第2章14話 走馬灯

 何はともあれ、『死に戻り』は成功した。今すべきことは——運命を覆すための行動。泣いている暇などないのだ。


「……。えっと、今何の話ししてたっけ?」


「えっと……、私達のとこにも殺し屋が来たって話だけど」


「……マジか」


 それだと、もう一刻の猶予も無いことになる。技名以外も微妙に厨二病っぽいところのあるシュベールトのことだ。おおよそ、斬りかかるタイミングを見計らっているところか。


「——シュベールト、そこに居るんだろ?コソコソしてないで出てこいよ」


 唐突な台詞に首を傾げる祐希と桑原さんをよそに、俺は警戒を強める。既にシュベールトが店内に入り込んでいるのだとすれば、振り切るには彼の意表をつくしか無い。


「厨二病とはいえ流石にこんな手には——」


「……何故俺の名を知っている?」


 かかった。馬鹿じゃ無いの、こいつ?


「さあ?何でだろうな?……そんなことより、場所を変えないか?」


 もとより、返事を待つ気はない。流石というべきか、既に通路に飛び出しているふたりを脇に抱え上げ、出口に向かって猛ダッシュ。……先払いの牛丼屋で良かった。



 ————————————



「重っ!」


「女の子に向かってなんてこと言うんだ、君は!」


 寧ろ咄嗟にふたりも抱えられたことが軽く奇跡。『神々の伝令』と言うだけあって、持ち上げる力も上がって——


「火事場の馬鹿力だこれ……!」


「伝令が運ぶのは荷物じゃ無いから!!」



 ————————————



「そこのビルの屋上で迎え撃とう!目撃者も抑えられるだろう!」


「桑原さん、ビルの屋上って大体立ち入り禁止じゃない!?」


「ドア吹っ飛ばすくらいの魔術なら私が使える!」


「了解!」



 ————————————



「オラオラオラオラオラオラオラ——」


「これ連打するとキャンセルされるタイプ!」



 ————————————






 ——最上階へ到達。

 エレベーターは2台あるので、シュベールトもじきに追いついてくるだろう。おとなしくエレベーターに乗ってるシュベールト。……なんだろう。笑える。


「屋上は!?」


「あっちに階段があるな!!」


「行こう!」


 桑原さんの指し示した階段を駆け上がり、一息つく。


「はぁ、祐希、っ、ドアお願い……っ」


「うん。ちょっと下がって——











殲滅アナイアレーション







 ——運命は、繰り返す。

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