彼岸花に思いお

隴前

第1話 余命

「あと余命数日です」


少し薄暗い診察室で言われる。

俺は弥普やふ 飛眼ひがん、持病でさきほど余命宣告された。


「そうですか、もちろん手術はしません」


俺は自分の死が近いことなんて分かっている。

だからおかしいんだろうな。

死を知って普通は怖がるはずなのに。


「やばい日があると思うのでその時は電話します」


「はい、わかりました、他に言うことはあります?」


担当医師は俺がおかしいことは理解しているので言っていて辛い様子はない。


「俺の家の庭に彼岸花を育てていることは前に言ったんですがもし可能なら俺が死んだ時のお墓には彼岸花を入れてください」


「ええ」


俺は診察室を出る、まだ夕方だ。

両親は事故で亡くなっている、そして遺産で俺は生活している。

手術費は一様あるが数%の希望にかけるより死を前にして未練をなくした方がましだ。

この生き方は誰にも責められない、人それぞれなんだから。

学校には行っており学校側には伝えている。

そして俺は無駄に地頭がよかったので特待生として学費は免除になっている。


俺は家に帰ることにした。


「ただいま」


俺は返事が返ってくることは分かっていつもいつも呟いている。

ソファーに座る。

もう面倒くさい友達に嘘を付き続けるのは。

俺は紙を取り出して俺が持病で死ぬことといつか死ぬ日のために一文書く。


俺は持病で今日死ぬことだ。


これだけ十分だ。

俺は紙を丁寧に折る。

明日ある学校のかばんのファイルに挟む。


そこからは早めに晩御飯と取り、風呂に入り寝ることにした。







俺は早く起きたので着替える。

TVなんて必要ないから置いていないのでソファーに座りボッーとする。

いい感じの時間になるまでなにも考えたくない。




「ん。もうか」


朝食を作り食べ終わる。

かばんを持ち、玄関以外開けていないが一応鍵が閉まっているか確認して家を出る。

彼岸花は咲いており、笑顔になる。

自分が育てたものは愛情、愛着が沸くことだ。


学校への道には苦労した、太陽光がじわじわ体力を奪っていくから。


やっと学校に着き、クラスに向かう。


「おはよう、飛眼」


「ああ、おはよう」


挨拶をしてきたのは弘疎こうそ 魅利みり


「俺からもおはよう飛眼」


「おはよう、態智」


挨拶をしてくるのは雷泡らいほう 態智たいち


俺はかばんを片付けると席に座ると、チャイムが鳴る、ちょうどだな。






「礼」


二時間目の授業が終わる。


俺はそそくさとトイレに向かう。

俺は魅利が好きだけど叶うことはないだろう魅利には好きな人がいるから。




俺はクラスに戻ると、


「お願い!」


「しかたないな」


「やった」


「魅利、なに話していたの?」


「なにも」


「飛眼、ほんとになにもなかったぞ」


仕方ないな、魅利は態智のことを信用して頼んでいるのに俺には誤魔化そうとしている、だから魅利は態智のことが好きだろう。

俺は気にしないふりをするのだった。










次の日。


「ん?」


俺は違和感を感じた。

感覚がおかしく感じたいやおかしい。

自分のことは自分が一番知っている。

すぐ電話する。


「もしもし」


「なんだって、飛眼か、もしかして」


「はい、たぶん俺に明日は訪れません」


死ぬ時間はわかっているが黙ってよう。


「わかった、今日の夜に家に行く」


「わかりました、では」


俺は電話を切る。

起きた時間がぎりぎりになりそうなのだ急いで準備する。

そして家を出ていく。














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