなことはなさそうですね。お二人はすでにお仕事をされている立場な訳ですが、それを研修することについてどう思いますか?
「僕は楽しみです。知らないことがまだまだたくさんあると思うんで、これから先に役立つことを教えてもらえるのは、とても嬉しいです」
「わたしもです。今回の研修であったような驚きや発見があればと期待します」
────さて、どんな研修になるんでしょうか。
今日はありがとうございました。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます