第15話 みんなおなじ中学生

「ちょっと先生どういうことですか!?」


 騒ぎをぶった斬るように大声を出したのはやっぱりマコちゃん。


「げーのーじん一般人に混ぜないでくださいよ! 不公平!」

「先生、私もどうかと思います。騒ぎになるの、分かってるじゃないですか」


 挙手して鬼ノ目さんが加勢する。


「別にいいと思いまーす! 芸能人だって中学生でーす!」


 セクハラ男が小学生みたいな反論して、女子から集中砲火を浴び、カオスになった。


「はい、席について」


 なんだろう、うさ衛門先生の声はおれに直で聞こえる。全員に向かって言った言葉でも。まさか、指向性スピーカー? 全員分の? そうだったらすごい。みんなが普通以上に聞き分けがいいのも、もしかしたらこれに秘密があるのかもしれない。まあ、普段の授業態度を知ってるわけじゃないけど。


「花野咲良さんはこの蔵野市内の中学生じゃ。今回の件では、マスコミの注目が高いこともあり、受講者の代表として取材を受けることになっておる。その代わり、一般中学生への取材は控えるよう通達されている。じゃが、女優の前に彼女は同じ中学生。騒がないで、同じように接するように」


 じゃあ、彼女にとってこれは、仕事でもあるって訳だ。大変だな。


「佐々木くん、比護杜さんを迎えに行きたまえ」


 一度席についていた佐々木くんは、今度は素直にそれに従った。

 騒ぎの最中も、彼女の表情は普通だ。内心が伺いしれないポーカーフェイス。さすが女優というべきか。


 席にはついて、一旦は収まったような室内だが、まだちらちら見られているし、セクハラ男に至ってはこっちをガン見……というか、手を振ってアピールしているくらいだ。落ち着かない。


「江口くん、住吉さんと向き合おう」


 あ、注意が飛んだ。

 セクハラ男改め江口くんは、ちょっと未練がましく見ていたが、やがて肩をすくめて隣を見た。


 そこへ、そっと扉が開いて、佐々木くんと比護杜さんが帰ってきた。案外早かったな。恥ずかしくて帰れない、とか思ってそうだったけど。


「リアル花野咲良……」


 ささっと後ずさりあらゆる角度で眺め出す。


「完璧な造形……可憐、ザ・美少女、高嶺の極み……この感動を保存……」


 ひとしきり堪能したのか、急に元に戻り、


「いや眼福。失礼しました」


 と言って席に座った。


 ────つまり、花野咲良がいるって聞いて帰ってきたのか、納得。

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