第2章 〈君〉と〈私〉のラブコメ的戦場

第2章1話 冒険の幕開け

ここから読み始めるのもOK!


〈君〉と〈私〉のラブコメ《カッコカリ》。コメディ要素もしっかりキープしながらも、日常編とは一味違ったシリアスな展開もプラスされていきます。


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 何気ない放課後の下校途中。これはそんな、取るに足らない一場面。

 ——そのはずだった。


「——祐希っ、後ろっ!!」


 殺し屋さえいなければ。



「——っ!!」


 唐突な俺の叫びに、祐希は驚くべき反応速度を発揮し、背後から刃物を持って襲いかかる男の腕を掴む。

 刺突を逸らされよろめく男の脇腹に、一拍遅れて俺が蹴りを入れる。

 倒れかける男の首筋を、祐希が手刀で叩き——男は気絶した。



「気絶……した?」


 一般人って、普通手刀で人を気絶させられるか……?


「気絶させたけど、すぐに目を覚ますだろうから気をつけて」


 言いながら祐希はスマホを開いて、素早く110番を入力する。

 警察に通報する祐希の横顔は異様なほどに冷静で、取り乱しかけた俺を踏みとどまらせる。



「どうして……お前はそんなに冷静でいられるんだ?」


 スマホを閉じた祐希に何か声をかけようと口を開いて、しかし出てきた言葉はそんな疑問だけだった。


 今訊ねるべき事ではなかったかもしれない。それでも、通り魔に冷静に対処して、なのにどこか焦ったような表情を顔ににじませる祐希の横顔を見ていると、得体の知れない不安感がのし上がってきた。


 彼女がどこか遠くに行ってしまうような気がした。

 ——俺の両親のように。また1人になってしまうのではないかという不安が拭えなかった。

 俺は多分——を乗り越えられてはいない。



 祐希は俯いたまま、何かを考えてしばらくの間黙り込む。そして、


「もう、この時が来ちゃったか」


 諦めたように笑って、


「——私が冷静なのは、こんなこと……人に殺されそうになることなんて、もう慣れちゃったからだよ」


 そう、言った。



「人に殺されそうになることに…慣れた……?」


 人に殺意を向けられることに慣れる状況とは、果たしてどれほど凄絶なものなのだろうか。

 祐希は細く息を吸い込んで、


「そう。を消そうとしている奴には心当たりがある」


 はっきりと、口にした。


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1章を1話に統合するのに合わせて、2章冒頭(1話・2話)をリニューアルしました。

もう何話かしたら色々と落ち着くので、もう少しお付き合いください。

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