【貧乏令嬢、婚約破棄される】~破産寸前のリューディア。婚約を破棄され領地経営破綻危機~ もう身売りしか道はないのですか?

川嶋マサヒロ

01「ああ無情の足蹴」

「リューディア。僕との婚約を解消してくれないか?」

「はい?」

「婚約を破棄したいんだ……」

「はあ?」

「すまないっ!」


 そう言って婚約者のユリウスは土下座しました。


「ちょっと何を言ってるのか、分からないのですが」

「どうか了解してほしい。この通りだ」


 と言って、床に額を打ち付けます。


 冷静に考えてみると、どうやらこれは婚約破棄の宣言のようです。


 つまり私、リューディア・ニクライネンは幼なじみの婚約者、ユリウス・リュハレルから婚約破棄を突きつけられたのです。


「……」


 一瞬思考停止していた私の頭が、ぐるぐると回り始めました。いきなり、とんでもない話ですよ、これは。


「一体どういうわけなんですか? 私にもわかるように説明しなさいっ!」


 私はしゃがみ込み、ユリウスの胸ぐらをつかみました。ぶんぶんと振り、こちらを向かせます。


 目と目が合いました。


 私は睨みユリウスすぐに目を逸らします。


「いろいろと事情があって……」

「いろいろ? だからその事情とは、一体全体何なのですかっ!」

「君の家の領地経営だけど、ずいぶんまずいみたいだし……」

「うちが貧乏貴族だなんて、今更なにを言って――」

「それに僕には愛する人ができた。彼女と結婚したいんだ……」

「なっ、なっ――。私のことは愛していなかったのですか!?」

「愛していたよ。しかし今は……」

「なーっ!」


 ユリウスは立ち上がりました。


「詳しい内容は正式な書類に書いて送るから。話し合いはしよう。互いが納得するまで」

「ちょ、ちょっと待って――」


 私は退室しようとするユリウスに追いすがります。彼は体を振るってそれを拒否しました。


「ああっ!」


 倒れながらも、それでも私は足にすがりつきます。


「ふんっ!」

「ひえっ!」


 しかし私は軽く足蹴にされてしまいました。


 バタンと閉じられた扉は、彼の心のようです。



 私はよく分からないままリュハレル家の屋敷を出ます。門をくぐり振り返りました。


「はあ〜」


 いったいぜんたい何が起こったのか?


 私はとぼとぼと家路につきます。


 貴族といっても馬車などは使えない貧乏貴族です。


 服装も一応平民よりは上ですけれども、いかにも底辺。平民とあまり代わりばえしません。



 私の名前はリューディア・ニクライネン。


 ニクライネン家とユリウスのリュハレル家は、昔から商売上の付き合いがありました。


 私は一人娘で、彼は幼馴染み。


 その愛する人から婚約破棄を言い渡された、最悪の日となりました。


 今日は私の婚約破棄記念日。

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