最後の誤算
樹 亜希 (いつき あき)
第1話
わたしは由隆(ゆたか)が危篤だと漏れ聞いて、彼の入院する病院へと急いだ。どこをどう走ったのか、覚えていない。思うように脚がうごかないし、頭の中が真っ白のまま、気持ちだけが前へ行こうとする。
「由隆、お願い目を開けて!」
わたしは叫んだが、周りにいる由隆の母の目にはわたしなどめに入らないようだった。医師の蘇生術が施されるが、由隆の母のむせび泣く声が響く病室で
「ご臨終です。11時37分。手を尽くしましたが……」
由隆の顔に白い布がかけられてしまった。わたしはどうする事もできずにぼんやりと思った。
「神様、お願い。もしも願いが叶えられるのなら、彼を……」
夜中には少し早い時間、12時が来ると翌日となり日付けが変わる。
神様なんていない。わたしはそんな事信じてはいなかった。
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