第22話 話し合いができない

「後少しだから頑張ろう」

「うん」


 17. 家族間で助け合える

 18. 看病してもらえる

 19. 失踪しても探してもらえる

 20. 葬式を出してもらえる


「これは、孤独死しないようになるっていいたいのかな」

「最悪ならそうかも。身近なところなら、風邪引いても連絡してもらえたりポカリ買ってくれたり」

「そういう意味なら、そりゃそうだよね、と」

「って、葬式って必要?」


 彼女がちょっと笑い混じりに言ったので、おれは思い出してみた。


「うん、葬式は必要だよ」

「そうなんだ」


 急に真顔になる。


「いや、気にしてないし。普通葬式なんか知らないだろ、いいよ」

「や、不謹慎でした」


 真面目だな~。


「葬式だけど、知り合いとか全員知ってる訳じゃないから、やるとそれが分かっていい。それに────」


 あ。

 だめだ。


 あの時の光景がちょっとよぎっただけで、こみ上げてくるものがのど元を詰まらせた。


「……だいじょうぶ?」


 ちょっと待って、とも言えないで、おれは壁を向いた。

 しばらくすれば元に戻る。だいじょうぶだから……


『咲良さん、少しだけ待って下さいね』


 おれのケアウグイスが気を利かせている。

 そう、少しだけ待ってくれ……


 ポンポン


 背中を優しくたたかれた。

 この娘、天使かもしれない────


 おれたちがなんとか終わった頃、会議室のみんなもだいたい終わりに近づいているようだった。中にはうさ衛門先生に何度も注意されて、手こずっているペアもいたけど。

 そして終わったペアが、問題だった。


「江口くん、席へ戻りなさい」


 早速うさ衛門先生の注意が飛んだ。

 席にいればいいだろうと、近くの奴は話しかけてくる。


「咲良ちゃん、後でサインして」

「後で一緒に写真撮ろ」


 もちろん注意がくる。


「私語は慎んで」


 とは言っても、待ち時間がある人間はあんまり慎んだりしないらしい。


「ねえ、何中?」

「終わったらお茶しない?」

「ライン交換しようよ」


 彼女はそのどれにも無視で答えた。

 見事だ。

 しかし時間が経つにつれ、その音量はどんどん大きくなって、うるさい程になってきた。


「静かに。終わったみんなは今から、終わっていない人を手伝おう。文月さん石上くんペア、八嶋さん、小林くんペアがまだ終わっていないよ」

「マコ話すことないから」


 あー、あそこかー……


「オレらもいいからー」


 ヤンキー改め小林くん、心底だるそう。ガタッ! と隣の子が立ち上がって言う。


「わ、わたしはっ! はな……し合いたい……です」


 小林くんのペア、八嶋さんは、立ち上がった時に打った太ももをさすりながら座る。この子、遅刻してきた子だ。


「うっせえ余計なこと言うなよ」


 女子に威嚇するような男か、嫌な感じだな。


「結婚に限らず、人と人との関わりには話し合いが必要だが、このように片方は必要ないと思っていると、話し合いができない。どうすれば良いかな?」


 そこに二人しかいないと、ずっと話し合いなんか無理だと思う。力づくで、なんてダメだろうし。


「間にオレが入るよ」


 挙手をして、ハジメくんが立った。


「そっちは滝夜、おまえ入って」


 えっえええ!


「何でおれが!」


 しかもヤンキー小林ペア!


「できるできる」


 軽く言うな!

 しかし彼女の一言でやろうと思えた。


「わたしも手伝う」


 天使……!

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